第九話 見透かされる未来
「コレハ珍シイ。スライム系統ノ中デモ希少種ノ『ヒューマスライム』ヲ使役シテイルトハ。ソレニ見タ事ノナイ狼ノ魔物モ連レテイルヨウダシ。少シハ面白イ戦イガ出来ソウダ」
これは厄介だな……。
舐め腐る訳でもなく、警戒し隙のない構え。
それに加えてあの分厚い大剣。
例えスランマの
スライムの特性『再生』を引き継がせていなかったら飛び込んだ所で死んでいた、スキン先生は。
今使役出来る
──連携でどうなるか分からないが、試してみるしかないな。
「(オルロ、牽制で『
「──ウォン!(──あい!)」
オルロは指示に従い闇魔術中で下級魔術の『
「(スランマ(一)、オルロの『
影が蠢きだし、それはやがて切っ先の鋭い影の槍がジェネラルに向かい。
その後をスランマ(一)(二)が追い掛ける。
襲いくる影の槍を躱わし、腕で弾き逸らし、時には大剣を振るって叩き弾き。
ジェネラルはロストに向かって走って行く。
「魔物ヤ
「確かにアミやカイン、同級生に比べたら弱いだろうな。だけど、他の魔術をそっちのけで生体魔術を学んできた。生体魔術には自信があるぜ!」
腕をジェネラルに向けて伸ばすと『
そこにすかさずスランマ(一)が飛び込み身体を網状にし、大剣に纏わり付く。
間髪入れずにスランマ(ニ)が大剣を握る手首に掌底を入れ、手から大剣を離れさせた。
「ホウ……、私ノ得物ヲ奪ウカ。ダガソノ程度デ倒セルト思ウナヨ?」
この連携が何度も通用するとは思ってない。
攻撃の手数で押せば正面からでも『千里眼』の未来視にも勝る、という事は分かった。
発動条件は分からないが、それだけでも儲けものというものだ。
ジェネラルは『
ただ一直線に変わらずロストに向かう。
あくまでも術者であるロストを倒す事だけを考えている様子。
近ずかれない様に下級魔術『
「──くそっ!!」
難なく全てを交わしきったジェネラルはロストに接近。
貫手を打とうと、腕を引き。
「──やらせるかよ!」
胸元の中心を穿とうと解き放たれた貫手が届く前に、左肩を殴られたジェネラルはバランスを右側に崩し、倒れながらも受身をとり立ち上がる。
「カイン! 助かった」
「貸し一だからな」
咄嗟の判断ではあるが、ロストを助ける為に地魔術の中で中級魔術『
「思ったんだが、こいつは視界にあるものの未来視しか出来ないんじゃないか?」
「どうしてそう思うだよ」
「よく考えてみろ! スキン先生の拳、オルロの『
「確かにそうだな。だけど、攻撃の手数と奇襲でどうにかなるか?」
「はは、無理だな。こいつは強過ぎる」
「どうするつもりよ、二人とも!」
「今動けるのは俺達下位魔術師だけ。俺達を助ける為に限界まで魔力を使ったスキン先生は今は戦えない」
「アミ、俺様達は置いてスキン先生と逃げとけ」
「でも、置いてく訳には」
「俺達三人がここに居てもしょうがないだろ。スキン先生を安全な場所に移して、上位魔術師達に知らせてくれ」
「──わ、分かった!!」
アミは魔力の使い過ぎで疲労し、気を失ってしまっているスキンを担ぎ王室の間を後にした。
「これからどうするよ、ロスト」
「やれる事をやるしかないだろ」
「俺が使える魔術はもう少ないぞ? 今俺が使える一番強い戦闘魔術『
「あと何発魔術を使えそうだ?」
「中級魔術なら一発、下級魔術なら二、三発だろうな」
あの分厚い大剣無しでも戦える身体能力。
全てとも言える攻撃を交わせる動体視力と視界に捉えた者を見透かす『千里眼』。
今もなをスランマ(一)(二)とオルロの足止めをする三体を相手にも怯む様子もなく。
寧ろ圧倒するジェネラル。
攻略の鍵となるのは奇襲と手数が今行える中で、最も有効だという事だけは分かった。
「(オルロ! こっちに来てくれ)」
「──ウォン!(わかった)」
オルロはロストの呼び掛けに応じ、傍まで飛び退けてくる。
「ウォン(あいつ強すぎるよ! 大きな剣も取り返されちゃったし)」
「(あぁ、分かってる。『
「ウォンウォン(うん! やってみるよ)」
指示を聞くと自身に『
近づくと自身の影を伸ばし至る方向から『
視界外からの攻撃も自身の動体視力のみで壊わしたりするが、時折掠ったりし。
それを見ていたスランマは直ぐに察し、正面と後方でスランマ(一)とスランマ(二)でジェネラルを挟む。
これならいけるかもしれない!
そう思った矢先だった。
「中々ニ良イ連携ヲトル。ダガソレダケノコト」
徐に自身の兜を掴み取ると、天高く放り投げ。
空中に舞う中で辺り一面を『千里眼』により全てを強力な未来視をした。
その時驚いた様な素振りを軽く見せるかのようなジェネラル。
「──コレデ終ワリダ」
ホムンクルス 紙巻 吸煙 @XrulerX28
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