第三話 チームアップ
アカデミーを見事合格した若者達。
皆一同がコンクリート作りの室内に集められ、待っていた。
何が始まるのかとソワソワする人達もいれば、落ち着きを見せている者達。
今日は下位魔術師となった事で、『チームアップ』が行われる日。
手紙に書いてあった通りに皆が集まって居る中、一人ロストの姿だけが見えなかった。
「何やってるのよ、ロストは」
「遅刻するぅ!! ──セーフ!」
遅れて室内に入ってきたロストを一同が見る。
「何やってるのよ。どうせまた遅くまで研究してたんでしょ? ほんと、魔物が好きね」
「よう、ロスト。魔物好きとは相変わらず変わった奴だな。あんな雑魚共は俺様に倒される運命なんだよ」
ロストの眼前に現れた後方に逆立つ金髪に、国の
「──あ!? おめぇみたいな馬鹿には魔物の良さは分からねぇよ」
「んだと!? 変人ふぜぇが調子のるなよ? 今此処で決闘としようじゃねぇか!」
「望む所だ!」
「ロスト、『カイン』いい加減にしなさい!!」
アミは二人の頬目掛けて両方の拳を突き出し、殴る。
「下位魔術師になって浮かれてるのも分かるけど、はしゃぎ過ぎ! ──来たわよ、先生がたが」
下位魔術師一同の前に現れた上位魔術師達。
その中の一人極めて目立つ見た目。
服越しにも目立つ筋肉。
二メートル近くはあるであろう背丈。
筋骨隆々な背丈の高いスキンヘッドの男がマイクを手に取り。
「若人の諸君!! 改めてアカデミー卒業おめでとうである。訓練生から下位魔術師となり、これから数多の困難が若人諸君に待ち受けているが、それしきの事で決してめげず、諦めず立ち向かい、気合と根性と努力で乗り越えるのであるぞ!」
と、号泣しながらにスピーチをした。
「相変わらず暑苦しいな『スキン』先生」
「確かにそれには賛同する」
ロストとカインは苦笑いしながら壇上を見ていた。
──次々に上位魔術師に呼ばれ三人一組、上位魔術師のチームとなって、各々が別の場所へと移動して行く。
ロスト、カイン、アミはスキンに呼ばれ、湖付近の森。
滝の流れる音が響き渡る森の中に出来た木一つ無い円形の空間に来ていた。
「嬉しいぞ! まだ幼くして自身の夢に向かって邁進している若者とチームアップ出来るのは」
ガッツポーズをしなが感涙しているスキン。
「あー、はいはい。それはようござんしたね」
「幼いとはいえ下位魔術師。この国『フィーニス』の魔術師である、精進してくのだぞ! ──先ずは吾輩からのクエスト。この森の付近に三つの
「はっ! おもしれぇ、俺が先に見つけてやるよ」
「ロスト、貴様より先に俺様が見つけてやる」
「──また始まった」
ロスト、カイン、アミは各々が散開して魔術鞄を探しに森の中へ。
スキンはその場に残り三〇秒待機。
「吾輩もそろそろ向かうである!」と、三人を探しにスキンも森の中へと入って行った。
基礎魔術である『
五感全てまでが鋭くなっている為、少しの服ズレの音すら逃さない。
木の枝を足場に飛び移りみるみると距離を詰め、一人目を見つけた。
「何処だここ……」
何処を見渡しても木、木と完全に迷子になってしまったロスト。
取り敢えずで走り出してしまった故に。
「しょうがねぇ、アイツを呼び出すか。──
魔法陣から姿を表すと直ぐさまロスト目掛けて飛び。
「だーーー!! 辞めろ、くそっ! 直ぐに襲ってくんじゃねぇ」
「キィキィ」
いつもの様にロストの髪にじゃれつくゴルバトを他所に、卒業再試験までの一週間と下位魔術師の集まりまでの三日間で身に付けた魔術の一つ。
生体魔術の中で下級魔術にあたる『
「(なぁ、何でいつも俺の事を襲うんだよ)」
「──キィキキ!?(ロストの喋ってる事が分かるぞ!? でも、何だか頭に響いて気持ち悪い) 」
突然の事に驚き、髪でじゃれていた羽に付いた極小さな蝙蝠の指の形をした鉤爪を止める。
「(聞いてるのか? ゴルバト)」
「キィキィ(だって、ロストのくるくるしたこれ楽しいから)」
と、またしてもじゃれ始め今度は髪に噛み付き始めた。
俺の事をいつも襲ってたんじゃなくて遊びたかったんだな、ゴルバトは。
今度からはもっと構ってやるか。
「(遊んでる所悪いんだけど、手伝ってくれよ)」
「キィ(えぇ……)」
「(また今度遊んでやるからさ。褒美、欲しい物やるから)」
「キィキ(しょうがないなぁ、何すれば良いの?)」
考えた末にロストはゴルバトの素材に使った『サウンドバッド』の特性でる『
「(よし! 超音波で探してほしい物が──)」
全てをゴルバトに伝え終える前に、上の方から声が。
「見つけましたぞ、ロスト殿!」
声の方を見やると木の枝の上に立ち、ロストを見下げるスキンの姿が。
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