第2曲 エンディング(back number)

 この枠では、back number「エンディング」について考えていきます。隔月更新とかいいながら、半年も投稿しないでごめんなさい。スマホではどうしてもしっくりこなくて……という言い訳もそこそこにして、見ていきましょう。


エンディング/back number

【 https://www.youtube.com/watch?v=t3JZnGgxSWg 】


 この曲は、今まさに別れようとしている二人の歌です。主体は男性で、目の前の女性から別れを切り出されたという場面が目にありありと浮かびます。アルバム「blues」では4曲目に収載されています。

 歌詞はストレートで、解釈と言うより解説に近いかもしれません。 

 

①男性と女性の性格

 この曲には恋仲にある男性と女性が登場します。

 1番Aメロ、2番Aメロでは、それぞれの性格が浮き彫りになっています。まず男性について。


  二人でいるといつでも僕は僕の話ばっかりして(1A)

 

 一方女性については、男性の視点ではありますが、次のようにあります。


 (上の歌詞に続けて) それでも君はいつでも嬉しそうに話を聞いてた(1A)

  寂しいも会いたいもしまい込んでは微笑んだ君の(略)(2A)


 以上からわかるのは、対照的な二人の姿です。でこぼこと言ってもいいかもしれません。男性は自らを語りたい。一方女性は自分を押しとどめて笑っている。凹凸がはまっているときはそれでもいいけれど、そうでなくなったときに悲劇が起こるのです。


②男性の罪

 この曲は、主体、つまり男性側へのヘイトが積もる歌です。いつも言いたいことを言っていた男性が、このときには言葉を失う。「ありがとう」と言った女性に対し、男性はあることに気づきます。


  君の代わりなどいないと気づいたのに(1・2サビ)

  君の代わりなど僕はいらないのに(3サビ【曲の締め】)


 しかし、それを相手に伝えたかどうかは不明です。

 男性は一つ致命的な思い違いをしていました。


  寂しいも会いたいもしまい込んでは微笑んだ君の 

  その顔を笑顔だといつの間にか思い込んでたんだろう(2A)


 後の祭りという言葉があります(back numberのアルバム名にもなっています) が、まさにそれを体現しています。


  僕は一体何をしていたんだろう 君にこんな顔をさせるまで(C、3サビ前)



 また、この曲における男性の最大の過ちが、なんだかわかるでしょうか。この曲のサビは繰り返し同じフレーズを歌います。

 

  あの日二人で観た映画のエンディングみたいだねと君がふと笑い出す


 これは女性の言葉です。自分たちの別れの場面が、いつか観た映画のワンシーンみたいだと、恐らく若干の揶揄を込めて語っているのです。しかし、最後のサビ前、こんな歌詞が出てきます。


  あの日二人で観た映画のタイトルすらも僕は思い出せないままで

  最後の最後になってまで君に何ひとつしてやれないんだね


 女性側は、二人の思い出の中から今にぴったりの場面として映画の一場面を想起しました。「二人の思い出」というのが大事な点です。

 つまり、目の前の男性も思い出を共有しているだろうという想定の下でこの言葉を語っているわけです。

 しかし、残念なことに男性の方はタイトルを思い出せません。彼の記憶には、その思い出が、少なくとも鮮明には残っていない。つまり、共有ができない。

「何ひとつしてやれない」とは、女性の比喩に共感することさえできなかったという男性の自業自得ではある無念さを表しているのです。また、男性はどこまでも「我」です。1番Aメロもそうですし、1番Bメロにも「君が僕にしてくれた事はいくらでも思いつく」とあります。自分にまつわることは覚えている彼が、自分がしてあげたことは思い出せない(1B)ということはつまり、そんなことはひとつもなかった、ということです。これが男性の罪といえます。



③女性の罪

 では女性の方には非はないのでしょうか。

 男性を主体とし、その男性の「罪」を暴くという構成上、女性の姿はなかなか「被害者」としての姿以外にはなかなか浮き上がりません。しかし、それは一面的でもあります。


 女性の罪。それは男性の逆といえます。

 つまり、女性は我慢しすぎた。言葉が足りなくて、気持ちを大切にし過ぎた。


  寂しいも会いたいもしまい込んでは微笑んだ君(2A)


 そんな彼女が初めて言葉にしたのが別れの言葉だったとするなら、これもまた「後の祭り」です。

 きっとこの女性はとてもやさしい人です。打ちひしがれた人に、何も言わずそっと抱擁を返すような、そんな人でしょう。しかし反面優柔不断ともいえます。

 最後の別れも、言いたいことを言って別れることもできたはずです。あの頃は~だったのに、とか、もっとこうしてくれたらよかったのに、とか。

 しかし、そんなことは言わず、笑顔で、今の自分たちを映画のワンシーンに仮託するのです。

 あるいは男性を試したのかもしれません。しかしそこから先は最早推測するしかありません。






 さて、今回は非常に暗いテイストの曲となりました。しかし、back numberの巧みなところは、対になるような曲を同じアルバムに用意していることです。それは3曲の地、7曲目にあたる「笑顔」です。この曲、言葉足らずな男性が主体で、「エンディング」とは逆ですが、こちらも合わせて聴いてみてください。


笑顔/back number

【 https://www.youtube.com/watch?v=NboDML6QPyA 】

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