第29話


「 ドルマとは、それほど強いのか? 」


「 ああ・・・そこに立って、目を瞑っていろ 」


言われた通りにしていると、ルイは俺の背後に回った様子、静まり返った部屋の中にルイの気配は消えていた。


『 ガシッ! 』


急に羽交い締めされ首を絞めつけられた。


「 グッ・・・」


神出鬼没を意味する、まるで忍びではないか・・


「 どうだ、見えなければ当然わかりづらいだろう、しかしドルマ帝国の兵士は、白昼の状態でこれが当たり前だ、どこから攻めてくるかわからない、その上、史上最強の騎馬隊も控えている 」


「 状況はわかった、けれど、塀の外の民達はどうするつもりだ? 」


「 それなら心配はいらぬ…大切な国家の土台・見捨てたりはせぬ、ラファエルや他の部隊が救出に向かっている。とりあえずこの塀の中なら安全だからな、この日の為に民から集めた徴収で、長期戦になっても凌げるくらいの蓄えは準備出来ている・・今頃は、あの爺さんのところではないか?・・・」


そこまで考えていたとは・・


「 たとえ、この命が燃え尽きようと、国の存続の為に戦う、それがたとえ負け戦さとわかっていてもな 」


おまえの心が見える、棘に包まれた真の心、真の優しい姿が俺には見える。


振り返るとそこには、剣士の時に見せていた目とは違う、静かな海のような碧い瞳のルイが剣人の瞳に映っていた。


「 ハッ!?な、なにをしている… 」


壊れそうなくらいに細く、くびれた腰から、背中に腕を回して、思いきり強く抱きしめていた。


しばらくそのままの状態で、ふたりは微動だにせず、静かな部屋の空間には、互いの、波長が大きくズレた胸の鼓動が聞こえるだけ。


甘い香りの金髪を掻き分け、小さく薄紅色に染まった耳を探しだすと、静かに囁きかけた。


( 城はおまえが守れ、おまえは俺が守ってやる… )


( ケント… )


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