第4話 盟友参上

今日も仕事を終え、自宅に帰宅する。

「流石に学校内での銃撃戦はキツかったな・・・・・・!」

リュックサックを放り投げ、ベッドに横になる。

今日学校内に侵入してきた暗殺者を戦闘不能にまで追い込み、縄で縛り付け尋問した。すると、どうやら岬の通っている学校は裏社会ではとっくにばれているらしく、よく犯罪者たちが岬の命を狙いに来るそうだ。

一応、学校には岬の護衛のために私以外のエージェントや暗殺者、SPがいるらしいけど。本当になんで護衛するために暗殺者に依頼するのか意味不明だ。政府公認の組織に依頼すれば良いのに。


ピンポーン


ふいに家のチャイムが鳴った。今日は何も注文していないはずだ。

敵の襲撃かもしれないね。

私は左手に銃を持ち、背中側に隠す。

「はーい。今行きまーす」

私は恐る恐る玄関のドアを開ける。

「よっ、久しぶりだな」

ドアの前には、左手でピースをした茶髪のロングヘアーの少女が立っていた。

「・・・・・・小坂か。とりあえず中に入って」

私は少女を室内に入れる。


「どうしたの、はるばる我が家へ来ちゃって。とりあえずお茶どうぞ。くつろいでね」

私は小坂を床に座らせ、お茶を手渡す。

「どうも。お前が組織本部からいなくなったからさ、ちょっと顔を見たくなってね」

「だからってわざわざここまで来なくても・・・・・・。あと武器はちゃんと隠して。刀とライフル丸見え。むしろよくここまで通報されずに来れたね」

私たちの所属する組織、『ETERNAL』は政府非公認の組織なので、人前で堂々と武器を出すことは出来ない。

非公認どころか犯罪組織なんだけどね。

だから国に公認申請しろって総統にいつもに言ってるのに。総統は一体何やってるんだろ。

「私みたいに小型の武器にしたほうが良いよ? 何でこの時代に日本刀なの」

「日本刀が好きだからかな」

「理由になってない。刃物系の武器を使うんだったらナイフにしなよ。こっちのほうが小回り利くし、隠しやすいよ?」

「長年使っている相棒を、そう簡単に変えられるものですか!」

ここで彼女について軽く説明しておこう。

彼女の名前は『小坂成美』、私と同い年で同期の隊員だ。

使用する武器は日本刀。髪はさっき言ったとおり茶髪で、ロングヘアーだ。念のため言っておくけど地毛である。

「冬は真っ白なきれいな髪で良いよね~。しかもさらっさらだし。同じロングでもこんなに印象が違うのか」

「真っ白なのもいいことばかりじゃないよ。周囲から浮くし」

私の髪はアルビノなので雪のように真っ白なのだ。

「で、いつまでここにいるの?」

「え? 帰って欲しいの? 悲しいなぁ~、お姉さん泣いちゃう!」

小坂がハンカチで涙をぬぐうしぐさをする。

そしてお姉さんって。同期でしょうが。

「じゃなくて、いつまで組織の外にいるのってこと。組織外で武器を持つのはやめたほうが良いよ。私が言えたことじゃないけど」

「組織には来週には帰るよ。それまでは冬と一緒に暮らそうと思ってるんだけど。良いかな?」

「帰って」

「さっきは否定したのに!」

「言っておくけど、私と一緒に生活しても一緒にいる時間ほとんどないよ」

朝起きたら早朝の指令。日中は学校で岬の護衛。晩は本業。というか晩が一番忙しい。そして深夜も寝てる最中に本部からの連絡でたたき起こされ仕事に行く。

・・・・・・私もしかして社畜?

「別に昼は私も仕事だし。ていうかいつも合同で任務にあたっているとき思うんだけどさ、その「『Let's party time』」って決めゼリフ。ダサいからやめたほうが良いよ?」

小坂はお茶を一口飲んだ。

「これには深い理由があるの!」

「ほぉ~、聞かせてもらおうか」

「昭和の不良か」

この時代からしたら、昭和なんて遠い昔だけどね。

「・・・・・・早いもんだな、時間が経つのは。もう10年前か。私たちが組織の施設に入ったのは」

「あの時は本当に仲が悪かったよ。今ではこうやって話をする仲だけど」

「そうそう。で、早く理由を聞かせてくれない?」

ごまかせなかった。

「・・・・・・それは、話す時が来たら言うよ」

「・・・・・・分かったよ。そうと決まれば、まずは夕食だな」

「はいはい。晩御飯何がいい?」

「カレーかな。冬のカレー美味いからな」

成美はテレビをつけ、横になった。

くつろいでとは言ったけど、流石にここまでする?


「やっぱ美味いな! 冬の作るカレーは!」

「まぁ、組織で部隊の部下や後輩、上層部に料理を振舞ったりすることが多かったからね。その成果もあるのかな」

私のカレーは絶品らしく、成美はあっという間に食べきってしまった。

「冬さ、暗殺者辞めて料理の道に進んだら良いじゃん。冬の腕前ならお客さんすぐ来るよ?」

「・・・・・・うん。でも、私はこの仕事を続けるよ」

私は首にぶら下げている月型のペンダントを手に取った。

「ふーん・・・・・・。ま、別に止めないけどね」

成美は再び、テレビを見始めた。

「さてと。多分今日も指令が来るから、それまでに準備しておこうか」

「そうだな。私も刀の手入れでもするか」

「・・・・・・静かにやってね」

こんなタワーマンションでゴリゴリ音出したら大迷惑だ。絶対警察やって来るよ。

そうなったらそうなったで殺すけど。

警察なんかには負けないよ。


「そろそろ来るかな」

「お前こんな時間に本部から要請来るのかよ・・・・・・。本気で休んだほうが良いぞ・・・・・・?」

「日課だから慣れたよ」

慣れとは恐ろしいものだ。

私たちは組織の制服に着替え、テレビを見ながら待機していた。随分のんきだなぁ。

机の上に置いてあったスマホが震える。

「あ、来た」

「本当に来たのかよ」

私はスマホを手に取り、通話を開始した。

「はい、フユです」

「深夜遅くにすまないね。頼めるかな?」

すまないって思ってんなら仕事減らせやボケ。こちとら未成年だぞ。

心の中で、総統に日ごろの不満を吐き出す。

「分かりました。それで内容は・・・・・・」

「武器商人の暗殺だ」

「うえ~、武器商人ですか・・・・・・」

武器商人系の依頼は結構厳しい。

武器のストックは無限にあるし、その周りにいる人たちも戦いなれているので一筋縄ではいかない。

私の部隊の子達も何人死んだことか。

「了解です。場所は」

「浅草の神社だそうだ。まもなく商人が到着する見込みだ。早急に向かってくれ。ではこれで」

総統との通話が終了した。

「さてと、出発しますかね」

私は家の電気を消し、武器を装着する。

「おい待てよ。まさか、一人で行くってんじゃないだろうな?」

「・・・・・・命の保障はしないよ」

「分かってるって。暗殺者なんて、今この瞬間死んでもおかしくない職業なんだからな。それくらいの覚悟なきゃ、暗殺者なんてやってないよ」

成美は床に置いてあった刀を持ち上げ納刀する。

「「『Let's party time』」」

私たち二人の声が重なった。


「現場に到着っと。武器商人はどこかな~」

銃を構え、あたりを見渡す。

「それにしても、いい月だな。寺の巨大な提灯がいい味を出してる」

「今度休み取れたら連れてきてあげるから、今は任務に集中して」

「社畜少女に休みなんてあるのか~? あ、居た」

成美が指差した方向を確認する。

今まさに、銃の取引をしている現場だった。早急に処分しないと。

「成美は後ろから回り込んで。私は正面から行く」

「りょ~かい」

成美が後ろ側に回ったのを確認する。

私は現金を受け取っていた男の背中を射撃する。

「! 誰だ!」

前方へ走り出す。

近くに立っていた男二人を射殺する。

「貴様・・・・・・、まさか!」

「そのまさかだよ、おじさん」

「この女、治安維持部隊の奴じゃないですか!?」

男の部下らしき人物がピストルを取り出す。

私はすかさずピストルを狙い射撃する。男の手元からピストルが離れたのを確認し、射殺する。

「このっ!」

武器商人のリーダーらしき人物は、ピストルを2丁取り出す。

「ぎゃあああ!」

その瞬間、男の背後から悲鳴が聞こえた。

「な、何だ!?」

男の後ろには、何人もの男たちが血を流して倒れていた。

その前には、血の付いた刀を握った成美がいる。

「どう? 私も腕、上げたでしょ?」

成美はその後も連続で男たちを切りつけていく。

「なんなんだよ! お前ら所詮、組織の捨て駒だろ!?」

男がピストルを乱射してくる。

まともに狙いをつけていない銃弾を避けるのはたやすいことだ。

私は徒歩で男に近寄る。

「何で当たらないんだよ!」

「終わりだね」

私が男を射殺しようと、銃をスライドさせた瞬間。

「くっ・・・・・・。!」

「な、なんだよ!」

男がそばを歩いていた少女の首元を掴み、こめかみに銃口を突きつける。

「この女がどうなっても良いなら撃っても良いぞ?」

「卑怯な・・・・・・。って岬さん!」

人質にされていたのは、岬だった。

「冬・・・・・・? 何で銃なんて持ってんだよ!」

まずい。私の正体がばれてしまった。

でも、まだ暗殺者ということはばれていないだろう。ばれたのはあくまで治安維持の部隊ということだけだ。

「岬さん、ごめん。ずっと隠してて」

「私のことはいい! 早くこの男を倒してくれ!」

「そんなこと出来るはずないでしょ!」

護衛する側が護衛対象を射殺するなんてあってはならない行為だ。

もしそんなことをしてしまったら、私は組織から大目玉だ。最悪幹部の座も剥奪される可能性だってある。

「フユ! あんたなら出来るでしょ!」

「成美・・・・・・」

成美はこちらを見て二カっと笑った。

「・・・・・・分かった」

こっちにも世界一の暗殺者としての意地ってものがある。

銃の腕前を舐めないで貰いたい。

「・・・・・・チェックメイト」

私は男に狙いを定めて射撃する。

「!」

岬が目を瞑る。

次の瞬間、男は岬から手を放し、ゆっくりと倒れこんだ。

「・・・・・・生きてる・・・・・・」

「当たり前でしょ。関係の無い人まで殺さないよ」

私は銃を腰にしまい岬に近寄る。

「グハっ・・・・・・」

正面で男の断末魔が聞こえる。成美も終わったらしい。


私は男の前にしゃがみ手を合わせる。

「・・・・・・お前、治安維持部隊だったんだな」

ついに岬から聞かれてしまった。こうなったら正直に話すしかない。

「そうだよ。私は貴方を守りに来たの」

正直に話すとは言っても、一部を濁してだけど。

流石に暗殺組織だなんて言えないよ。

「私を、守る?」

「そう。貴方の護衛のために私は貴方に会いに来たんだよ」

私は岬に微笑みかける。

「・・・・・・ふーん。良い友達ができたんだね」

「成美・・・・・・」

成美は神社の柱に腕を組みながらのっかかっていた。

「仲良くしなよ、二人共。私は先に戻ってるからフユは岬を家まで送ってやって」

「分かった。気をつけてね」

成美は先に家路についた。

成美の姿はどんどん遠ざかっていく。

「さて、岬さん。私たちも帰ろうか」

「・・・・・・そうだな」

私は岬と手を繋いで、月明かりに照らされながら岬を家まで送り届けた。

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