誠勝手ながら
共有してきた時間が時間なだけに、俺は四羽のことを家族同然の存在だと勝手ながら思っている。
俺はそんな四羽のことが好きだ。けれどそれはライクの方であってラブじゃない。
「好き、なんですよね? 蒼紫くんは四羽さんのこと好きなんですよね?」
蒲倉の言う好きはきっとラブの方を指している。なにを根拠に言ってるのかは不明だが、俺の答えは決まっている。
「いや、好きは好きだけど……それはあくまで友達としてであって、異性としてじゃないから」
「…………では逆に、四羽さんが蒼紫くんのことを好きだとしたら? 蒼紫くんもまんざらじゃないのでは?」
「いやいやいやそれもないから! ほんとに俺と四羽はそういうんじゃないから! 四羽にも訊いてみ? 絶対同じセリフが返ってくるから!」
ないないと手振りを交えて否定する俺を、蒲倉は微かな疑心を孕んでいるかのような細い目つきで捉えてくる。
「二人の普段の様子を観察している私から言わせれば、いつ恋仲になってもおかしくないです。正直、危機感を抱いています」
「き、危機感って……ちょっとなに言ってるのかわからない」
「なんどもお伝えしていますが、私は蒼紫くんのことが好きです大好きです。だから蒼紫くんが他の女子と付き合うのなんて嫌……他の女子と仲良くしているのも嫌……だから危機感という言葉を選んだんです」
そこで彼女は言葉を区切り、おもむろに立ち上がった。
「……でも、安心しました。一度は疑ってしまいましたが、私は蒼紫くんのすることなすこと全てに肯定します。だから、蒼紫くんが四羽さんに気がないことも信じます。その反対も絶対にない、それも信じます」
「そ、そう」
「はい。ただ、そうなると蒼紫くんと仲が良いだけの四羽さんの存在が邪魔になります。ですので蒼紫くん、彼女との関係を断ってください。できないのであれば、誠勝手ながら私が対処します」
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