第31話


「 様子を見に一度町へ出る、馬は扱えるのか? 」


「 ああ 」


「 そうか、こっちだ! 」


いくつもの階段を走り降り、一階に到着すると、大きな扉の前に立つひとりの兵士が俺たちの方を見て、だらけた体勢から背筋を伸ばし立ち直った。


「 おい 」


「 は、はい!ルイ様!ご出陣でございますか! 」


「 まさか・・偵察だ! ブロンしろを頼む、あと、この方にも馬を出してほしい  」


「 はい・・それが・・あいにく、救援探索の為、皆、出払っておりまして、残っているのは奥にいるノアくろしかおりませぬ、 しかしながらあの子は少々ヤンチャでございまして、素人の方にはちと扱うにはご無理があるかと 」


「 そんなことは承知の上!、いいから早く出すんだ!」


「 は、はい! ただいま! 」


連れてこられた馬は話通りの暴れ馬、首を左右に振りながら興奮状態の中にあり、口取り兵を困らせていた。


ケントとルイの前に現れたノアは尚、不機嫌そうに暴れている。


「 無理にとは言わぬが、どうする?坊や? 」


少し悪戯な目で、いかにも俺のことを試すような口調で言いながら、小悪魔のような笑みを浮かべるルイ。


「 行くに決まってんだろ?・・馬は素直だからな、誰かさんと違ってさ 」


「 どう言う意味だ!? 」


「 さあな! いくぞ!ノア! 」


『 ザッ!! 』


ケントはノアに飛び乗った。


それまで、長い鬣を揺らしながら暴れていたノアだったが、ケントがまたがった途端、嘘のように一点を見つめて微動だにしなくなった。


「 信じられない… 」


白い風・・


あの時の鷹といい、あの、ノアでさえも操れるというのか!


ケント…


其方の底知れぬ能力が羨ましい・・


馬は素直だと?・・


ふッ…確かにな…



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