第二話 転売禁止って、極限状況の人間にこれ規制するのおかしくないか?
【利用規則】
当サイトで購入した一部の商品の転売の禁止。購入商品を加工する事なくそのままの状態で他者に販売する行為の禁止。(人命救助などで緊急を要する場合は除く)
例:胡椒など香辛料の転売。(料理などに使用し、その料理などの販売はこれにあたらない)
例:石鹸などの転売。(材料を購入し、石鹸を自作した場合はこれにあたらない)
例:食料品などの転売。(調理など加工した後での販売はこれにあたらない)
……
「各方面から非難轟々だった転売にようやく規制がかかったのか? 田舎暮らしだとネットで買占めとかされると地元の店で買える機会は少ないから死ぬほど困るんだよな~。……でも胡椒とか石鹸って転売する奴なんているのか? 普通はゲーム機とか特撮系おもちゃとかの高額転売が可能な物が多いと思うんだけどな」
よっぽど入手困難な人気商品でもない限りその辺のスーパーの方が安いし、特定の商品をこだわって使ってる人以外は別の石鹸使うだろう。
だいたい一般流通してる石鹸類がすべての店から売り切れるってどんな状況だよ?
で、胡椒とか香辛料の転売って、そんな事ができる状況……。
過去の世界か異世界転生、もしくは異世界転移?
「異世界転売対策? 転売禁止って、極限状況の人間にこれ規制するのおかしくないか?」
転売ヤー死すべし、確かにそこに慈悲はない。ある訳がない。流通の破壊者め。
と、今は奴らの事はどうでもいい。問題は今の状況とこの規制について考えなきゃいけない。
規制されるまでもなく転売は悪だ、だけど異世界に飛ばされた人間がこれを使って稼ぐのを禁止って……。相当にキツクね?
「買占めとかしなくても転売は転売か……。これを使えるのが俺だけだったとしても」
ここが何処なのか知らないけどこのスキルを全員が使える場合、そりゃ買占めして高額転売なんてしたら迷惑だよな。
俺だけ限定の能力だとしてもね……。
「ん? 特例?」
※特例:
ああ、一応救済措置で対応はされているのか。ありがてぇ……、常識の範囲内ってのがひっかかるけどよ。
これを運営しているのがだれかは分からないけど、色々な世界の通貨なんかを入手する目的もある場合、使用者がいなくなるのも問題なんだろうな。
しかし……、ネットショップか。
「試しに何か……、ここで買わないといけないのは当面の食料と水。あとはお湯とかを沸かす為の道具かな?」
ここが何処で何があるのかわからない以上、最低限の食料や水。それに火を付けたりするライターなんかは必須だ。
あとは武器類。というかこんな木や草の多い森を歩くんだから、大き目の鉈があれば心強いな。
「ペットボトル入り二リットルの水が二十四本セットで二千五百円……。水は必要だし、
食料品に缶詰類やビーフジャーキー、魚の干物に輸入品の冷凍肉なんかは売っているが、すぐに食べられる状態の食料品は売ってないか。
そりゃネットショップには賞味期限の短い弁当系の食料品は取り扱ってないよな。時期次第で冷凍オードブルとかおせちとかは売ってるんだろうけどそんなものは必要ないし。
コンビニじゃないんだから安くてすぐ食べられる弁当は無くて当たり前? とりあえずお試しにいくつかカートに入れて……。
「えっと、ご注文いただいた商品のお届けには二十四時間から四十八時間かかります? お届けは宅配ボックスに……って、すぐ手に入らないのかよ!!」
即入手ってできないのか!! 他はともかく、こんな異世界だと水は死活問題だぞ!! 手持ちの氷を溶かして飲んでも大した量にはならないし。とりあえずこのままの注文は無理無理っ、キャンセル、キャンセルっと!!
異世界でも割と楽に生きていけるかと思ったけど、ガッカリで残念な展開? これかなり面倒で厄介…ん?
なんだこのマーク?
少し怪しいけど押してみるか? ……何か表示されたな。
「特報!!
なんだよ、このアルティメットって?
アンリミテッドじゃないのか?
つまり
「加入料金が五千円か、表示されてる窓に残高の表示もあるけど現在はゼロ。今の持ち合わせは……」
ポケットに手を突っ込んで使い込まれた黒い革の財布を取り出した。有名ブランドの物じゃないけど、革細工専門の店で売られてたのが気に入って買ったんだよなこれ。使い込んでるから割と味のある色になったのが自慢だ。
幸いというか、今月の家賃の支払いの為に現金を持ってたし、明日買い物に行く予定があったから結構現金がある。
手持ちの資金は財布とカバンの中の封筒に入っている分も含めれば十万円以上。
食料品を買うだけならしばらくなんとかなる筈。
「元の世界に戻れた場合を考えると、この金を全部突っ込むわけにはいかないし、とりあえず五万だけチャージしてあとはカバンと一緒にアイテムボックスに保管……。いや財布は札をカバンの封筒に入れて、硬貨だけにして持ち歩くか。これで高額紙幣に限ってはどこかに落とすといった心配だけはしなくても済む。アルティメット加入はこのうちの五千円か、でかいな」
現金系投入口に万札が吸い込まれると、画面上の残高表示が五万円に変わった。
これで色々と買い物ができるが、資金は心許ないので慎重に使っていかないといけない。
八千七百六十時間って事は一年で五千円。しかし即入手できるのは大きい。
もし何かあった時、二十四時間も待ってられないしな。
「よし決めたぜ!! アルティメット加入!!」
【
加入特典:制限商品が解除されます。※条件が満たされない場合、一部の商品は解放されず、表示されない可能性もあります。
加入特典:即時納入機能を開放。※品切れ商品を除きます。
加入特典:品切れ商品の優先補充を約束。※希少度により変化します。
加入特典:緊急時特別救済措置の強化。※常識の範囲内でお願いしています。
加入特典:七百二十時間、他の有料サービス加入時に追加機能をフルで体験できます。
加入特典:…………
加入特典ってどんだけあるんだよ!! なんか高速でスクロールしていくんだけど……。全部は確認できなかったぞ。
まあ今の状況から考えると安くない額だし、色々機能を開放されるのはうれしいんだけど。
どれどれ、商品とかは何が解放されたのかな?
「お、解放された商品って、日持ちしない弁当とか総菜系まである。確かに届くまでの時間考えたら生ものは無理だし」
こうなると保存性はよくても割高な缶詰類は無用の長物だな。でもまあ、取引単位が基本キロの輸入冷凍肉とかは余裕が出てきたら買ってもいいかな。保存はアイテムボックスにすればいいし。
とりあえずこの世界で食料品が入手できるようになるまで、
俺も一人暮らしが長いから料理も得意だしこれで材料をそろえて自炊という方法もあるけど、資金に限度がある今は調理器具一式そろえて作るよりも現状は弁当を買った方がいいし確実だ。料理が得意といっても、やっぱりプロの作った総菜の方が美味しいしね。
あと必要なものといえば……、このあたりかな?
「滑り止め付き軍手五十組セット、ペットボトルに入った水と鉈、虫よけスプレーと帽子、クマ除けの鈴、ライターと着火剤と懐中電灯も……。全部で一万二千円か」
懐中電灯は先に買っておかないと、真っ暗になってから買うとか無理だしな。
ライターと着火剤は焚火とかが必要になった時用だけど、使わないに越した事は無い。
「あ、あと誰かに出会った時にこのアイテムボックスの力って知られるのはまずい気がするな……。そうだ、リュックか何か……、小型のアリスパック辺りを背負って行動して、何か出さないといけないときはそれを手に取って、その中でアイテムボックスを開けばアリスパックから出したように見えないか?」
うまくやれば、アリスパックから取り出したように見えるかも……。問題はこのアイテムボックスを他人が認識できるかどうかって事だけど……、出来ない事を祈るか。
「アリスパックは四十リットルのタイプが三千円か……。これくらい大きければ普通にいろいろ入るし、背負えば持ち運びも楽だな」
使った額はアルティメット加入も含めて合計二万円。
残り予算は三万円。
慎重に使わないとほんとにすぐ資金切れになるぞ、これ……。
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