63回目の異世界創造でザマァを楽しんでいたのに、マッチョな村人と天然ヒーラー娘がバグって台無しにしてくるんだが
MC sinq-c
第1話 この人を見よ
「緑の賢者アラン・ガリオンを死刑とする!」
王冠をつけ白い口髭をつけた老人が俺に宣告してきた。
「そんな! 王よ! 私は仲間たちと共に魔法バーゲストを倒し、この国を救ったのです! その私が何故、反乱など企てるというのですか!?」
「まぁ、なんて嘘つきな御方……昨日、私の貞操を奪い、この国の王になると言っていたことは誤魔化されませんことよ」
王の隣に座る妖艶(ようえん)な雰囲気をまとうグレイシャス王女がハンカチで目を押さえながらさえずる。
真っ赤なルージュがニヤリと歪んでいるのが見えた。
「バカな、私は昨日、宿屋の自室に独りで魔術書を通読しておりました! それは誰かと間違えているに決まっています!」
「ほっほほほ、それは変ですね、では、このブローチはなんでしょうか?」
「そ、それは、いつの間にか無くなっていた母の形見」
「おやまぁ、これが王女さまのお部屋にあったということは、では、では、やはり王女さまのお部屋にいらしたわけですね」
でっぷりと太ったグリージン宰相が口髭を丸めながら緑のブローチを自慢げに掲げる。
衛兵やハウスメイド、大臣たちが俺の顔を見ながらヒソヒソと話している。
――ハメられた。
「言い逃れはできんぞ! アラン・ガレオン! 我が愛娘を嬲っただけでなく王位簒奪を図るなど許せるものではない! ものども奴を捕らえよ!」
王の命により銀のフルアーマーを着こんだ衛兵に取り囲まれる。
こんな奴ら俺の合体魔法で吹き飛ばせるのも容易いが、そうしてしまえば俺の罪が確定して、王女たちの罠にまんまとかかってしまう。
衛兵に捕縛されながら、王宮の外へと連れ出される。
「アラン……オマエ、何してんだ!?」
青の勇者であるベルリ・オーゼンが端正な顔を崩しながら驚いている。
……ベルリ、奴にこの姿は見られたくなかった。
奴とは魔王を倒した仲間だが、ライバルでもある。
だが、あの日の夜に俺が自室に居たことを知っている証人でもある。
「ベルリ、聞いてく」
「ベルリさまぁ!!」
クソ王女がベルリへと駆け寄り抱きしめた。
「どうしたんだグレイ、何故泣いている!?」
……グレイ? だと? まさかそんな関係なのか。
これは最悪な。
「昨日の夜中にアランさまが……わたし……わたし」
みなまで言わない事が効果的なような顔でベルリに縋りよる。
こちらを向きながら邪悪な笑顔でまつ毛を揺らす。
王宮の外には断頭台とその周囲には群衆が押し寄せ、怪訝な表情で俺を見ている。
「アラン……キサマという奴は」
赤の戦士であるブリリア・スローンがグラマラスなボディを隠して睨んでいる。
ブリリア……あの日、焚火を囲んだ友情の思い出が崩れていくように思えた。
「……アランさま」
白の神官であるラピス・ハウンエンも心配そうに大きな瞳でこちらを伺っている。
ラピスなら、ラピスだけは信じてくれるはず。
「アラン!!」
大声を張り上げながらベルリが大股で近づいてくる。
今にも剣の柄に手が届きそうな勢いだ。
ベルリ、信じてくれ、俺は何もしてないんだ!
「ベルリ! 信じてくれおれは」
「ああ、心配するな、俺はアランを信じているぜ!」
聖剣セクサソールを抜き俺を縛っている縄を切り、衛兵を蹴散らした。
……マジかよ。
「ベルリ、俺は……えーっと、王女の部屋に行った疑惑があって、もしかしたらお前の愛する王女とチョメチョメしているかもしれないが大丈夫なのか!?」
何とかイレギュラーを本筋に戻す試みをする。
「……そうかもしれない。けど、そうじゃないかもしれない! 俺はお前の事が大嫌いだが、あの日、魔王と一緒にたたかった思いは」
「スト――――――――ッぷ!!」
世界の時間が止まる。
「何だ、何だ!? そういうキャラ設定じゃねーだろ!? ベルリはハメる側の人間にすると設定したよな!? ミカエル!」
全てが止まった世界にミカエルが12枚の羽根を羽ばたかせ降臨する。中世的な顔立ちで実際身体も両性具有の最も優秀なしもべだ。
「我が神よ。仰せの通りにしましたが想像以上に神の御慈悲が深まったせいか、ベルリは改心されたようです」
「改心すな! 改心系は32個目の異世界バルセルでの魔皇女アルファンリオで十分、満足したわ!!」
「では、どういたしますか? リセットします?」
「ばっかやろーー! ここまで数年かけて、絆を築いて、実は全員我をハメるために動いていましたっていうザマァの醍醐味ををパーにするのか? 我は極上の裏切りとそのあとのザマァをたっぷり味わいたいんだよ!!」
「……おお、我が神よ。では、青の勇者の設定を書き換えて時間を戻しますか?」
仰々しく手を広げてくる。
我が創造しておいて何だが、ウザいんだよなーミカエルは。
「そうしろ! ああ、折角、築き上げた信頼が崩れていく苦しみを味わえていたのに、台無しだよ! ベルリの設定は……あー、そうだな、昔から我を憎んでいた幼少期からの憎しみを今この瞬間すべてに出す、一番の黒幕だ」
「動機は?」
「動機とか後付けで良いんだよ!! 細かい事話されて感情にほだされるのは、12回目辺りでお腹いっぱいなの」
「では、ベルリの設定をちょいちょいと……時を戻します!」
「あー、感情入れられるかなここから」
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