第11話 偽りの美女

シーラン姫が膝を付いて頭を下げると、急にコジロウ殿が舞台に登りシーラン姫の側に行き、顔に手を掛けた。


「何をするのです! コジロウ殿! 止めなさい」アリエ姫は制止した。


「アリエ様、これは作り物です」と言ってシーラン姫の顔を剥がした。


出て来た容姿に村人全員が驚いた。これ以上はあり得ない醜女だった。


九等身で髪の毛がシルバー、目が大きく瞳が赤色で鼻が高く、唇は小さく桃色をしていた。


アリエ姫は酷く驚き「貴方はシーラン姫ですか? 何故このような偽りをしたのですか?」


「はい、アリエ様、シイド王国の王様から命じられた事が発端です。私達部族はメシコデ王国とシイド王国に跨って暮らしています。ある時シイド王国の国王からメシコデ王国との国境に塀を建てると言われました。塀を建てられると親、兄弟などの親戚の行き来が出来なくなるので辞めて下さいと父がお願いに行きました」


「何故、そんな事をするのでしょうか?」


「アリエ様、それはアリエ様とクライス卿との結婚を邪魔する為です」と村長は話し、続けた。

「このハチトウシン村からシイド王国の国境まではクライス卿の領地です。シイド王国の国王はメシコデ王国を狙っております。恐らくそれで計画したのです」


「でシーラン姫、父上は何を命じられたのですか?」


「はい、クライス卿に絶世の美女を嫁がせろ、あいつはその女性の言いなりになる。それがお前の娘なら理想的だ。そうすればメシコデ王国の半分がシイド王国のものになる。あとは占領するだけだと言われました」


「貴方方姉妹ではクライス卿を射止めるのは無理でしょう?」


「はい、それで美女の被り物を作りました。クライス卿など殿方には気が付かれませんでしたが、アリエ様から会いたいと言われたとき、ばれると思い躊躇しました。でも父が話を決めてしまいました」


「シーラン様とアリエ様が此処で会う話はシイド王国の国王も知っているのですか?」と村長が焦って聞いた。


「父が話したと言いました」


「不味いです。クライス卿は兵隊を連れて国王と東の国へ行っています。シイド王国の兵隊が来てアリエ姫が拉致されるかも知れません」と村長は村人数人を西の方に偵察に行かせた。


「アリエ様、シイド王国の国王は酷い人間です。私達醜女や醜男を狩りの練習として野に放し矢で射るのです。何人も死にました」


「それは酷い話ですね。私が直接シイド王国の国王に話をしましょう」


「アリエ様、今は拉致されないように城に帰るのが宜しいかと」ハモンドが慎重な顔で諭した。


「私は帰りません。こんな理不尽は許しません!」


「あーあー 火が着いちゃった」ハモンドは諦めた。

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