第25話
イタチのアパートの中は、どこにでもある家具以外に部屋の真ん中にあるテーブルの上に固定電話がポツンと置いてあった。
長曾我部はアパートを見回していたが、
「そこに座れ!」
イタチは、紫色の座布団を指差し、長曾我部は座布団に座った。
「あのー、一体…」
「静かに!」
イタチは長曾我部にそう注意し、本棚から1枚の紙を取り出し、紙と固定電話を交互に見ながら数字のボタンを押していった。そして、受話器を取って5分後、
「森永様のお宅でお間違いないでしょうか?私、ヤマナカ電機の佐藤と申します〜」
急に猫撫で声のような声を出しているイタチに長曾我部は驚きを隠せなかった。
「実は、森永様のキャッシュカードで買い物をした犯人がいまして…はい、そのためには、キャッシュカードの変更手続きをしなければいけなくなります。それは後程、銀行協会から手続きについてお電話でご案内致しますので。…はい、新しいキャッシュカードを作るので、自宅にお伺いしたいため、手続きのための暗証番号を教えていただけないでしょうか?…えー少々お待ちください。2022ですね。…では、私は別件で行けないため、代わりの者が参りますので、何卒よろしくお願い致します。…失礼します」
イタチはそういうと電話を切った。
長曾我部は先程の電話で『代わりの者』という部分が気になってしょうがなかった。長曾我部の気持ちを察したイタチは
「というわけで、お前えっと…」
「長曾我部寛です」
「寛、ここから歩いて10分のところの家だ!行け!しくじるな」
イタチは念を押した。
長曾我部は言われた通り歩いて10分の一軒家に着き、そこでキャッシュカードを受け取ると急いでアパートに戻り、イタチに渡すと
「お前意外とやるな…」
「いやいや」
「謙遜するな。けど…」
「けど?」
「寛は顔が男前だから結婚詐欺をしたほうがいい」
イタチからあっさり言われ
「結婚詐欺ですか?自分はまだ16だし…」
「そのために鍛える。そして、23になったら結婚詐欺を本格的にやるといい。勿論、坂東のところと行き来していいんだぞ」
「わかりました。頑張ります」
それから長曾我部は結婚詐欺の腕を磨き、23歳の春本格的に結婚詐欺をする事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます