第3話 曙光
「ミカエーーーーーール!!!」
「おお、我が神よ。お呼びでございますか」
「どうなってんだコイツ!! なんでこのモブキャラが蒼い炎を消しちゃうんだ? 魔王軍精鋭も魔王軍の居城も焼き尽くすチートの炎だぞ! 我がバトル物は飽きてるから、戦いは短めにするために作ったチート魔法だぞ!? それが何でモブに効かないんだよ!?」
「何でと言われましても、神のみぞ知る所業にて」
「出た! わかんないと直ぐそれ言えば済むと思ってるの。我も知らないなら、この世界はなんだよ!?」
「では、私めが調べてみます、えーっとちょいちょい」
虫眼鏡のような物を異空間から取り出し、それでシゲシゲとマッチョを観察している。
アナライズするのにそんな虫眼鏡いる設定に作ってないから。
「我が神、分かりました。彼はどうやら不死属性のようです」
「ふし!? なんで村人が不死なんだよ!?」
「さぁ……最近の異世界創造の傾向としてランダム化にハマってらっしゃたのでこういう場合もあるのかと」
「……たしかに、マンネリ化がな。どうしても我が考えると似たような世界観で似たような小癪なツインテールがヒロインだしな」
「ええ、我が神の世界は全てにおいて完全無欠ですが、あえて新たな世界に挑戦される御心もまた感銘を受けます」
ミカエルはうやうやしく頭を下げる。
こんなやりとりを何万回しているか忘れたよ。
「ともかく、修正しろ。ランダムも良いが、流石にこの流れでこのキャラで不死属性なんて台無しになる」
「……申し訳ございません。できません」
「何を言っている、神の命だぞ! すぐにこの素っ裸ヒゲ面マッチョの不死属性を解け!」
「僭越ながら申し上げますと……57番目の異世界イフテートにて、次回以降の創造後の修正は一度のみと、神自らおっしゃられましたので」
縛りプレイ中だった!
……あー、そうだ忘れていた。
ランダム化において気に入らないから修正入れ過ぎていたら、小癪な巨乳ツインテールヒロインとゴールばっかりしちゃうから修正は一回だけにと初期設定で固定化させていたのだ。
「って、じゃあ、どうすんだよ! この素っ裸マッチョは!!」
「巻き戻しますか?」
「巻き戻してもこいつはいるんだろ? んで、この場面になったら、出てくるじゃないか!? 見ろよ、このベルリの困惑した顔!? 全然、憎めない!! むしろ、同情するよ!!」
「では、64個目の異世界創造しますか?」
ミカエルの問いに固まる。
……64個目とか、コイツは簡単に言うけど創造するのにどれだけ時間がかかると思っているんだ?
分かっていて言ってるんだよコイツは。
ムカつくなぁ、この両性具有天使。
神を舐めているとかありえんのか?
あり得ない、あり得ない。
コイツ消し去って、ルシフェルに戻すか。
……あいつも、勝手な設定入れてくるんだよな。だいたい自分が魔王だとか言って神に逆らう設定にすんの。
ダメだ、アイツの芝居かかった父上!!とかのセリフほんと鳥肌もんだもん。
ミカエル進行が無難だ。
「いや、創造はしない。このまま、コイツは無視する。不死属性だけだろ? 戦闘面での特殊なスキルとかないだろ?」
「はい、マッチョなだけです」
それは見た目で言ってるのか?
「では、始めろ! あ、待て、取り敢えず、その辺の群衆に取り囲ませてどこかに連れていけ」
「仰せのままに。あ、セクサソールが」
抜けかけていたセクサソールを右肩に刺し込む。
いまいち、切れ味悪いんだよな、だから中途半端に痛い。
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