第8話 お節介サナ

 商業ギルドで身分証証明書を発行し、身分カードを手にする。冒険者ギルドで冒険者登録し、身分カードに証を付ける。

 冒険者の強さは星の色で決まる。下から『白色、灰色、緑色、青色、赤色、黒色』である。

 これで魔物の死骸などの買取を冒険者ギルドで行ってくれるし、ギルドの依頼を受けてこなせば金等の報酬が貰える。


 次に街をブラブラ散策する。


「お兄ちゃん、鮎の塩焼きだって。何あれ、魚を棒で串刺しにしてるよ」


「うちにも似た様な物あったろ。食うか?」


「うん!」


 貰った金で2本購入してサナに1本渡す。

 口でパクリと肉を齧りながら散歩を再開する。今は海に向かって進んでいる。


「辛っ!」


「しっぽの方は苦味が強いから、塩を大量に付けて居るんだろうな。食べれんなら俺が食べるよ」


「いや。自分が食べる物は責任を持つ!」


「良い子だな」


 そして、進んでいると露店のおじさんに話し掛けられる。


「そこの人! 見掛けない顔だね。寄って行ってくれ!」


 そう言われたので、サナとアイコンタクトを取り、向かう。

 内容は色々だった。


「この半透明の容器はなんですか?」


「ペットボトルだ。ここじゃ珍しくねぇが、外のモンはやっぱり珍しいか!」


「そうですね。しかも、色とりどりの水」


「ジュースって奴だな」


 そして、俺は丸っこい何かを持つ。

 丸っこいってよりも球体の青色の玉を手に持っておじさんに向ける。


「これはなんですか?」


「水球ってので、10リットルの一種類の液体を貯蔵出来る」


「「この小さいので!」」


 凄い新型⋯⋯魔道具だな。新型では無く魔道具で慣れておこないと。

 ボロが出たら大変だ。


「魔力をあんまり必要のしない魔道具だな。ま、全部含めて魔道具だがな。定期的に魔力をそこに込めるだけで良いから、使う度に魔力は要らない。買ってくかい? 金額3枚と高額だぞ」


「確かに。その量の水を入れられて、このサイズなら妥当の値段ですね。二個ください。あと、魔法の勉強をしたいんですが、おすすめの場所ってありますか?」


「そう言うのは商業ギルドで聞くと良いぞ。あそこには沢山の情報が集まるからな。街の中で一番大きい図書館は東側の方だな。魔法のみで考えるなら、南の方のある図書館が良いかもな。あそこは魔法士が良く集まるから。ほれ、水球。直せんから大切に扱えよ」


「ありがとうございます。大切に使います。サナ行こ」


「うん」


 海は今、近づいてはダメらしい。俺達が図書館に行くと、建物の右側にある広い庭? で魔法の訓練をしている人達が居た。

 様々な魔法が飛び交う中、あの盗賊の魔法はかなり上達したモノだと感じた。

 大量の本の中で魔法の基礎を見つけたので、それを読み漁る。


「サナ、読んでてもつまらんだろ。遊んで来て良いぞ。夜には戻って来い。後で情報共有する」


「ほんと! ありがとうお兄ちゃん大好き!」


「はいはい」


 ◆


「ほんと、広いなー。海の向こう側ってどうなってるんだろ?」


 途中で露店の料理が気になり、それを購入する為に並ぶ。


「えーと、コレください」


 財布は腰に吊るしてある。サナの背後を通り過ぎる子供が居る。


「小僧、それ以上手を伸ばすなら容赦はしないよ」


「ッ!」


 逃げ出し、何処かに向かう小汚い子供。


「すまないねぇ。あれは孤児院のガキだ。生きる為とはいえ、流石になぁ。止めてくれてありがとよ」


「いえいえ。孤児院って国から金が出るモノじゃないんですか?」


「さぁね。俺らはそう聞いているが」


「そうですか⋯⋯」


 サナは串焼きを数十本購入して、先程子供が通った路地裏を通る。


(孤児院の場所は⋯⋯こっちだっけ?)


 地図を一度見てある程度覚えており、場所を予測して片っ端から確認する。

 そして、孤児院を発見した。

 ボロボロで、穴も空いている壁もあった。

 それ程までにボロボロで、廃墟のような姿だった。

 しかし、土地は広いようで、庭では子供達がゆったりと座っていた。

 ただ呆然として、小汚い布の服を着込んで居る。

 動かないのは成る可くエネルギーを諸費しない様にしている様に見える。


(ウチの国では、ああでは無かったな)


 戦争を繰り返し、輸出も輸入も中々出来ず、国内生産で賄っていた。

 金では無く、ブツブツ交換に近かった。

 家庭一つに決まった量の食料が配布される。

 孤児院にも決まった量が配布される。

 その様にして、ギリギリを保っていたのだ。


(ああ言うの見るの、悲しいな)


 孤児院に近づき、そして自分の財布を盗もうとした子供を発見する。

 子供もサナの姿を見つけ、「うげっ」とした反応を示した。

 嫌な笑みを浮かべたサナは叫ぶ。


「やぁ。さっきは私の財布を盗めずに残念だったね」


「ちょ」


「ちょっと、それどう言う事ですか!」


 若いシスター服を着た女性が出て来た。


「そのままの意味です。あ、串焼き沢山買ったんで、子供含めて皆で食べませんか?」


 そして、中に案内されて食事を開始する。

 子供達のキラキラした目を見て、サナは優しい笑みを零す。


「あんたも食べな。別に盗まれた訳じゃないし。そもそもあんたみたいなガキに盗まれたら自分で首を切るレベルの恥だわ」


 そして、サナは周りを見渡し、ガツガツ食べる子供、そして子供と同じレベルでやせ細ったシスターの先生を見る。


「貴女一人ですか?」


「ええ。他の人は働いております」


「国から金は出ないんですか?」


「えっと。本来は⋯⋯じゃなくて。出てます。ただ、ただ⋯⋯」


「出て無いんですね。まぁ、だからと言って出来る事無いんですが」


「全部貴族のせいだ!」


「ちょ、止めなさい!」


「へぇ。小僧、言いな」


「小僧じゃない! 援助金を貴族が横領してんだ! 豚貴族のオーグナーが!」


財布を盗みそうに成った子供が激しい怒りを露わにする。反対に悔しさを表す様に目元には涙が溜まる。


「ふーん。貴族っていくつもあるんだ」


「オーグナーの当主が変わったから⋯⋯」


 その子供⋯⋯子供達の目は悔しそうで、そして辛くて、何も出来ない自分に苦しんでいる様な目だった。

 サナはその目を良く知っている。自分の友であり、自分の同僚であり、そして自分である。同じ目なのだ。

 ただ無力で何も出来ないと言う絶望の感情。

 サナは考える。自分が会った貴族は優しい人だった。

 だが、そうでない貴族も居る。

 自分の国では一丸となっていたが、他国ではそうはいかない。


「小僧」


「小僧じゃない」


「金、稼ぎたくないか?」


「⋯⋯出来るのか!」


「ちょ、サナ様?!」


「私が教えれるのは⋯⋯対人戦だけだ。魔力持ちは居る?」


「三人」


「良し、魔力無しでも良い。強くなりたいなら外に出な! 生き残るには強さが必要だからな」


 サナは自分の生き残る術を教える事にした。

 シスターの停止も聞かず、サナは子供を連れて外に出る。


「一体、何が⋯⋯」


 呆然とするシスター。伸ばしている手は誰も取ってくれない。

 しかし、子供達はやる気だった。今までお世話に成った人達に恩返しが出来ると考えたからだ。


「さあ訓練開始だ!」

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