第2話 マッチョへの意志
「アラン……オマエ、何してんだ!?」
この辺りからか、えーっと、なんだっけ
そうだ、そうだ、ベルリはライバルだけど仲間であったから
きっと信じてくれる感じだ。
「ベルリ、聞いてく」
「ベルリさまぁ!!」
クソ王女がベルリへと駆け寄り抱きしめた。
「どうしたんだグレイ、何故泣いている!?」
……グレイ? だと? まさかそんな関係なのか。
これは最悪だぜ。
「昨日の夜中にアランさまが……わたし……わたし」
みなまで言わない事が効果的なような顔でベルリに縋りよる。
こちらを向きながら邪悪な笑顔でまつ毛を揺らす。
王宮の外には断頭台とその周囲には群衆が押し寄せ、怪訝な表情で俺を見ている。
「アラン……キサマという奴は」
赤の戦士であるブリリア・スローンがグラマラスなボディを隠して睨んでいる。
ブリリア……あの日、焚火を囲んだ友情の思い出が崩れていくように思えた。
「……アランさま」
白の神官であるラピス・ハウンエンも心配そうに大きな瞳でこちらを伺っている。
ラピスなら、ラピスだけは信じてくれるはず。
「アラン!!」
大声を張り上げながらベルリが大股で近づいてくる。
今にも剣の柄に手が届きそうな勢いだ。
ベルリ、信じてくれ、俺は何もしてないんだ!
「ベルリ! 信じてくれおれは」
ぐさりと右肩に鋭い痛み。
「うがぁぁぁぁ」
「アラン……良いざまだなぁ。俺はこの瞬間をずっと待ち望んでたんだぜ」
聖剣セクサソールを俺の右肩に刺しつつ、耳元で呟いてきた。
そんな、ベルリ、嘘だろ……。
「ぐぅううう……ベルリ、どうして? 俺は昨日、宿屋にいた」
「ふぇへへへ、それがどうした? キサマは『いなかった』んだよ。まぁ、俺はあの後、王宮に行ったんだがな」
「……そんな、お前がこの陰謀を、ぐあぁぁぁ」
右肩のセクサソールがグリグリと捻られる。
焼けつくような痛みで全身がこわばる。
「聞け! みな! コイツは我がフィアンセを辱め、王への反逆を企てた! ……魔王と戦い心から信頼している仲間だったが……無念だ」
わざとらしく悲しみをこらえる様な顔をしているが、セクサソールの捻りを加えてくる。
なんて奴だ、どうして俺をここまで憎むのか?
好きでは無かったが良きライバルと想い実力を高め合った仲だったじゃないか?
それに、俺はあの日、宿屋にいた。
宿屋にいたんだ!
「彼は宿屋に居ただわさ!!」
群衆の中からヒゲ面のマチョな村人が飛び出してきた。
……ええっぇ、誰ぇ?
「きさまぁ、何者だ?」
ベルリの苛立ちが全身から伝わってくる。
……あ、そうか、これは俺を庇う良い人が死ぬパターンだ。
「ダメだ! 出て来なくていい! 俺は大丈夫だ! ……えーっと村人Aさん!」
「真実は一つだけだわさ!」
なんか、リアクションしづらい奴だな。
「真実は一つだけだと!? ……ふはは、分かったぞ! キサマ、魔王の残党だな! そしてアランと共謀して王を殺そうと狙っている奴だ!」
群衆や仲間たちは騒ぎ出し、王と王女を守るため衛兵が臨戦態勢にうつる。
ベルリぃ、ナイス、悪役!
「何を言っているんだベルリ!? 俺をハメたいならそうすれば良い、しかし、関係ない人を巻き込むのは」
全てを言い切らない内に、ベルリはレベル50の禁術ブルーフレイムを村人Aに放った。
「ぬおおおおおおお」
蒼い炎に包まれる村人A。
「やめろーー!」
どんな力でも消える事のない蒼い炎、青の勇者だけが使える禁術だ。
この炎で多くの魔王軍を焼き尽くしてきた。
その正しい為に使われる炎が、何の罪もない村人を焼き殺す惨状に俺は目を覆う。
「ああああああああ」
燃え盛る炎の中、叫び続ける声に耳を塞ぐ。
何故、こんな恐ろしい事になるんだ、この世界に神はいないのか!?
「ああああああああ」
……長いな。そろそろ燃え尽きるはずだけど。
「あああああああああ」
群衆がざわめき、ベルリも困惑している。
「あああああああああ」
……んー、そろそろ、ミカエルくんを呼びますか
「ああああああああ熱い!!!」
スパン!! という音と共に村人Aの服が蒼い炎と共に周囲に飛び散った。
そこにはヒゲ面マッチョなオッサンが全裸で立っていた。
「とめろーーーーーーーーーーー!!!」
世界の時が止まる。
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