第2話
放課後、千明が職員室から教室に戻って来ると、そこにはすでに三人が揃っていた。
「千明が準備できたら始めよ」
机を二組向かい合わせて、勉強会がしやすいように準備がされている。
使いそうな教科書やノートを持って、空いている席に着く。
「一応俺は数学と英語しようかなと思ってる」
ぱらぱらと教科書をめくりながら告げ、三人に何をするのか尋ねる。
「千明、俺英語教えてほしいんだけど」
祐介のその言葉にいいよ、と言い、隣の祐介に具体的にはどこを勉強したいのか聞き出している。
「俺は数学するけど、わからんとこ出てきたら聞く」
聞いてもいいか、と千明と璃音に問う隆に、二人は頷く。
そうして、四人の勉強会が始まった。
「あー、そう言うことか、理解した」
なるほど、と声を上げる祐介。
「学年トップと二位いると心強いよな」
前期の中間テストでは、学年トップは千明で、その次は璃音だった。
「理解するの物凄い速いんだよなー」
「まあ、授業聞いたら大体理解できるから」
苦笑いしてそう言う千明に、
「中学の時も毎回そんなこと言ってたよな」
と遠い目をする祐介。
「うーん、でもわかっちゃうし……」
首を傾げて呟くと、祐介は、
「まあ、そこも含めてのギフテッドなんだろうけど」
そうだろ、と確認するように千明に言う。
千明は、ギフテッドだ。
ギフテッドというのは、先天的に突出した才能を持つ人のことをいう。
千明の場合は、記憶力や理解力、学習能力が桁外れに高い。
好奇心も強いし、一度一つの物事に集中し出したらなかなかその集中は切れない。
苦手な事もありはするが、基本的な能力が平均して高いのだ。
その為、時に人と分かり合えないこともある。
「まあ、そうなのかなぁ。あんまりよくわかんないけど」
三人は、千明が苦労しているところも見ているし、そういうものだとわかって接しているが、中には千明の悩みを知らず、傷つくようなことを言ってくる人もいる。
それがわざとにしろそうで無いにしろ、千明が傷つくことに変わりはない。
千明はあまり気にはしないようにしているのがわかるが、三人は彼のことをかなり心配している。
それを表立って言うわけではないが。
「こんなにわかりやすく教えられるって理解してないと難しいし、それが出来る千明は凄いよ」
目を細めて心からそう言う隆に、千明はちょっと照れたように頬を朱に染める。
「あー、千明、照れてるー。可愛いー」
にやにやとそう言って千明を
「うるさい」
「いーじゃん。可愛いよ」
「璃音まで、ほんとやめろよ。マジで恥ずかしいって」
千明の頬の赤みは増すばかり。
そんな風に、ひたすら照れる千明と揶揄う三人を、傾きかけた日が照らしていた。
放課後の勉強会は、終わりを迎えようとしている。
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