第17話 剣豪の名を

前回のあらすじ! (ナレーション フユ)

幹部閣議に出席した、スーパープリティーJK暗殺者、フユこと~私!

閣議が終わって、訓練をしようと思ってたんだけど、ところがアホな先輩に戦いを申し込まれて、戦う羽目になっちゃったんだぁ!

私、これからどうすればいいの~!

「古い少女マンガか!」

「あでっ」

成美に背中を殴られる。

「何するのさ。せっかく私がナレーションしてあげたのに」

「ナレーションはいいとして、ナレーションの内容が酷すぎるだろうが! 何だよこの『スーパープリティーJK暗殺者』って!」

「え? 私可愛いでしょ? ほら見て!」

隊服を萌え袖にし、ぶりっ子ポーズをしてみせる。

「・・・・・・うっっぜぇ~・・・・・・。お前自意識過剰過ぎんだろ・・・・・・」

「可愛い子が自分の事可愛いって言って何が悪いのさ」

「・・・・・・おい」

「ん?」

振り向くと、刀を構えた伊舞希が立っていた。

素人でも分かるような、殺気のオーラを放ちながら。

「『アホな先輩』・・・・・・? お前は我を馬鹿にしているのか?」

「え~? だって、先輩弱いじゃないすか。最高齢の隊員なのに」

「お前が入隊するまでは、『あのお方』が最高位だった。なのに、彼女が亡くなってしまわれた後、貴様が幹部入りを果たした。我はそれが誠に気に入らん」

「はっはっは~! さーせんさーせん。許してくださいよ~?」

「その根性、貴様の先輩として叩きなおしてくれるわ!」

「ご自由にどうぞー。あ、そろそろ試合場に向かいましょうか」

私はすたすたと試合場に向かった。


「ここが試合場か・・・・・・」

「あれ、成美来たこと無かったの?」

「幹部専用のやつは見たことないな」

ここでざっと説明しておこう。

一般隊員の試合場と違い、これは幹部専用の試合場。

あらゆる状況下でも、落ち着いて戦えるようにするために、試合場のステージが80種類存在する。

なお、ステージの操作が可能で、炎天下・厳冬を再現でき、その上ステージ内の、酸素濃度・重力・霧・雨・雪・あられなども再現可能。

「ステージはどうするんすか?」

「・・・・・・『幻想城』だ」

「おー、先輩が一番得意なステージじゃないすか。大人気ないですね~」

「・・・・・・うるさい」

それ以降話さなくなったので、私は黙ってステージ内に入る。


スタート地点に着いた。私たちは、お互いに真逆の場所に居る。

『制限時間内に、相手の体に装着されているライフ球を3個破壊すれば勝利です』

どこからとも無く、声が聞こえる。

私の体には、水色の玉が3個装着されている。

『制限時間は20分。では、開始』

開始の合図と共に、私たちは高速で走り出す。

「先に先輩見つけて、ちゃっちゃと倒しちゃおう――」

私が中央付近に到着した瞬間、奥からものすごいスピードで先輩が斬りかかってくる。

「速いね~!」

「これでも幹部だからな」

負けじと、腰から銃を取り出し、連続で発砲する。

が、いとも簡単に銃弾が真っ二つに切断されてしまった。

「やっぱり幹部相手じゃ一筋縄じゃいかないか~。なら!」

背中からナイフを取り出し、投げつける。

「ハッ!」

次の瞬間、先輩が視界から消えた。

「・・・・・・『あの』技かぁ」

そして、背後から姿を現し、私の玉を狙い刀を水平に振るう。

「危なっ!」

間一髪、地面に伏せ攻撃を回避する。

「甘い!」

刀を上に振り上げ、振り下ろしてくる。

が、勢いをつけ、右の手のひらで地面を押し、わざと後ろ方向に飛ばされる。

「・・・・・・チッ」

「先輩本当にその技好きですよね~。でも私、その技何度もこの目で見てきたから大体分かるんですよ。それに、私知ってますよ? それのヒ・ミ・ツ」

「・・・・・・」

再び私の前から姿を消す。

『あの技』とは、私も正式名称は知らないが、とある剣士が使っていたとされている剣技だ。

技の種類は大きく分けて5つ。

なお、今伊舞希が使用した技、『風の巻 弐式 陰風・風車の舞』は、高速で反復横とびをし、自身の周りに風をまわせ、姿を眩ます技だ。

聴力を上げ、音を聞き取る。

「・・・・・・そこか」

場所を確認し、ナイフを投げつける。しかし、一瞬でナイフが木っ端微塵になってしまった。

「遅い」

「っ!」

突然私の目の前に現れ、伊舞希は刀を構える。

「『月の巻 陸式 三日月』」

刀を半円型に振るってくる。

バク転で難なく回避する。

「まだだ」

伊舞希は一歩前に出て、さらに大きく刀を振るってきた。

「ぐっ!」

かすり傷だったものの、足を切りつけられた。

この技はまず、その場で半円型に刀を振るい、その直後に一歩前に出て、さらに大きく刀を振るい、三日月形を作る技だ。

1回回避したとしても、油断できない技である。

だけど・・・・・・。

「私に一度その技を使ったら、それ以降は通用しない」

「何・・・・・・!?」

「さぁ、勝利を導き出そうか」

先ほどまでの先輩の動きから導き出したデータを元に、脳内で無数の方程式を展開する。

「まさかフユ・・・・・・。『兆里眼』を使わないで『演算』しようってのか・・・・・・?」

成美は驚いたような表情を見せる。

「『兆里眼』? 『演算』? どういうことですか?」

芽亜李が成美に質問する。

「『兆里眼』は、この前話した、目に負担をかけ敵の動きをスロー状態・1秒先の行動を見ることが出来る技だ。そして、『演算』は・・・・・・。化け物を超えた知能を持つフユだから出来る能力。本当なら『兆里眼』で見たデータを元に、1秒間に4000億通りの対処パターンを算出し、0.002秒で最適解を導き出す。その能力はもはや未来予知に等しい。しかも『兆里眼』を使わずにやるとなると、相当な負担がかかるはずじゃ・・・・・・」

成美が言っていることは正しい。

そう。確かに『演算』は凄まじい能力だ。

ただし、それに伴うデメリットも存在する。

「何故だ・・・・・・!? 全ての型が回避される・・・・・・」

「だから言ったじゃん。一度見せたら終わりだって。それに、戦ったの今回が初めてじゃないし、大体分かるんですよね・・・・・・」

その瞬間、誰の耳にも届く音が聞こえる。

「・・・・・・お腹、すいた・・・・・・」

その音の正体は、私の腹の音だった。

「ほらやっぱり!」

成美は手で目を覆う。

「どういうことですか?」

「フユの頭脳といえども、あれほどの演算処理をするとなると、脳に多大な負担がかかる。演算の弱点はずばり、『強烈な飢餓状態に襲われる』。」

普通の人でも、何かに集中すると、空腹状態になる。

私の場合、その何十億倍の計算を一瞬で行っているのだ。

そりゃあ飢餓状態にもなるよ。

「タ、タイム・・・・・・」

私は手を前に出し、止める仕草をするが・・・・・・。

「そんなもの通用するかァ!」

「ですよねー!」

伊舞希は刀を振り下ろしてくる。

再びバク転で回避する。

「珍しいですね。隊長が押されているなんて」

「そもそもお互いが人外レベルの戦闘技術を持っているからな。まぁ幹部全員に言えることだが」

「なるほど」

「さて、この勝負。フユはどう動くのかねぇ」

伊舞希が刀を横に振るう。

「よっと」

前方に宙返りし、難なく回避する。

そのまま地面に着地するが・・・・・・

「甘い!」

即座に、刀を回転させ私を切りつけようとする。

「・・・・・・『風の巻 弐式 陰風・風車の舞』」

私は伊舞希の前から姿を消した。

「なっ! 何故お前がその技を・・・・・・!?」

「さっきのやつ、ラーニングさせていただきましたよ」

「ラーニング・・・・・・?」

伊舞希は何が起きたのか分からず、ただ呆然としている。

「そうか。さっきの演算で・・・・・・」

「成美先輩、これは一体?」

「フユの演算能力は、ただ相手の行動を読むだけじゃない。相手の使用する技をコピーすることも出来る」

「・・・・・・もはや恐ろしいですね。もしかして、伊舞希様の技全てをコピーすることも・・・・・・」

「出来るけど意味無いだろうな。だってアイツ刀使わないし」

さて、そろそろ終幕かな。

私は足に力を込め、一気に伊舞希の懐に入り込む。

「・・・・・・!」

伊舞希の胸元に銃口を突きつける。

「チェックメイト」

私は引き金に指を当て、引こうとする。

と、思った瞬間、携帯が鳴った。

「ターイム」と言い、銃口を離す。ポケットから携帯を取り出し内容を確認する。

「2回戦のお呼び出しかぁ。でも、この勝負、私の勝ちでいいよね」

携帯をポケットに戻す。

「・・・・・・構わん」

伊舞希はゆっくりと立ち上がり、刀を鞘に収める。

「さてと、成美ー!」

観客席に居る成美に向かって、大声で呼びかける。

それに気付いた成美は、こちらを振り向き、そのまま私の元まで駆け寄ってくる。

「それじゃあ行こうか」

「そうだな。・・・・・・ハルのこともほったらかしだし・・・・・・」

「あ、すっかり忘れてた」

自分の頭をこつんと叩く。

「忘れんなよ、自分の部下!」

さっきの何倍もの勢いで殴りつけられる。

一応君も私の部下って扱いなんだけどね?

なんだかもやもやするけど、とりあえず会場へ向かうことにした。


「お久しぶりです。元気にしていましたか?」

一回戦同様、若いお姉さんがマイクを片手に手を振ってくる。多分見た目からして20代前半だろう。

・・・・・・どうでもいいかもしれないけど、この人絶対会社の同僚にモテてそうだな~。

なんなら毎日飲み会に誘われてそう。 (大当たりである)

「では第2回戦。バトルロワイヤルを開始します」

「バトロワか。ようやく大会らしいのが来たな」

成美が背中の刀に手を当てる。

「まず最初に、皆様が所持している武器は全て回収させていただきます」

「はぁ!?」

「成美、うるさい」

「もちろん、皆様の武器は厳重に管理させていただきますので、安心してお預けください」

「・・・・・・不安だ」

成美は心底嫌そうな顔をする。

「大丈夫だよ。私も今までの経験で盗難被害にあったことは無かったからね」

「ならいいんだが・・・・・・」

「ルールを説明いたします。まず、1回戦同様、東京都全域がステージになります。これから、皆様方には『IDバッジ』と、『ライフチェッカー』をお渡しします」

「ライフチェッカー? IDバッジ? 何のことだ?」

『IDバッジ』とは、参加者全員に配布される、所謂参加証明書のようなものだ。

そして、『ライフチェッカー』。これがこのゲームの重要アイテムになる。

「ライフチェッカーは皆様方の残存体力を表示します。このゲージが0になった場合、『ドロップアウト』となります。なお、『IDバッジ』が破壊された場合、問答無用で『ドロップアウト』となります」

ライフチェッカーは、コンタクトレンズ型の小型メカだ。(度付きもあり)参加者はこれを装着してゲームに参加する。

なお、コンタクトレンズが苦手な参加者にも配慮して、めがね型も存在する。

「使用武器はエリア内に配置しております。早い者勝ちですので、他のチームに取られないようにするのが勝利のコツです」

「え? じゃあ武器が無い場合って・・・・・・」

成美は何かに感づいた。

「もちろん素手だよ? あと武器は選べないから、あんたが得意な刀が必ず出るとは限らないからね?」

「結構ハードなゲームなんだな・・・・・・」

「では、バッジとライフチェッカーをお渡ししますので、受け取り次第、配置についてください」

横からスタッフらしき男性がやってくる。

「どうぞ」とバッジとライフチェッカーを手渡してくる。

「ありがとう」

早速装着する。

うん。やっぱり使いやすいね、このコンタクトレンズ。

成美も手渡され、装着する。

「よし、フユと私でチーム組むか」

「いや、ハルと芽亜李もいるでしょうが」

私たちのチームは、私、成美、芽亜李、ハルで組むことにした。


「さて、各地配置につきましたでしょうか? それでは開始です!」

その瞬間、他の場所に居たチームが一斉に襲い掛かってくる

「な、何で居場所が!?」

成美は驚いた様子で聞いてくる。

「多分ばれてたんだろうね。さぁ、『party time』だ」

私は応戦するべく、敵チームへと向かった。

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