第3話 盗賊のボス戦
電気の斬撃を横にスライドステップして素早く、そして大きく避ける。
背後から接近して来た敵に向かって脇から剣を通してぶっ刺し、ライフルを向けて放つ。
殺気を感じ取り、相手の攻撃を避けながら、ボスに集中する。
「こいつ、ボス以外は数に入れてないのか、舐めやがって!」
斧が振るい上げられるが、それに合わせる様にバク転し、着地と同時に首に剣を突き刺す。
断末魔すら無く、絶命させる。
「とっ」
電気が流れる剣に一度でも斬られた終わりだ。
剣によって裂かれた傷から体全体に電流が流れ、体が痺れて更に攻撃を受ける。
さらには痛みも増す。
そして、剣で受けるのも正直ダメだ。
新型の武器を持った相手と戦った人を見た事はあるが、俺自身は戦った事が無い。
まだ未知数なのだ。
連携が成って無いので、各々叫び声で自分の動きを把握させる為、それを聞き躱す事が容易に可能。
今のうちに盗賊の下っ端を殺るか。
しかし、なんの勘なのか、視界からボスが消える事は無かった。
何かを感じる。ボスからあの新型兵器と同じ気配を。
圧倒的な力での殺戮をする気配を。
「火の精霊よ、我が願いを聞き入れ、敵を紅き炎の球で、燃やし尽くせ!」
ボスの手から火の球体が出現し、それが回転して、運動エネルギーをチャージしている様に動く。
そして、それが放たれた。
紅の閃光を伸ばし迫り来る熱と圧。
「ッ!」
もしも、もしも俺が魔力無しだったら、ボスとは堂々と戦えてないし、そして他国と戦う軍人じゃ無かったら、今の攻撃は躱せなかった。
高く跳んで避け、ライフルをボスに構える。
「お前は危険すぎる」
「無の精霊よ、我が願いを聞き入れ、我が跳躍力を強化せよ!」
「なっ!」
一瞬で同じ高さまで接近し、そして電気を纏う剣を振り下ろして来る。
剣を大振りで、それでいてボスの剣に当たらない様に振るう。
それに寄って生み出された遠心力に寄って体を捻り、縦の雷撃の一閃を避ける。
そのまま互いに距離を取って着地する。
「魔法を使ってようやく行ける高さまで跳ぶとか、どんな体してんだ!」
「魔法ってなんだ!」
魔法って何だよ! 新型の武器の新しい名称か?
それにしては武器を使った雰囲気は無いが⋯⋯。
「はぁ? なんで魔力保有者の癖に知らな⋯⋯魔力保有者で旧式の武具、そしてその軍服、そうか。お前はあそこの国の兵か」
「⋯⋯」
「割と世界を騒がしてるぜ? たった一つの魔力駆動巨大兵器に寄って軍は全滅、残りの人々は命乞いした挙句に殺され、完全に壊滅したってな!」
「⋯⋯ッ!」
「あれは戦争なんかじゃない。お前の国が負けた、そして勝った国が、力を示す為のただの前座だったんだ。可哀想だよなぁ。何回も戦争をしている風に見せて、実はただの兵器の実験に使っていたんだから。そして最後は全滅だってな。魔力保有者だろうが、子供老人問わず、殺し尽くした⋯⋯有名だぜ? 国家間でも問題に成ってるからな。俺らの様な蛮族でも噂を聞き付けれる程にな」
「黙れ⋯⋯」
「哀れだよなぁ! 国の為、勝てる戦いだと、皆で励まし合い高め合ったのに、たった一つの兵器で、一瞬で全滅だ! ま、その慢心に寄って生き残りが出たらしいが。これは、いい情報だと思わないか?」
「⋯⋯黙れ」
「なぁ。お前もどうせ行き場を失った敗戦国の駒なんだろ? 俺達の仲間に成れ。魔力を持ちながらもその使い方すら知らないのに、あの身体能力はそれだけ魔力量が多く、親和性の高い証明。歓迎するぜ! 俺達の仲間に成れば、毎日退屈しない! 美女も抱ける! 同棲愛者なら男を攫えば良い! 良い提案だろ」
「⋯⋯遺言はそれだけか?」
「はぁ?」
「別に訂正は求めないよ。実際にそうなんだし」
不意を付いて攻撃しようとして来た盗賊の攻撃を小さい動きで避け、足を引っ掛けて転ばし、心臓に剣を突き刺す。
「実験? 力を示す為に、俺らはただ無惨に殺されたって?」
「ああ。力を示すのには十分だろ。国一つ完璧に潰したんだからな」
「俺らが国を守る駒?」
「ああ!」
「違う! 俺達は駒じゃない軍人だ! 国を守り民を守る、それが俺らだ! 自分の命を落としてでも、守るモノがある。それが俺らだ! 決して駒なんかじゃない!」
「それを守れなかったんだろ!」
あぁ反論出来ない真実だよ。
俺達は何一つ守れず、国は崩壊し国民は殺された。
麻痺した感情でもその結果はあまりにも悲惨で一日中泣き叫んださ!
サナなんて数日は悪夢に魘される日が続いた!
「だからと言って、それでお前らの仲間になる理由には成らない」
「成るね。帰る場所も、頼れる人もいない。魔物を狩って金を稼ぐにも限界があるし制限がある。だが、俺達は自由だ! なんでも手に出来る! お前にとっても悪くねぇ話の筈だ」
「そうかもな」
「だろ?」
「さっき、お前もって言ったよな?」
「ああ。俺らの場合は、国に切られて追放された身だがな」
「軍人としての誇りを失ったお前達と、俺達は違う」
「は?」
「俺達は誇りを失った覚えは無い!」
俺はライフルを空に向かって投げた。
◆
ユウキと盗賊のボスが戦っている最中、大きな檻に入れられた女性数人と、小さな檻に入った気品溢れる女性一人が居た。
そして盗賊四人だ。
「遊んで良いって言われたけど⋯⋯」
「やっぱまずはボスが楽しまないとな」
「うちらは取り敢えず、ここら辺の警戒だな」
「だな」
信頼が厚いボスの一面を感じながらも、やっている事は人の道を外れている。
サナは曲がった事が嫌いだ。
剣に手を掛ける。
(魔力持ちの可能性もある。最初の不意打ちで一人は持って行く)
数人の人達はメイド服を来ており、主である離れた女性を心配そうに見ていた。
その主はただどうなるのか、絶望し、涙すら出ない程に焦っていた。
「今!」
自分の場所から皆の視界が外れた僅かな一瞬を突いて駆け出す。
離れた場所で戦っているユウキのライフルの音が響く。
それに驚くサナ以外の人達。
「たまたまだろうけど、ナイスタイミング!」
「な、貴様だ⋯⋯」
「まずは一人⋯⋯」
一瞬で抜刀し首を落とし、血を落とす。
地面に一文字を血が描く。
再び剣を収納し、構えを取る。
「残り三人」
「誰だお前!」
「その格好、もう追い付いて来たのか!」
「そんな訳あるか! 速すぎるし、何よりも一人なのがおかしい。見た目的に軍人か」
「そうだよ」
サナは目で全員の動きを一つ一つ警戒する。
そして、駆ける。
「速っ!」
「⋯⋯? あんたら、魔力無しか」
抜刀と同時に切り裂き、足のスナップを利用して向きを変えてナイフを懐から取り出し一人の頭を突き刺す。
「う、うわあああ!」
最後の一人が戦斧を振り下ろすが、受け流しバランスを崩したところで首を落とす。
「戦いに焦りは判断を狂わせる。討伐完了。こう言うのは私達の役目じゃないけど。大丈夫ですか?」
檻の鍵を破壊した後に、ユウキの元へと向かった。
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