第10話 シーランの踊り
夕方近くになり、舞台が村の広場に引き出され、少し暗くなり、舞台の廻りの手摺に付けた松明に火が付けられた。
太鼓と笛を持った男達十二人が舞台の廻りに座った。
村人が大勢遠巻きに見つめていた。
アリエ姫は用意された観覧席に村長、コジロウ殿と着いた。
「演奏は此処の男の方がするのですね?」
「はい、この村とシシイノ族は同じ種族で曲が同じです」
「では踊りも同じですね」
「はい、そうです」
暫くすると村人が村長に「今、到着されました」と連絡してきた。
数十人の女性のお付きを連れて馬車が舞台に横づけになった。
「ああー 白髪のあの子は凄い美人だ! あっ、違う醜女だ」と隣のコジロウ殿が叫んだ。
馬車の側に寄り添っている娘は九等身で髪の毛が白く、目が大きく瞳が紫色で鼻が高く、唇は小さく桃色をしていた。足も手も長く醜女の代表のようだった。
「あの方はシーラン姫の妹でシーナ姫です」と村長は知らせた。
「妹が醜女で姉上がこの国で一番の美女、不思議ですね。ひょっとしたらコジロウ殿の話していた娘さんの一人の様ですね」
「はい、そうです。踊りが終わったら話をしてみます」コジロウ殿は興奮しているようだった。
カラスが二羽入った籠を従者が舞台の袖に置いた。
すると「カアー カアー」とカラスが鳴き太鼓の音が鳴り始めた。
笛の音色が響き渡ると馬車の後ろが開き少女が出て来た。
その美しい姿にため息が漏れた。
三等身に近い体、大きいおむすび型の顔、鎖骨まで垂れさがった顎肉、しかも二つに割れその先に白い豚毛が生えている。
何て美しいのだろうとアリエ姫は見つめた。
舞台に上がりアリエ姫の側に来て片膝を付いて頭を下げ挨拶をした。
その時の頭頂部は禿げ散らかして白い短い毛が生えていた。間違えなく豚毛だった。
太鼓と笛の音がひと際大きくなってシーラン姫は舞台の中央に戻り踊り始めた。
両手を広げて足を軸に反回転ずつした。そのため姫の前姿と後姿を交互に見せながら舞台を一周した。
踊りが終わり激しい拍手の中、シーラン姫はアリエ姫に挨拶をするために側にきた。
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