桃太郎一行の攻めでイッテしまった悪い鬼(人間)は愛に胸打たれ、改心したそうです。~若き神による『桃太郎』誕生の秘話~

@myosisann

第1話 台本『桃太郎』

 ここは天界。神様達が地球に暮らす人間の幸せのため、一生懸命に働いている。とある天界の一角に、東洋発展推進機構という立派な看板を掲げた建物がある。そこにある応接室で今、1人の若き神様が、偉い先輩神様に呼び出されていた。


「おとぎ話って知ってるぅ?」


 満面の笑みを浮かべた偉い先輩神様。若き神様が淡々と答える。


「とある出来事を基に、人間達が作った空想的な物語ですよね。面白いと好評で、豊かな想像力を育むのに良いと聞いております」


 西洋国発展推進機構にいる仲間から、そんな話を聞いていた。西洋で広まっている『赤ずきん』『白雪姫』などのおとぎ話は、何らかの事実を基に出来ている。その出来事は、神様が意図的に作り出したもの。それらが、人から人へ伝わる内に脚色され、人々の心を掴む『おとぎ話』へと成長するそうだ。人間とは面白い生き物である。


「東洋発展機構でもね、おとぎ話を作る事になったんだよ。君にお願いしたくてさ~」

「急に言われても……、おとぎ話の基となる出来事なんてすぐに思い浮かばないですよ」

「大丈夫! もうめんどくさいから、おとぎ話を僕が作ったんだよ、はいこれ」

「え? こ、これは……」


『桃太郎』と、表紙に書かれてある台本。手に触れると、若き神の脳内に、その内容が流れ込んでくる。思わず驚愕した。


「冒頭からとんでもないことになってますがッ!? なんですか、大きな桃(人間の赤ん坊が入るサイズ)が川から流れて来るって」

「主人公の登場はインパクトないとね」

「いやいや!? もっと、現実味のある出来事に考え直してくださ――!?」


 若き神の足元に突如、転送用の魔法陣が発現した。


「『桃太郎』よろしくねっ! 多少内容が違うくても構わないから! あっ、使用する小道具類は送ってあげるから安心して。ちなみに期限は7日間でよろ☆。行先は日本のとある上空だよ。今は春っていう季節で、桜の綺麗な花が見れるらしいよ~、羨ましいなあ。じゃ、ヨロシク♡」

「ちょ!? ひやっ!?」


 若き神の足元の魔法陣が眩い光をはなった。そして、若き神は日本のとある上空へ飛ばされた。

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