第32話


二頭の白と黒の馬は並んで、町の中をゆっくりと進んでゆく。


飲食店街や市場に群がる人々、特に国中の人々がこの塀の中に移動した為、店の中はもちろん、馬車道にも細い路地まで人であふれかえっていたのだ。


「 すごい街並みだな 」


「 ああ、この国は海に接しているからな、商業が盛んなのだ、ドルマとローム以外の国とは交易している、だから物資が豊富なのだ、その分町も栄える、ただ、狙われやすい 」


「 なるほど 」


ん?…


『 あら、ルイ様ですわ、いつ見ても素敵ですわね 』


( そうね、クールで綺麗で…けれど、女性には興味ないらしいですわ )


( まさか!?・・・びーえる?… )


( かもしれませんね、残念ですわ… )



ワンピース姿のふたりの若い女性が、俺たちのことを見て噂をしている。


僅かながらにその内容が耳に入りこんできた。


『 あら? あの隣の黒髪のお方は? 』


『 初めて見るお方、この国の方ではなさそうですわね、けれど、あの衣装は…偉いお方に違いないわ…それにしてもかわいいですわね…まだ、子供かしら… 』



『 パカ パカ パカ ・ ・ 』



「 なぁ… 」


「 クヮ?なんだ? 」


「 今の女子おなごの話…聞こえたか?… 」


「 ああ、しっかり聞こえた 」


「 おまえはどう思う? 」


すると、ルイは手綱を操りブロンの脚を止めた。


“ヒヒーン!ぶるるる…、


「 急に止まるな!ノアがびっくりしてしまっただろう!?、暴れ出したらどうするんだ!」


大きな瞳が見えなくなるくらい、目を細くして、今まで見せなかった笑顔をつくりながら、ルイは俺のことを下から覗き込んだ。


「 う〜ん…やはり、オレの目に狂いは無かったようだな…あの子たちの言っていた言葉を、そのままケント殿に返してやろう… 」


「 はぁ? 」


「 今から…ケント殿を改め…


坊や?


やはりそう呼ばせてもらうことにする……



プッ!ハハハハハ!…… 」



「 ばっ!馬鹿にしやがって!… 」



その時!


一瞬、前から風の匂いがした、するとけたたましい蹄の音が凄まじい勢いで聞こえてくる。


遥か前方から、赤兎馬の如く現れた一頭の茶馬


乗っていたのはラファエルだった。


「 ルイ様!、一大事ですぞ!…ドルマがとうとう動き始めたとの報告が!すでに、数名のスパイが国境を越えたとの連絡が入りました!… 」



「 な、なんだと!? 」


「 どぶネズミって奴らか?… 」


「 たッ!直ちに出陣の御命令を! 」



「 …待て… 」


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