第4話
夏休みに入り、夏課外が始まった。
「あー、あっつい……」
三限目が終わって、千明と共に校門から出る。
日差しが照り付ける中、家までの道を歩いていく。
「なんか一気に暑くなってきたよな」
額にうっすらと汗を浮かべた千明も、光を遮るように手を頭の上に翳している。
「なんでこんなに暑いんだ」
璃音は、恨めしげに言う。
夏だから仕方ないとわかっていても、どうしてもそう思ってしまう。
ジージーという蝉の声が、余計に暑さを感じさせる。
暑さのせいで二人の口数はどんどん減っていく。
ついにはお互いに喋らなくなってしまった。
二人で黙々と歩道を歩いていく。
千明の家まであと少し、というところで、璃音が言った。
「ねえ、今日千明ん
いきなりのことに千明は驚きつつも、
「いいけど、いつ来る?」
と問い返す。
「制服着替えてシャワー浴びたら行く」
大体二十分位で行くかなあ、と考えながら答える璃音に、わかった、と言う。
それとほぼ同時に、家に着いた。
千明と璃音は、家が隣で、昔からよくお互いの家を行ったり来たりしていた。
最近は頻度が落ちたが、全く行かないわけではないので、割とすぐに千明の家に行くことが決まった。
「じゃあ、後でね。すぐに行く」
「うん、なんか用意して待ってる」
そう言って、お互いの家に入っていった。
シャワーを浴び終えて、千明の家に行こうと玄関に向かう途中、廊下で弟の
「あ、将人。私、千明ん家行ってくるから、お母さんになんか訊かれたら言っといて」
「了解。千明君によろしく言っといて」
璃音の幼馴染の千明は、将人の幼馴染でもある。
少し前までは千明の家に行く時はよくついてきていたが、小学六年生になった最近はあまり一緒に行かなくなった。
玄関で靴を履き、
「行ってきます」
と言って家を出る。
いってらっしゃい、と言って扉を閉めた将人が鍵をかけてくれたのを確認してから、千明の家へ向かった。
「お邪魔しまーす」
チャイムを鳴らすと、部屋着に着替えた千明が玄関のドアを開けてくれた。
玄関先で靴を脱ぎ、二階の千明の部屋に連れて行ってもらう。
「そうだ、璃音、アイス食べる?」
飲み物を取りに一階のキッチンに二人で降り、麦茶をコップに入れている途中で、千明がそう言った。
「え、食べたい」
「じゃあ持って行こ」
冷凍室からアイスを二本取り出し、麦茶の入ったコップと共にお盆に乗せて、二階へと戻る。
一階へ降りる前にクーラーを入れた部屋は、かなり涼しくなっていた。
「アイス、溶ける前に食べよう」
そう言って璃音にアイスを差し出す。
それを受け取って開けた璃音を見て、千明も自分のアイスを開ける。
「冷た。ん、美味しい」
そう言いながら璃音は笑顔でアイスを口に運ぶ。
ソーダ味のアイスは、ゆっくりと溶けながら、二人を冷やしていく。
アイスを食べ切った頃には、部屋も体も丁度良い涼しさになっていた。
「そういえば、課外はどうなの?」
ふと気になったことを千明に聞いてみた。
「どうって、うーん。演習ばっかのやつは正直つまんない」
少し考えてそう言った千明に、
「やっぱりもっと難しいのしたいの?」
「そうだねー、発展的な内容がいいな」
課外の演習は結構難しい内容だったのだが、それでも千明には物足りないらしい。
そういうところを見ると、千明はギフテッドなんだな、と感じる。
「あと、すでに知ってるやつとかも多いし。もっと他のことしたいな」
そう言い切る千明に、やっぱり頭の作りが違うんだな、と改めて感じる。
「みんなに合わせないといけないのも大変だね」
璃音の言葉に苦笑しながらも、否定はしない。
「千明は昔からなんでも出来てたし。それが当たり前みたいなとこあるよね」
そんな訳ないのにね、と言うと、
「それをわかってくれる人がいる俺は幸せだよ」
心底嬉しそうに、笑う。
その笑みに、璃音の心臓の鼓動は早くなる。
それを振り切るように、璃音は話を変えた。
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