番外編2 パスタを止めるな
これは大会が始まる1ヶ月前の話・・・・・・
「フンフフフ~ン らららららららランランル~♪」
作曲時間0.01秒の曲を歌いながら、私はパスタを茹でていた。
事の始まりは、スマホでのネットサーフィンだった。
1時間前
「あー・・・・・・。お腹空いたな~・・・・・・」
腹の音が鳴り、ふと時計を見ると、時刻は正午。
私はおよそ3時間、床に寝転がり、スマホをぽちぽちいじりながら時間を浪費していた。
どうしようかな~・・・・・・。
この前買った、ガン○ムのプラモはとっくに組み立てたし・・・・・・。
積んでいた本も読み終わったし・・・・・・。
まだ見てなかったアニメの円盤 (DVD・ブルーレイディスクの事)も昨日全部見終わったしな。
まずお昼ご飯をどうしようか考えようか。
そう思い、スマホでレシピを検索する。
・・・・・・パスタかぁ。
後ろにのけぞらせ、勢いをつけ一気に体を起き上がらせる。
「ふーん。ボンゴレビアンコね。材料あったかな~」
ボンゴレビアンコとは、白ワインで蒸したアサリをパスタに乗せるイタリア料理である。
「おっ。バッチリそろってる」
白ワインはどうしたのかって?
この前旅行に行ってた総統にお土産として渡されたのさ。
「よし。早速作ってみよう。もうお腹ぺこぺこだよ」
そして今に至る。
「あさりの砂抜きって結構めんどくさいなぁ」
でも砂抜きをしないと噛んだ瞬間にとてつもない地獄に叩き落されるから、したほうがいい。
それにしても今日は仕事がない日で良かった~!
たまには休暇が欲しいもん。
「『私だけを見て見て 君が居なきゃ私死んじゃう 君の唇で私の心を満たしてよ』」
痛々しいアニソンの着信音が流れてきた。
(時系列的に、この話は大会が始まる前なので、11話での着信音はこれが変更した後)
「あーもしもし? どったの芽亜利ぃ?」
『た、隊長! 至急応援を要請したいのですが・・・・・・、クッ!』
「はぁ? 成美はどうしたの? あいつ今日仕事だったはずじゃあ・・・・・・」
『成美さんはインフルエンザに罹ってます。ハルさんは別の任務に向かってるので、今は私が代理隊長なんです』
「インフルエンザって・・・・・・。時期おかしいでしょ・・・・・・」
『他の方々が頼れないので・・・・・・。休暇中なのは分かってますけど・・・・・・隊長、助けてください!』
ここで通話は途切れてしまった。
「・・・・・・パスタ茹でてるんだけど・・・・・・」
・・・・・・仕方ない。3分以内に終わらせて戻ろう。
私は服を着替え、銃を持ち、窓から飛び出した。
「あー・・・・・・バイク使いたいなぁ」
走るよりもバイクを使ったほうが速いので、急いでスマホでバイクを呼び出す。
ほんの数秒で、バイクが私の元へやってきた。
バイクが自動走行でやってくるなんてかっこよすぎだよね。
ヘルメットを被り、バイクに乗った私は急いで現場へと急行した。
「数が多すぎる・・・・・・!」
私、庄司芽亜李は休暇中の隊長に代わって、代理の隊長を担っていた。
今日の任務は、立てこもり犯から人質を救助すること。
突入できたのは良かったが、意外にも敵が多く、既に私の率いる隊員も負傷者が多数出ており、組織の救護班にも応援を要請している。
そして、場所が廃工場というなんとも戦いづらいところに立てこもられてしまった。
「オラァ!」
背後のドラム缶から、敵が飛び出しナイフを突き刺そうとしてくる。
「まずい!」
爆弾を投げ、起爆スイッチを押す。
「ほらほらどうした~? 隊長とやらはそんなに弱いのかぁ~?」
「黙れ! 貴様ら程度、隊長が居なくても・・・・・・!」
ナイフを取り出し、ボスと思われる人物に特攻する。
「はい残念」
「ガハッ・・・・・・」
頭を鉄パイプで殴られ、勢いを失った私は床に倒れこむ。
そのまま複数の男に集団リンチされる。
「所詮、治安維持部隊なんてこんなもんだ。お前らァ! 二度と立ち上がれないぐらいに叩き潰せ!」
「はい!」
ボスが部下に指示を出すと、さらに強く鉄パイプで全身を殴打される。
口からは血を吐き、骨が折れる音が聞こえる。
「まだっ・・・・・・負けな・・・・・・」
後頭部を野球の素振りのように殴打され、さらに血を吐く。
意識が途切れそうだった私。
次の瞬間。
ドガァン
バイクで勢いよく壁を破壊し、建物内に突入した。
「な、何だ!?」
奥にいる男が立ち上がり、声を荒げる。
私はゆっくりとヘルメットを外し、バイクから降りる。
「私、参上!」
手を大きく広げ、腰をかがめる。
本当なら電車で突入したかったけど、経費が馬鹿にならないので無理だ。
「ふざけた真似しやがって!」
二人の男が突撃してくる。
一人を肘打ちで倒し、もう片方は、足を掛け転ばせ、頭に銃弾を打ち込んだ。
「・・・・・・まだ味方がいたとはな」
「私は最初から最後までクライマックスなんだよね。てな訳で『Let’s party time』」
急いでいる最中でも、自分の決め台詞は欠かさない。
これが私のポリシーである。
まずは芽亜李を助ける。
「このっ!」
集団リンチをしていた男たちが、鉄パイプで襲い掛かってくる。
一人の攻撃をかわし、足、腕に銃弾を撃ち込む。
「何!」
「行ってらっしゃい」
男の腕を掴み、もう一人の男に投げつける。
「邪魔だ!」と、奥に居たボスの男がやってくる。
「あっ、わざわざ来てくれたんだ。手間が省けて助かったよ」
「へっ! お前みたいなガキに何が出来・・・・・・」
「『私の必殺技 part2』」
「ふぇ?」
何がなんだか分からず、戸惑っている男にナイフを投げつけ、銃弾を撃ち込みナイフを加速させる。
そのままナイフは、男の額に刺さり、血を流して仰向けに倒れる。
「早く・・・・・・、早く人質を解放しないと・・・・・・!」
私は急いで人質の元へ向かい、ナイフでロープを切断する。
「た、助かりました・・・・・・」
「はいはい、お礼はあの子に言ってね」
私は芽亜李を指差す。
「芽亜李! もうすぐ救護班が来るからそれまで待ってて! 私は帰る!」
「はい!? 帰るんですか!?」
「うん。私には・・・・・・、帰りを待ってる人が、居るからね」
私は急いでバイクに搭乗し、全速力で自宅へと戻った。
「・・・・・・待ってる人・・・・・・? それってもしかして・・・・・・」
その後、パスタはデロデロの状態で発見され、新しいパスタを茹でなおした。
ついでに、私に彼氏が居ると勘違いした芽亜李が、組織中にデマを拡散したのはまた別の話。
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