第9話 サーバーアクセス
あれから数日、サナは孤児院に通いながら飯を与え子供達の強さの育成に専念した。
一方ユウキは魔法の取得に苦労していた。
「はぁ!」
サナを背後からナイフで襲うのは財布を盗もうとした子供である。
「うん。良いよ」
それをひらりと避けて足を引っ掛け転ばせる。
時間的に基礎体力等を付ける事は出来ず、取り敢えずの技術を教えていた。
「ほらほら。皆私を殺す気で来ないと、意味が無いよ〜」
そして数分戦い、休憩に入る。
今では孤児院のシスターも慣れている。最初の方は全力で止めようとしていた。
「サナ姉ちゃん。どうやって稼ぐの?」
「ん〜私はあんまり賢くないから分かんないけど、お兄ちゃんが色々と考えてたんだ〜例えば、お金を貰って戦闘相手に買って出るとかね。自分が勝てば、それが広がり、自分の腕前を確かめたり自慢したい人が寄って来て、金を落とす。他にも、子供が出来るなら、薪割りとか? 基礎体力とかが必要だけどね。大きくなったら、傭兵とかもあるし、お金が沢山稼げる様になれば、孤児院に寄付すれば、君達の後輩は助かるし恩返しも出来る」
「自信ないよ。サナ姉ちゃんに勝てないし」
「ははは! 魔力あるのと無いのでは全然違うし、仕方ないよ」
サナに水を差し出しながらシスターが質問する。
「どうしてそんなに強いんですか?」
「え? ん〜こんななりでも、元軍人だからね。戦いのやり方は教わっている。てか、私かなり弱い部類だよ」
「それにしては、近接戦闘に特化したような⋯⋯」
「鋭いね! 先生は戦闘経験者? まぁ、うちの国が古臭いせいだね」
そんな孤児院にひょっこりと顔を出す人物が居る。
とんがった帽子に大きな杖を所持している。
「あれ? ミチカちゃん!」
「お久しぶりです先生。見ていたんですが、その子は?」
「えっと、サナさんで、子供達に色々と教えてくれている人です」
「初めまして。サナです」
「自分はミチカ。ここの孤児院で育った魔法士だよ。今はハンターとして活動している」
握手をして、ミチカが目を見開く。
「君も魔法士なの? 絶対そうだよね! この魔力量、自分の数倍はあるよ? やばいちょっと酔って来た」
「分かるんですか! ちなみに魔法使えません!」
「うん。分かるよ。⋯⋯魔法使えないってのは無いよ。確かに魔法を使うには最低限の魔力量が必要だけど、君なら数人がかりで行う儀式魔法を一人で行える程だよ? まぁ確かに、魔法を使わずに身体能力強化に回す人や、魔力を純粋に操って技として使う人もいるけど、そうなの?」
「え、いや。その⋯⋯自分では魔力を認識出来なくて」
「あぁ、そのラインか。なんでも聞いて。君の成長が楽しみだ」
「じ、じゃあ!」
サナは自分に魔法を放って欲しいと言った。
ポカンとする子供達やシスター、ミチカも例外に漏れてない。
何故かと問われ、サナは満面の笑みで答える。
「切ってみたい!」
背中に隠していたショートソードを二本抜き取り、構える。
「うーんいまいち分からないけど分かった。じゃあ、地属性の魔法にするね。⋯⋯応答せよ! 地の塊と成りて、敵を撃て! ロックブラスト!」
複数の土の塊、それは小さな岩の様に成っていた。
それが六つ、出現してサナに向かって突き進む。
ミチカはもちろん手加減していたが、その心配は無用だった。
「六個でこの速度なら、シュウ兵長の矢よりも、怖くないな!」
一つ、息を短く吐いて刃を振るう。
その斬撃の速度は六つの閃光を生み出し目視出来る程で、魔法を容易く切断した。
切断された魔法は粒子と成って空に舞う。
「⋯⋯嘘」
『サナ姉ちゃんすげぇ!』
ミチカからは驚愕され、子供達からは尊敬された。
「君達も、これからしっかり訓練し学べば余裕でこなせるよ。私なんかこれでも下っ端だしね」
苦笑とも呼べる笑みを浮かべて、子供達に言う。
「この国には義務教育は無い。その代わり、自由に学べる。良く勉学に励み訓練しなさいよ。基礎訓練も忘れずに、だ」
それから訓練は再開され、ミチカも見る事にした。
現状を聞いたミチカは金を孤児院に寄付したが、シスターがとても申し訳なさそうにしていたが、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
◆
魔法、俺はそれに付いて深く考えていた。
理解出来ないのだ。
魔力持ちは魔力無しと体の構造が違い、内蔵に魔力を貯める場所が存在する。
そして、魔力を流す神経等が存在するのだ。
まずは魔力が溜まっている魔臓を意識する。
その後、全身に魔力を流せる様に成れば、身体能力強化を自由に行える様になる。
魔力を集中させれば人外の力が出せるらしい。
その後、外に魔力を流して操り扱う事を魔技と言う。
ぶっちゃけ、習った気功等の武術と似ている。
そして、自分の魔力の属性などを完璧に把握すると、詠唱が自然と浮かんで来る。
それを呟く事により、魔法を扱える。
魔力との対話と言うらしい。
つまり、詠唱は人それぞれ個人差があり、千差万別。被りもあるようだけど。
儀式魔法等の数人で扱う魔法の場合は専用の道具を用いて、専用の詠唱を唱える事で使用出来るらしい。
長々と説明したが、一番重要なのは魔臓を認識する事だ。
それがとても難しく、色んな本を呼んでも理解出来ない。
俺達の国が新型に手を出さなかったのはここら辺の影響もあるかもしれない。
ま、それは王族のみ知る事だ。
「ん〜サナに教えるって言ったのに、全く自分で行えん」
深く深呼吸して、意識の深い所に潜り込む。
気功の方に意識が行ってしまうので、余計に難しい。
まさかここで先輩達の教えが邪魔に成るとは思わなかった。
「ぬ! キタキタ!」
体の中で不可思議な気配を確認出来た。
どす黒く、ネバネバとしたその何かを俺は体の中に流すイメージをする。
神経を自覚出来るような感覚に苛まれる。
ゆっくりと体の外に魔力を出す。
むむむ、何やら文字が。
これを呟けば良いんだよな。
「サーバーアクセス」
刹那、頭の中に色々な情報が巡りに巡った。
俺はそれを一つ一つ理解しながら、一つ、使ってみる。
「サーバーアクセス、ジェットパック」
魔法の訓練が出来る場所に移動し、発動する。
背中に魔力が集中し、真っ直ぐとした翼の様な物が広がる。
丸い筒の様な物が二つその上に出来る。
「ゴウ」
ブーーっと魔力を炎に変えて噴射し、どんどん上昇して行く。
「わああああああああ!」
それは操作出来ず、ただ上に行ってしまい、キャンセルを意識したら、消えた。
「え、ちょっと、待ったあああああああ!」
俺はそのまま落下した。
空気抵抗を全身で感じながら、焦りながらも必死に思考を回転させて着地方法を考える。
「魔力を足に集中させれば⋯⋯」
ある程度の衝撃を耐えてくれる筈!
地面に激しく衝突し、振動音を鳴らし、土煙を発生される。
全身に響き渡る衝撃に悶えながらも、魔法に成功した喜びに浸る。
ただ、周りの目が痛かったので、宿に戻ったが。
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