第五話 スライム駆除

 ロスト、カイン、アミの一同は無事に魔術鞄マジックバックを探し。

 ウエストバック程の大ききさをした革製の魔術鞄マジックバックを腰に付け、最初に集まった場所に戻ってきていた。

「皆、見事であるぞ! 吾輩の阻止をものともせず、見つけ出すとは」

「えーっと、気になってたんですけど、何で頭とかから血流してたんですか?」

「それは吾輩が一生の不覚。ロスト殿との戦闘で岩やら棍棒で殴られ、挙句に超音波で負傷した証」

「流石に俺様も引くぞ? 」

「──やりすぎだと思う」

「ちょっ、待ってくれよ! 俺は必死に戦っただけだ。俺だって、それに、オーグも一発ずつ殴られて相当やばかったんだぞ? そ、それにスキン先生だって避けようと思えば避けられただろ!」

 あの時に使用した魔術『爆血オーバーヒート』をまじかで見たから分かる。

 それに基本魔術『身体強化ブースト』だけでも凄まじかったんだ。

 俺の『魔力障壁ボルグ』くらいじゃ、あそこまでの殴る威力、速度が落ちるとは思えない。

 それに、魔術に頼らなくても蜘蛛の糸くらい解くなり、破けただろ。

 と、解せない様子のロスト。

「若人の諸君、落ち着くである! ロスト殿とその合成魔物キメラのコンビネーションは見事。その結果がこれであっただけである」

「スキン先生が言うなら」

「そうだぜ! 俺達が凄かっただけ」

「先生に褒められたからって直ぐに調子にのるんじゃないよ!」

 アミはロストの頭目掛けてゲンコツをした。

「吾輩からのミッションはこれで終わりである! 昼食の後、午後はFランククエスト『スライムの駆除』に向かうでありますぞ」

 スキンは自身の魔術鞄の中から三つの弁当を取り出し、三人に配った。

 ──三人は腰を下ろすと弁当の蓋を開け。

「マジかよこれ……」

「なんかスキン先生らしいわね」

「嫌いではないけど、なんだかな」

 鶏胸肉を茹でたものにゆで卵一つ、アスパラガスとブロッコリーが数本ずつ。

 アスリートかよ、と言わんばかりの献立に唖然と弁当を見やる事しか出来ずにいた。

「運動の後はタンパク質の補給に限るである!! 脂質を抑え、糖質も必要最低限。若人諸君は筋肉が足りないでありますからな。特にカイン殿は戦闘スタイル的にも筋肉も必要不可欠。沢山運動して食べるであるぞ!」

 カインの肩をバシバシ叩きなが言った。


 青空の下、沼近くの芝の上でズルズルと引きずる様に動くものや、ピョンピョン跳ねて動くジェリー状の魔物『スライム』。

 異常発生してしまったスライムの駆除をしに来ていたスキン班の一同。

「スライムは弱い魔物として有名。であるが、それは我々が魔術を扱えるからである! 斬撃、打撃が効かないゆえ、心して駆除をするである」

 そんな事を言いながらスキンの近くを蠢いていたスライムに向け、『身体強化ブースト』とそれを改良した『筋肉増強マッスルブースト』を自身に施し。

 二回り程太くでかくなった肉体から放たれる拳の拳圧のみで駆除をしていく。

「相変わらずだな。 常識を己の肉体で覆していく様は。──おい、ロスト! 俺様と勝負だ。どちらが多くのスライムを、って聞け!!」

 次々と拳を振るってスライムを撃破していくスキンを他所に、ロストに勝負を挑もうとするも、ロストの耳には届かず。

 目を輝かせ、スライムに魅入っていた。

「スライムかぁ……、次はコイツをベースに合成魔物キメラを。なぁ、スキン先生! 何匹か捕獲テイムしていいか?」

「──む? 別に構わんが、一体何を?」

「スキン先生と戦っていて思ったんだ、魔術にも物理系統があるだろ? それを無効に出来るような合成魔物キメラが出来たら面白いと思って」

「ほほう。 それはなかなか面白いであるな! 是非とも吾輩のサンドバッグに」

「死んじゃうよ! スキン先生の打撃に耐えられるような合成魔物キメラを作れたら一番だけど、まだまだそれは先になるな」

「そうか……。それは残念であるな」

「まーた、おかしな合成魔物キメラでも作るの? 」

「なんだよ、アミ。おかしい、って事はないだろ」

「えぇ、だって見た目がグロテスクだったりさぁ、オーグみたいに」

「それはアミが蜘蛛嫌いなだけだろ?」

「ま、そうなんだけど。たまには可愛いのとか作ったら?」

 と、話しながらアミは正確にスライムを捉え、下級魔術『火球ファイアーボール』で次々と倒す。

 可愛い合成魔物ねぇ……、そうだ! あいつがまだ居たな。

 あいつとスライムを掛け合わせてちょっと試してみるか。

 考え通りに作れたら中々面白可愛い合成魔物キメラが出来る気がする。

 数体のスライムを捕獲テイムすると、異次元空間が拡がっている為、魔術鞄マジックバックに入れられる物なら幾らでも入る事を利用し、どんどん詰め込んでいく。

 捕獲量に満足すると、ロストも加勢。

 召喚サモンで『オルロ』出現させると、『影槍シャドウスピア』で多数同時に影の槍で、外からも丸見えなスライムの体内にある魔物石コアを貫き破壊。

 次々にスライムを撃退していく。

 その頃ロストに挑戦するも無視され放置されていたカインは、やけになりながら下級魔術『岩石弾ロックブラスト』で一掃していた。


「若人諸君! ご苦労である。今日はこれにて解散。各々休むなりして体力の回復に勤しむと良いである。吾輩はこれから筋力トレーニングがあるからして」

 足早に去っていくスキンを見送り。

「俺様も早く帰らないと。弟、妹達が待ってるからな」

「大変ね、弟妹が多いと」

「もう慣れたけどな、随分と長く俺一人で世話してるし。それに何だかんだでしっかりしてるしよ」

「──そ。あんたもカイン見習ってしっかりしなさいよ!」

「なんで、俺に言うんだよ! 確かにすげぇとは思うけどよ、魔術師として活動した後は家事育児もこなしてるのは。──って、俺も早く帰らねぇーと! 今日捕獲テイムしたこいつらで新たな合成魔物キメラを製造しないと」

 二人に「じゃーなぁー!!」とだけ言い残し、走って帰った。

「あいつは本当に魔物の事しか頭にないんだな」

「まぁ、ロストはロストなりに色々考えてるみたいよ」

「アカデミーに入って間もない頃は物静かで暗いやつだったのに」

「そんな事言ったらカインだってピリピリずっとしてたじゃない」

「ま、まぁあの頃は魔術師になって弟と妹にもっと良い暮らしさせてやろう、って気が立ってたからな」

と、恥ずかしそうに言うカイン。

「二人とも凄いわね、夢や目的があって」

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