第12話 人質になる

 偵察に行った村人が慌てて帰って来た。


「村長! シイド国王の兵隊が直ぐそこまで来ています。およそ千人位います、それにシイド国王もいます」


「アリエ様は城に戻って下さい。ここは私達の村の若者とアリエ様の兵隊で戦い時間を稼ぎます」


「それはいけません。私の兵隊と村人を合わせても十分の一にもなりません。私の為に負ける戦いは許しません。血を流す事も駄目です」


「では如何すれば?」


「幸いシイド王国の国王がいます。私が話をします。最悪の場合は私が人質になりましょう」


(ザク、ザク ザク)と無数の人が歩く音が聞こえて松明の火に大勢の兵士が写り出された。


満月の光りもあり明るかった。


先頭に銀色の鎧を着た、大柄の大きな顔の男が馬に乗っていた。


「私はシイド王国の国王だ。このハチトウシン村までを占領する。そしてアリエ姫を人質にして、気の弱いメシコデ王国の国王を脅し我が国に服従させる」


「話は分りました。私が人質になりましょう。その代わり此処にいる者達に危害を加えないと約束しなさい!」


「アリエ様、それはいけません」とハモンドは泣きながら反対した。


「ウワッハハハー 姫! 今の自分の状況を考えてお願いしろ!」と言われ姫のお供の兵隊が前に出た。


「止めなさい! 無駄な血を流したくありません。後に下がりなさい」兵隊達は渋々下った。


「私は醜女や醜男は大嫌いで見るのも嫌だ、だから今日、醜女や醜男を集めて明日の朝に見せしめに狩りの練習をする。丁度異国に売られて行く醜女達とヤーパン国の醜男、そしてシシイノ族の醜女姉妹がいる。狩りの状況を観覧して姫を人質として連れて帰る」


「狩りとか人の命を奪うのは止めなさい!」


「うるさい、意見が言える立場か!」と一喝されたが怯むアリエ姫では無かった。


醜女達、コジロウ殿と醜女姉妹は拘束され、姫の兵士達も武器を取られ村の牢屋に監禁された。


アリエ姫はハモンドと侍女達と宿舎に軟禁された。


「アリエ様、人質になって本当に良いのですか?」


「良いのですが、狩りは許しません!」とまた怒りが込み上げて来たようだった。


「あっ、アリエ様の口が耳まで裂けて薄い唇になっています。それに頭の毛が白くなっています! 益々美しくなりました」


アリエ姫は鏡を見て満足した。


「そうね、とうとう理想の豚毛が生えました。これが最終形態ですね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る