第6話:カリスマ生徒会長と文化祭

よし、このクラスは何とかなったわね……。

あとは……2年B組のたこ焼き屋さんが大盛況すぎて、小麦粉とソースが足りないんだっけ……。

至急、緊急購入品の申請書の承認、必要金額の用意までやらないと……。

ああもう……予想外の出来事が多すぎて忙しいわね……。


あれ……あそこにいるのって……。

あ、やっぱりキミだった。偶然ね。どうしたの?

キミのクラス、クレープ屋さんだったでしょ? 店のお手伝いとかしてなくていいの?


――え、今はお客さん呼び込みのためのチラシ配りをしているって?

クラスの人達でローテーションを組んで交代で休憩を取りながら運営してるってわけなのね。みんなやる気満々ね!

後で行ってみたいと思うから、チラシ1枚くれないかしら。

……はい、ありがとう。


キミのエプロン姿、拝めるのを楽しみにしてるわね。

もちろん作ってくれるクレープの味も期待してまーす!

生徒会の見回りが一段落したらすぐに行くから、それまで期待して待っててね。

――別に期待はしてないって?

んふふ……そんなこと言って、本当は来て欲しいんでしょ?


それじゃ、また後でね。


―――――――――――――――


――――――――――


―――――


んー。

なんとか大変な仕事は全部片付けたー!!

よし、それじゃあ店にしゅっぱーつ!!


えーとあの子のクラスは……ここよね。

こんにちは。

ふふっ、約束通り来たわよ。エプロン姿のキミってば新鮮な感じがするわね。

ううん、変じゃない。似合ってて可愛いと思うし。

いやいや……バカになんてしてないから。


まあ話してばっかりもあれだから注文しようかしら。

このストロベリーチョコレートホイップクリーム一つください。


さて、キミのクレープを作る腕前をこの目でしかと見てあげようじゃない。

どれどれ。

お、生地を敷くのは上手いわね。そしてそこから丸くムラなく広げていって……。

そろそろ焼けてきたけど……おっ、裏返すの上手いじゃない!

そして……鉄板から剥がして具を乗せていくわけね…… へぇ、 なかなかバランスよく整えてるわね!


おーっ!

すごい。人気のお店で売ってるのとほとんど変わらない見た目じゃない!!。

さて、肝心の味はどうかしら~。

あむっ……。


ん~~~~~!!


ホイップクリームが舌の上で踊ってる!!

コクもありながら、甘すぎない絶妙なバランスで作られてて、スッと染み込んでいくみたいに無くなるわね!

そしてそのクリームに絡まったイチゴも、甘酸っぱさとプチプチ食感が相性抜群だわ!!


それらを包み込むクレープ生地も外はカリカリ。中はふんわり。なのに 噛めば噛むほどもちもちした食感が伝わってきて、非常に贅沢なテイストを作り出しているわ。

これを文化祭のお店で出せるなんてほんとすごいわね!

このレシピを考えた人もこのクレープを作ったキミも素晴らしいわ!!


――食べ物を評価する時だけ語彙力が高くないかって?

失礼なこと言うわねキミは。

国語の成績は良くないけど、食レポだったら得意なのよ私は。

今度また食事に行くことがあったら、披露してあげるわ。


……あーそういえば、お店が終わった後って時間あるかしら?

もしよかったら、後夜祭の花火でも一緒に見に行かない?


―――――――――――――――


――――――――――


―――――


やっほー。


ふう、お店もほとんど終わったわねー。キミのところももう営業終了でしょ。

さあ、早速花火見に行きましょうか!!

ほらほら、みんな集まってるわよ。

はぁ~。毎年恒例だけど、やっぱり良い場所はどこも生徒たちで埋まってるわねぇ。


――ん、隠れたマル秘スポットがあるって?

えっ、どこ? どこかしら?


あっ、あそこ?

植込みの隙間が丁度死角、というかデッドスペースになってるわね。

どれどれ。

おお。遮るものもないし、空を一望できる!

キミにしては、良い場所見つけたわねー! ほめてつかわすわ!

――偉そう? 残念。偉いんですー。だって生徒会長ですもの。


……お、そろそろ始まるわよ。


……わぁ。


綺麗……。

色鮮やかなお花の形……。あっ、今度は星の形してる……。

仕事柄、事前にどんな花火なのかは聞いていたけど、こうして実際に見てみるとすごい迫力よね……。

あっ、また光った……!


た~まや~!

……なんちゃって。

ね? ね? 綺麗よね! って……どうしたの?

あ、もしかして私の横顔に見惚れちゃった?

そんなことない? ふふっ、ほんとかなー?

キミの視線が花火よりも私に向いていた気がしたんだけどな~。

まぁまぁ、そうムスッとした顔しないで。


もうそろそろ終わりらしいわよ。

結構打ったと思ったのだけど、意外と短かったわね。

そうね、綺麗で私も感動しちゃった……。


さて、戻りましょうか。

この後、すぐ帰るんでしょう? それじゃ、昇降口で待ってて。


―――――――――――――――


――――――――――


―――――


お待たせ。と言ってもさっきぶりだけど。

ていうかその手に持ってるものは何?

店で余ったかき氷? しかもブルーハワイ味。え、私にくれるの?

ならいただくわね。ありがとう。


んー、シャクシャクした氷の感触と、シロップの味がたまらないわ~~!!

日が落ちたとはいえ、まだちょっと暑いからひんやりして心地いいわ。

ふふっ、よかったら君も一口食べる?

間接キスとか気にしてるんでしょ?

もう、そんなこと気にしなくていいから、はい一口どうぞ。


ね?  美味しいでしょ?

溶けて水っぽくなっちゃう前に、早く食べないと。

ほら、一口と言わずどんどん食べて。


ふふっ……頭痛くなっちゃった?

かき氷食べるとよくなっちゃうわよね。


あっ、しかもこのかき氷ブルーハワイだから、もしかしたら……。

……ふふっ、やっぱり。

スマホのカメラで見てみたけど……舌が青くなっちゃってる。


ほら見て見て――もっと近くで。

べー……。

青くなってるでしょ。さすがはブルーハワイ。

ね、キミのも見せて。


やっぱり。キミの舌も、青くなってる。


と言うかこれ、こんなに舌を近づけあってるのって、遠くから見たらまるでお互いにキスしてるみたいね。

――しかも舌と舌を絡め合う大人のキス……。


ふふっ、冗談よ。

そろそろ、帰りまし――きゃ!!


大きい羽虫……油断してたからびっくりしちゃ――


っう……ご、ごめんね。急に振り返ったりしたから。

怪我はない? そ、そう……なら良かったのだけれど、本当にごめんなさいね……。


……その、しちゃったわね……大人のキス。

ま、まあ、振り返った時にキミの舌と私の唇が当たっちゃっただけの――そう、事故! 事故だから、ノーカンよね、ノーカン!


な、なんとか言ってよ、もう……!

気まずくなっちゃうじゃない!

……わ、私は恥ずかしかったけど、でもそれと同じくらい嬉し――


あっ、また花火……!

終わったと思ってたのに……こんなにタイミングをずらして打つなんて……。

しかも真っ赤なハート型って……。


ふふっ、何というか、絶妙なタイミングよね。さっきの花火。

誰かが空気読んでるみたい。


あっ、どうやら最後の一発だったらしいわね、今の花火。

偶然とはいえ、すごいタイミングだわ……。


さて、そろそろ本当に帰りましょ。

ほら、早く早く。


来年は、私じゃなくて妹とこの景色を見れるといいわね……。

本当に……。

……キミのこと、応援してるわよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る