第2話 生誕と旅立ち

 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 若き神は、日本の青空の上から、ポツンとある一軒家の様子を眺めていた。とても穏やかな光景だ。それを今からぶち壊そうとしている自分に負い目を感じる。だが、もうやるしかない。

 若き神は腹を決め、転送魔法を唱えた。すると川上に大きな桃が出現し、川下へ流れ出した。


「たまげたっ!? 大きな桃が流れてくるでねえかぁ!?」


 おばあさんは洗濯も忘れ、大きな桃を凝視していた。ん? あれ? もしかして……、拾わない!? それは困る!!


『ひ、拾うのです! そこの老婆よ!!』

「やや!? 頭の中で声が!? もしや神様!?」

『……、に近いような近くないような、何かです。それより、桃を拾うのです、老婆よ!』


 老婆は困惑しながらも巨大な桃を掴んだ。


「お、重い……!! あっ、きゅ、急に力が!!」


 若き神は老婆に一時的に、筋力倍化の魔法をこっそりかけた。そして老婆は巨大な桃を手に、自宅へ持ち帰った。

 芝刈りを終え戻ってきたおじいさんは、巨大な桃を見て、捨てなさいと言いだした。だが、


『老父よ……、罰があたりますよ』


 と、若き神がまた頭に直接語りかけ、なんとか事なきをえた。


 そして、桃を割るときは、若き神が最新の注意を言い聞かせながら行われ、無事に、桃汁まみれの赤子が出てきた。

 この赤子は、とある貧しい村で、実の両親に捨てられていたとのこと。台本『桃太郎』の注釈に書いてあった。

 無垢な赤子を『桃太郎』に巻き込んだことに心を痛めた若き神は、この子に『言語堪能スキル』と『武術の天才スキル』授けた。せめてもの償いだった。


 さて、老夫婦は桃から赤子が出てきて気絶しそうになったが、『この子はあなた達の我が子です。あっ、名前は桃太郎とつけてください』と優しくさとした。 

 かくして、老夫婦は「これも定めかの」と腹を決め、桃太郎との新生活が始まった。ほん来ならば、時間をかけ桃太郎の成長を老夫婦に楽しんでもらいたいが、時間は7日間と限られている。若き神は6日間限定で、桃太郎に『超早熟』の魔法をこっそりかけたのだった。


 次の日、桃太郎は1歳になっていた。


「な、なんでこんなに大きく!?」

『選ばれた子なのです。あと安心なさい、6日間だけですから。ほんと、目をつむって下さい……』


 すくすく、立派な男の子へ育ちまくる桃太郎。6日目を迎え6歳になった頃、旅たちの日を迎えた。そう、鬼退治である。

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