第10話 報酬とアウラス

 妹に友達が出来たらしい。

 ミチカと言う名前で、冒険者で主に拠点を持って魔物を狩る『ハンター』らしい。

 魔法士であり、その子の協力の元、魔力を感じれる様に成った様で、魔法も使える様に成ったらしい。


「まさか外部から魔力を流して無理矢理感知させる方法があったなんて」


 俺の数日の努力とは一体。


 そんなこんなで過ごしていたある日、貴族様から呼び出しが掛かった。

 サナ曰く複数居るらしいので、これからはウエイトレス家と呼ぶべきか。


 屋敷に着くと、ミリアが直々に案内してくれた。

 応接間なのか、それっぽい所に通された。

 机の上には色々な道具や武器が置かれていた。


「これが今回、娘達を助けてくれ、そして兵士達の遺品を持ち帰り、盗賊を討伐してくれた報酬になる。遠慮なく受け取ってくれ」


「ユウキさん。私やりましたよ!」


「お兄ちゃん、腕輪が2つある」


 指が震えて一点を指せないでいた。

 そう、亜空間収納の腕輪が2つもあったのだ。

 とてもありがたいが、良いのだろうか?

 あ、勘違いしないで欲しいが、俺は別に謙遜するつもりも遠慮するつもりも譲歩するつもりも無い。

 ありがたく受け取るよ。何も聞かないし何も言わない。

 ありがたく貰うだけだ。


「剣が6本?」


「はい。剣⋯⋯と言うよりも同盟国のホンニと言う国から来たこの国に居る鍛冶師に作らせた刀だ。魔力を流し、その量だけ効果を発揮する。右から、炎刀、水刀、雷刀、風刀、光刀、闇刀だ。能力は名前通り」


「ふむ」


 業物なのは確かだな。

 俺達が基本的に使っていた武器が剣だったから剣しか用意して居なかったのだろう。

 だが、解体用ナイフとかそこら辺は用意してくれていた。


「これは?」


 腕に着けるのかな? 先端に鈎が付いている。


「それはワイヤーフックと言ってな。使えば分かるが移動に便利な道具だよ」


「ほへ〜後は防具ですか?」


 レザー防具なのでありがたい。軍服とは違い、私服としても使える様なデザインだ。

 マントもある。後はこっちで買って揃えれば良いか。

 収納の腕輪は希少なので、見つからない様にしないといけない。

 基本使う武器は手に持っておこうか。


「なんか対って感じだし、光刀と闇刀にしようかな」


「お、お兄ちゃん珍しく二刀流にするんだ」


「ああ。そもそも俺の最初の先生は二刀流だぞ」


「そうだったね。私は風刀にしよ。他は収納で良いよね?」


「そうだな」


 遠距離武器が無いのが不安なので、武器屋で遠距離武器を揃えておこう。

 収納の腕輪2つだけで相当なモノだし、大満足だ。

 盗賊から回収した物は全部元の持ち主に返ったようだ。


「ユウキくん達はこの後はどのくらい滞在するんだね?」


「そうですね。後、3日です」


「そうか。それなら近々起こるイベントに参加して行ってはどうかな? 武器の試しにも成る」


「イベント?」


「あぁ。毎年この時期に漁業範囲の海中に魔物が集結するんだ。漁業に出る事も出来なくなる。そこで、ハンターやその他、腕に自身のある者達が魔物達を倒す。こっちは魔物が減って幸せ、倒す者は金が手に入って幸せ。そんなイベントだよ」


「サナ⋯⋯」


「うん。やろっか! あ、ウエイトレス様。実は孤児院の⋯⋯」


 それからサナが話して、俺は情報が集まる場所を聞いた。

 俺達の目標は取り敢えず足を動かす為の夢物語から、今は元陛下に会って話を聞く事になっている。

 だが、それらは結局はただの理由付けだ。ただ、生きる為の理由。

 自由に生きるのが俺達のやり方だ。


 帰り道、俺はサナに孤児院の事を聞いた。


「だいぶ馴染んだようだな」


「うん」


「⋯⋯別にここで暮らしても良いんだぞ?」


「ううん。色んな所を見て回るの、楽しそうだし、暮らさないよ。色んな景色を見て、色んな人と会って、そして皆にお土産話を聞かせて自慢してやるんだから」


「そっか」


 そして俺は裏の情報屋へと接触し、話を聞いた。

 一夜にして滅んだ国と言うのは有名らしく、すぐに手に入った。

 そして、次の目的地が決まった。

 今は明日の準備をしようかな。


 ◆


「父上、そろそろ着きます」


「そうか。分かった」


 私はアヤ・ヘブ・アウラス。

 アウラス国元王女である。

 我々の国は魔力を使った発展が無く、一ヶ月程前に対戦国に敗北した。

 それも一方的で圧倒的な負けである。

 相手国、アシロ国は新型、魔力を使った発展が大きかった。


 私は目を瞑り敗北直前の光景を思い出していた。


 王城からも見える程の大きな巨人。

 それがなんなのかは分からないが、どうせろくでもない物は確かだ。

 今まではギリギリ相手軍人を数人をこちらは数十人の犠牲で倒せるレベルの戦力差だった。

 だが、今と成っては相手はこちらに攻めて来ず一方的に攻撃するだけ。


 おかしいでは無いか。

 なんも接点の無かったこちらに、大義も何も無い宣戦布告と共に始まった戦争。

 長年の決着はあっさりとしたモノ。


「逃げるぞ。あそこのルートならバレずに逃げられる!」


「父上! まだ皆が戦っている中逃げるのですか!」


「仕方ないだろ」


「そんなのが王族としての在り方ですか! 負けたとしても、最後まで国民と共に居るのが王族としての務めでは無いんですか! いざとなったら、私がこの身全てを差し出して交渉し、国民達の命は⋯⋯」


「無駄だ」


「え」


「あいつらは我々の命なんて興味は無い。材料が欲しいだけだ。そこに王族も平民も関係無い。アウラスの血を絶やさない為にも、逃げるんだ」


「嫌です!」


「我儘を言うな!」


「私一人でも⋯⋯」


 後ろから誰かに攻撃され、私の意識は途絶えた。

 数人の兵士と使用人、そして金と武具、父上、母上、私、兄上、姉上と共にこの国を捨てた。

 でも、数日後に新聞で国が国民諸共全滅した事を知った。

 だけど、私は信じている。生き残りが居ると。


 魔力持ちが多い敵軍人にも同等に渡り合っていた軍隊が一部隊あった。一人一人が一騎当千クラスで、上官達が下の者を育成していた。だが、全員魔力持ちで他からは嫌われていた。

 今ではその部隊は無い。入っていた人達も解体してバラバラに他部隊に入ったのだ。純粋に人数不足。

 そして、その中の一名を私は良く知っている。


 幼馴染で良く遊んだ仲だった。私よりも賢く、妹思い。

 その人が生きていると、私は確証は無くとも信じている。

 そうじゃないと私に生きる希望が無くなる。

 そもそも私を基本的に世話と言うか、目に掛けてくれていたのはその部隊だ。

 戦争に行く度に数が減って行ったが。


「ユウキ君」


 また、会いたいよ。

 それが叶うかは分からない。だけど、願わないと、そう考えてないと、生きる希望が無くなるんだ。

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