第2話

しばらくして僕が思ったのは、


「あれ?まだ落ちてる、もしかして?」ということだった。


ハリー・ポッターとかにも深い穴に落ちるシーンあったけどさ、せいぜい数十秒だったじゃん、と僕は思った。僕はその時すでに、少なくとも3分以上は落ち続けていた。


いやいや、いくらなんでも深すぎだろ、地球の真ん中にこんなとんでもなく深い穴があったら、そのうち中心のマグマみたいな層に到達して、自分は熱でどろどろに溶けてしまうんじゃないだろうか、と僕はだんだん不安になってきた。


しかし、僕は地底っていうやつには全く届く気配がなかった。というかこんなとんでもないスピードで落ちていたら下から風を感じそうなものだったが、それすらなかった。むしろ宇宙空間にただよってる、と言った方が近いかもしれない。


そうだ、これはむしろ宇宙だ。と僕は思った。さっきの穴だって穴と言うよりはむしろブラックホールだったし、ここは地底じゃなくて宇宙と言った方が近い。でも宇宙だったら周りは真空のはずだ。そういえばさっきから耳がすごいキーンとしている。僕は宇宙に連れていかれて、爆発してしまった可哀想な犬の映像を思い出した。僕もあんな風に爆発してしまうのだろうか?




そんなことを考えているうちに、僕は暗闇の中に立っていた。どすん、もなかったし、すとん、もなかった。気が付いたら立っていたのだ。懐中時計を見ながら慌てて走っているせっかちなウサギもいない。


「なんなんだよ、ここ。」と僕は自分から落ちたにも関わらず悪態をついた。


下手に動いてとんでもない目にはあいたくなかったので、僕はしばらくその場所に立っていた。段々耳が慣れてきて分かったのは、その場所の近くでゴオーという音がしているということだった。僕はゆっくりしゃがみこんで、自分が立っている場所をそっと触ってみると、そこは土のような感触がした。


「なんだ、宇宙じゃないみたいだな。」と僕はつぶやいた。


そこら辺を歩き回って分かったのは、僕がいるのは円形の広場みたいなところで、ゴオーという音がしていたのは中央に流れている川のようなものである、ということだった。


川、と書くとそれ単なる下水道じゃないの?と言われそうだが、その川は明らかに下水ではなかった。下水よりもっとずーっと汚い。下水が富士山の天然水くらいに思えるくらい汚い、と言えば伝わるだろうか。それにその水は、信じられないくらい臭かった。鼻が180度曲がってしまうのではないかと思ったくらいだ。


それに、もし下水道だったら細い道に立っているはずだが、僕がいる円形の広場はむしろ東京ドームくらいあるんじゃないかというくらい広かった。僕は念のためミスターが微笑んでいる看板を探してみたが、もちろんそんなものはなかった。


「やばいなあ、とんでもないとこに来てしまったみたいだ。」と僕は誰に言うでもなくつぶやいた。ネットでよくある異世界というやつだな、と思った。大体ああいう話の主人公たちはろくでもない目にあって、まあどう考えても幸せな結末はない。


その時、懐中電灯の光のようなものが遠くから照らされている事に僕は気が付いた。その光は2本あり、そんなに強くはないがどう考えても僕に向けて当てられているらしい。


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