2章:六歳~八歳

「入学おめでとうございます」

小学校入学式。少し大きめサイズの制服かスーツか分からない服を着せられ、私は体育館で大人しく座っていた。

隣に座ってる女の子なんて、真っ白のドレスみたいな服を着ていて印象的だった。

私は学校という環境が好きではない。だって育った環境がまるで違う子供、しかも同級生が1つのクラスに集められる。牢獄のように息苦しい。

私は、子供が本来持っているべき純粋さを失いかけていた。

「では、教室に移動しましょう」

ざっと列に並び、向かいの校舎までゆっくりと案内される。

教室に入ると、木材のような独特な匂いに胸が締め付けられた。

みんなは不安と期待が入り混じった様子なのに、私だけ大きくかけ離れている。

だって、私だけだよ。同じ教室に入ったクラスメイトをじっと見つめてるのなんてー。

そして無言で、一人ひとりの机に貼ってあるそれぞれの名前を心の中で読み始めた。

珍しい名字の人、保育園にいた人と下の名前が同じ人、男子か女子が分からない名前の人。

ー私の席はどこ? あ…あった。

音を立てないように椅子を引いて腰を下ろす。

自己紹介をしている担任の先生。廊下や教室の後ろで我が子を探している保護者。

私はここにいるのに、ここにいないような気持ち。

別世界へと魂だけ飛んでいってしまったようだ。

最近というか、結構前からだけれど、こんな風に「心ここにあらず」のような状態になる事があった。

何となく理由は分かっているけれど、絶対には口には出したくない。

出してしまったら、多分泣き叫んで狂ってしまうからー。


「こら、光羽ちゃん。40分までに戻ってきなさいって言ったでしょ」

今は45分、もう3時間目の授業は始まっている。

私は、教室中の視線、そして担任の先生からの叱責を堂々と交わしていた。

小学校には、20分休みという時間があって、その時間は校庭や教室で遊ぶ事が出来る。

でもこのクラスだけは15分しか遊べない。先生が「チャイムが鳴るまでに席に座っていられるように」との事らしい。

でも私だけはチャイムが鳴るギリギリまで遊んでいた。

ー正確には、遊ばさせられていたのだ。

『もう、40分だから教室に戻らないと』

私は一緒に遊んでいた他のクラスの女の子にそう告げた。

ルールだから、ちゃんと告げた。

それなのにー。

『何でよ。有姫のクラスは、45分まで遊べるよ!』

あなたのクラスとは違うの!そう言いそうになった。

『でもルールだから…』

私は、やっぱりルールは守るべきだと思った。だから負けじと言い返す。

『じゃあ、もう一緒に遊んであげない』

勝手にしろ。

でも私は、何故か45分まで遊んでしまった。

結果、有姫は満足そうに教室に戻って行った。でも私はー。

怒られた。

もう入学してから数週間は経つのに、クラスに誰も友達がいない私を、みんなは少し不気味そうに眺めていた。

友達なんてなんで必要なの? みんなが私を変な目で見るのは何故?

このクラス全員が一瞬にして嫌いになった。

結局、怒られた事なんて放課後になればすっかり忘れていた。

私は有姫と一緒に帰り、いつもお世話になっている施設へと向かった。


「おかえりー」

ドアを開けた瞬間、子供たちの熱気がブワッと伝わってきた。

ここは、児童クラブ。通称「学童」とも呼ばれる施設だ。

指導員が玄関まで来て、私たちに声をかけてくれた。

私はここに4月1日から放り込まれた。前日、お母さんに「明日から学童に行くんだよ」と言われ、それから日曜日以外は毎日ここでお世話になっている。

有姫とクラスが違うのに仲良くしているのは、この施設が出会いだからだ。

「光羽」

ランドセルをロッカーにしまい、床に座っていたら声をかけられた。

「梨南ちゃん!」

1つ年上のボブカットの女の子。奥二重の目が愛らしい梨南ちゃんは、私が初めて学童に来た時に声をかけてくれた人。

それから仲良くさせてもらってる。

仲良く…これほど仲良くという意味を間違って使っているのは、私だけかも知れない。

社交性がなく純粋さを失っている私に、どんな人が寄ってくるかなんて想像がつくだろうに。

ー数日後。それを決定づける出来事が起こった。


「光羽を返して!」

「光羽は梨南のもの」

私は今、両腕を拘束されている。両側からそれぞれ違う女子に引っ張られているのだ。

右腕を梨南ちゃん、左腕を有姫にー。

「何で取るの!」

泣いている有姫とは正反対に梨南ちゃんは冷静だ。

真顔で有姫を見つめていた。

そして有姫の隙をついて私の腕を思いっきり引っ張った。

私は梨南ちゃんの方によろめく。その勢いで有姫の方から離れる形になってしまった。

少し前、おやつの時間と掃除が終わり、外遊びの許可が降りた。

私は梨南ちゃんと一緒に、学童の裏にある野原で遊ぶはずだった。

「光羽ちゃん」

そこに有姫が来るまでは。

私は身体が凍りつくような感じがした。第六感が私に場を和ませるように命令してきた。

でも間に合わなかった。

一瞬で両腕を拘束され、この喧嘩が始まった。

学童に入ってきてから、私の周りには心が荒んでいる女子ばかりが寄ってくるのだ。

有姫は見ての通り、感情の起伏が激しく凶暴。梨南ちゃんは冷酷で人を平気で痛めつけられる。どちらにも共通しているのは「自分の思い通りにならないと、人のせいにして傷つける」という点だった。

つまり、自分勝手という事だ。

何故、私の周りにはこういう女子が寄ってくるのかは知らないが、いつも私がいる時に限って喧嘩をする。

ーまるで、私の家族みたいだ。


土曜日も私は学童に放り込まれていた。

家にはおばあちゃんがいるから、本当はこっちにいる必要は無かった。

『光羽は人見知りで何も喋らない。ママね、光羽に色んな経験をしてほしいの』

そんな理由で放りこまれた私の気持ちも分かってほしい。

お母さんを前にそんなワガママを言えるわけはない。

だから渋々、ちゃんと朝からここに来ている。

でも私はどこにいても苦労する。

「おい、みわ法師」

は? みわ法師って私のこと?

同じく、土曜日も学童に来ているウザい男子集団に目をつけられてしまった。

ふと、保育園の時、私に意地悪をしてきた男子たちを思い出してしまった。

グッと歯を食いしばる。もう最悪だ。

でも、私はお得意の「スルー」で交わしていた。

それに土曜日は梨南ちゃんはいるが、有姫はいない。

ケンカされなくて済むし、私は梨南ちゃんの事だけ考えていればいいのだ。

ある意味、平和だ。

というより、みわ法師って何? 変なあだ名つけないでよね。

まだ琵琶法師の存在を知らなかったので、男子は頭がおかしい奴らとインプットしてしまった。


   ※ ※          ※ ※


「ハハハ…」

前の席の方から笑い声が聞こえた。

笑っている人を私はボーッと見つめる。相変わらず、クラスには馴染めそうに無かった私だが、最近ほんの少しだけ気になっている人がいた。

名前は秋日。穏やかで優しい人。

先日、私は同じクラスの女子に消しゴムを隠された。人に何を言われても気にすることの無かった私でも、物となれば話は別だった。

泣きたかった。でもクラスに友達がいない私には、声を上げることは許されない。

『どうしたの? もしかして何か取られた?』

秋日がそう声をかけてくれた。その時は本当に救われた。

対して仲良くないのに…なんてひねくれる気持ちも消えた。

首を立てに振ると、秋日は先生に言ってくれた。消しゴムはもちろん返ってきたが、隠されていた場所が女子トイレだったので、家に帰るなり消しゴムは捨てた。

でもこんな私にはもう一生ないであろう経験をした。

単純かも知れないが、それだけで気になるというか、他の人とは違う認識になってしまった。

男子なんてウザくてバカで口が悪くて弱虫で…って心では思っていたのに、秋日にだけは「優しい人もいるんだな」みたいな考えに変わっていった。

どこか冷めきっていた心が癒された気がした。


最近。私にはハマっている事があった。

学校にとうこうすると、後ろの席の子の筆箱をイジる。

その子は私が筆箱に触っていても、笑顔でそれを眺めている。

秋日との件があってから、私はちょっとずつクラスで話せる子が増えた。

私に筆箱をイジられている女の子もそのうちの一人で、彼女は人と話すのが苦手で怖いくらい何も話さなかった。いずれ、彼女は場面緘黙症だったのだと知る。

でも私にはたまに話してくれるし、嫌がっている素振りも無かった。

秋日のおかげなのかは、よく分からない。でもそんなのどうでもいいくらい、クラスに馴染み始めていた。

入学してから何ヶ月も経っているのに馴染むのが遅い。1歩遅れている、と言われた保育園時代は今だに忘れられない。

「中庭行こー」

20分休み。同じクラスの香織と一緒に中庭のブランコで遊ぶ。

有姫とは最近、学校では遊んでいない。向こうもクラスで友達がいるみたいだ。

香織は入学式の時、隣に座っていた白いドレスみたいな服を着ていた子だった。

出席番号が近いから、4月頃は私と席も近かった。よく私の方をチラチラ見てきたり、物を落とした時拾ってくれたり、妙に落ち着きがない子だなと記憶していた。

「でも、ホント香織ちゃんと同じクラスになれてよかった!」

私は香織と仲良くなれて嬉しかった。その気持ちに嘘はない。

現在でも、変な奴らはクラスにも学童にもいるけれど、そんなの気にならなくなった。

純粋さを失いかけていた私が、その純粋さを取り戻そうとしていた。

だから、年末年始を今月末に控えた12月、お母さんの口から「お父さんと離婚してきた」と突然告げられても泣かなかった。

私は今の環境に居ていい。必要とされている。

数日後、足を骨折して松葉杖で登校した私を、クラスのみんなは下駄箱の前で悲痛な目を向けてきた。すぐに集まって来て声をかけられた。

しばらくは不便な生活を余儀なくされたが、仕方ないと受け入れた。

骨折したのは、同級生のお兄ちゃんに追いかけられて、逃げてたら足を挫いて剥離骨折をしてしまったというドジが原因。

おばあちゃんが自転車で毎日送り迎えをしてくれて、学校でチラチラ見られるたびに俯いていた。

運が悪いというか、試練が多いだけ。私の人生は。


「光羽ちゃん。今度、全校朝会でこの作文発表しない?」

え…全校朝会で?

作文を書く授業で、私は先生に声をかけられてしまった。

夏休みも、勝手に私の作品が冊子に載って、秋日にめっちゃ褒められて恥ずかしかったのに、なんでまた目立つような事を…。

「すごい良い作文だから」

そんなの自分でもわかってる。だって今までで1番の出来だと思っていたから。

結局ー発表する羽目になった。

1年生、1クラス1名、作文を発表した。

あんま緊張しなかったのは、知り合いが少ないからだろう。

3学期はあっという間に過ぎ、2年生に進級した。

ー2年生で私の性格はガラリと変わった。


   ※ ※          ※ ※


「同じクラスになったねー」

下駄箱の前で新クラス表が配られ、私は新しい教室に向かうと、そこには有姫がいた。

私的には、結構良いクラスだと思った。担任の先生がクソだったけれど。

「あれ、光羽ちゃん」

名前を呼ばれ振り向くと、心がドキッとした。

「あ…糸音ちゃん」

去年、有姫と休み時間に遊んだ時、有姫が連れてきた子。それから廊下や下駄箱で会うたびに手を振っていた。

私の人間関係は異常なほど束縛する有姫なのに、その張本人は色んな人を連れて来る。

ワガママだか、もう言葉が出ない。

「同じクラスだね」

私は当たり障りなく返す。初めて遊んだ時から、聞き上手で穏やかな子だなと思っていた。

「ねー、嬉しい」

「あ、光羽だ」

「おー大祐!」

なんと同じマンションに住んでいて、入学式の時に存在を知った彼。

そして

「光羽ちゃん!」

「おー梨沙子ちゃん!」

有姫や私と同じく、学童に通っていて家が近い彼女。

仲の良い人、関わりのある人が、ほとんど集まったのだ。

私は満面の笑みで集団に溶け込む。これが吉と出たのは言うまでもない。


「マネしないで!」

「マネしないで~」

私はウザい男子集団に言い返した。

2年生になってからも私は土曜日に学童に通わさせられていた。

それよりも去年よりもヒートアップしている気がする。

でも全然まだ平気だ。だって居るのは普通に楽しいし、新しく入ってきた新1年生とも話せている。まぁ、1つだけ不満があると言えば…。

「梨南の従妹だよ」

紹介された、佐良と名乗った子がかなり生意気なのだ。

私に文句や指示を出してくる事は少なかったけれど、なんとも梨南ちゃんにベッタリで、その梨南ちゃんも佐良の影響で変わってしまったのだ。

だって2人は今は従姉妹だけど、元は姉妹だったとかなんとか言っているのだから。

複雑なんだな、ってサラッと流しておいた。

そんな事よりも、私は心がイラついていた。

「梨沙子嫌い」

私と同じクラスになった梨沙子は、去年よりも私と関わりが増えた。すると梨南が私から梨沙子を引き剥がそうと悪口を言い出した。

それに佐良までもが一緒になって言い出すのだから呆れる。

一応年上だよ…。見てるだけの私も同罪か。

「ウチ、梨南ちゃん嫌だ」

梨沙子が私にそう言ってくることにも慣れた。だから私はどっちとも関わる事により、問題から目を背けていた。

クラスでは梨沙子、有姫と一緒にいる。香織とも同じクラスにはなったが、お互い別の人と関わるようになった。

現在はクラスの方が断然、居心地が良かった。

有姫は梨沙子も気に入ったみたいで、私と同じような扱いで梨沙子までもを縛り付けていた。

そんなこんなで、あっという間に月日は過ぎた。


「あれ、消しゴムの中身がない…」

配り係で席をしばらく立っていた私は、席に戻ると消しゴムの真ん中に入っている飾りだけが無くなっているのに気がついた。

どっか落としたかな…? でも机の周りには何も落ちていなかった。

去年、学童でロッカーに入れていたランドセルがひっくり返っていて、ランドセルの腕を通す部分につけていた時計が千切れていたのを思い出した。

その時は、時計は古かったからどこかに落ちて、ランドセルは床に落ちていたのを誰かが拾ってロッカーに入れてくれた、という事で深くは考えなかった。

でも「もし嫌がらせだったら…」という考えはずっと消えなかった。

ものすごく不安になった。でも、ここで声をあげないわけにはいかない。

「有姫…」

「ん?」

「消しゴムの中身が無くなったんだけど…」

そういえば、さっきまで有姫は私の机で何かやっていた気がする。もしかしたら何か拾ったかもしれないと思った。

「え、知らないよ。じゃあ探すか」

私たちは休み時間を探し物の時間に当てた。

みんなとは色んな意味で差がある私に、おばあちゃんは「可哀想だから」との理由で、可愛い文房具を買ってもらう機会が増えた。

「今日から」持ってきていた消しゴムもその内の1つだった。

消しゴムの中央部分に花の形をした溝があって、そこに小さな飾りが入っている。

持ってきて早々、無くなるとか運が悪い。

結局見つからなかった。もう諦めようと思い踏ん切りがついた。

幸運にも2つ入りだったので、もう1つは学校には持っていかず、家で大事に使った。

しかし、数週間後。無くなっていた消しゴムの飾りの在り処を見つけてしまった。

ー取り返そうとも思わなかったし、声を上げる気にもなれなかった。

飾りだけが無惨に、有姫の筆箱に隠されていたー。

彼女は探すふりをして、見つかるわけ無いと知っていたのだ。

人の幸せを許せない。自分の事しか見れない、考えられない人なのだ。

そんなの、ずっと前から気づいていたのに、今でも笑顔で一緒に過ごしている。


「もう有姫ヤバい」

同じマンションなので通学路も同じ大祐と一緒に帰っている時、彼が私に愚痴ってきた。

今クラスでは、有姫と大祐が争っている。喧嘩や仲違いを超えて、もはや戦闘に近かった。

有姫は大祐の折りたたみ傘を壊した。そして縄跳びで首を絞めようとした。

下校中に、走り縄跳びをしながら帰る有姫に問題がある事は誰から見ても分かったので、みんなで止めに入った。

彼女はそれ以外にも、全く関わりのない人の家のチャイムを鳴らして逃げる、いわば「ピンポンダッシュの常習犯」でもあった。私も1度だけ付き合わされた事があり、それから怖くなり有姫とは一緒に帰らなくなった。

学童に帰らなきゃいけない時間を平気でオーバーする日もあった。

どこに居たかなんて言えない。だって小学校の周りを1周するだけ、とか言いながら何時間も振り回されるのだ。そのおかげで、覚えなくて良い道まで覚えた。

心では嫌がっているのかも知れない。それなのに私は有姫と一緒にいたいと思ってしまうのだ。

「私、あんたなんか大嫌い!」

「僕だって関わりたくないよ!」

ついにクラスメイトの絆がバラけてしまう日が来てしまった。

クソ担任の出張中、有姫と大祐はクラスほぼ全員を巻き込んだ戦闘を始めてしまった。

悪縁。みんなの目にはすぐ分かった。

でも2人はお互いの事しか見えていない。因縁の仲だ。

クソ担任が帰ってきてからの給食の時間。2人は発狂していた。

運悪く席が隣になってしまって、しかもこのクラスだけ席替えを全くと言っていいほどしないので、ずっとこんな調子だ。

班にして給食を食べているので、2人と同じ班のメンバーはビクビクしていた。

先生も注意するかと思いきや、ただ見てるだけ。

まぁ、この発狂を期に戦闘は終わったけれど、私の中にはわかだまりが残ったままだった。


『家庭環境って大事だよね』

『まぁ、そうね』

『だってさ、その人の人格を左右するんだよ。家庭環境に恵まれてる人は、その環境が「当たり前」だから分からないんだよ』

『なるほど』

『もっと恵まれてたら、何か違ったのかな…』

『自分の人生恨むなよ。生きていれば明日は来るんだから、明日は明日の世界で、今日とは違うんだよ』

『明日は来るか…。確かに死んだらもう明日は来ないよね』

『「生きてるだけで偉い」とか「生きていれば良い事がある」とか確かにそうかも知れないけど、伝え方が間違ってるんだよ』

『その伝え方だと「今のあなたの苦しさなんて軽いもので、苦しさから懸命に逃れようと足掻いている自分をバカにされた感じ」がしちゃうよね』

『だから尚更、苦しさだけが倍増して自殺者が絶えないんだよ』

『うん…。それは言えてる』

『だからさ、みんな綺麗事言ってないで、もっと本質を見ようとして欲しいね』

『本質、というと?』

『自殺しようとした、自殺した、自殺願望者、だとかそんな表面なものじゃなくて、なんでそうなったのか、なんでそういう手段しか選べなかったのか、なんでそこまで苦しめられているのか、って事を考えろって意味』

『そこまで考えてる人は少ないよ』

『だろうな。人間は自分の事で手一杯になると、他人を疎かにしがちになる』

『そこで「見捨てた」側は都合の良いように生きてる人間に話す』

『つまり何が言いたいのかな?』

『人間はバカなんだよ。正確には人間という生物を開発した人がバカ』

『ボロカス言うね』

『だってそうだろ。こんなに苦しいのも、こんなに悲しいのも、こんなに辛いのも、全部人間を開発した人のせいだよ』

『じゃあ、どうすれば良いんだろ…』

『何弱気になってんの。君らしくない』

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