第28話


父上と母上が話をしているところを、偶然聞いてしまったのだ。



数ヶ月前・・・



〔 ドルマ帝国から、我がフランセに同盟を結びたいと・・申し出があった 〕


〔 願ってもないことでございますわ、噂によれば、その国は野蛮な侵略国家、しかし、同盟国となれば我が国との戦さの確率は低くなるのでは?それに、あちらでは畜産が盛んだとか、交易が可能になれば、貴重なお肉が毎日食べられますわね 〕


〔 まあ、それは良いのだが・・ただ・・ 〕


〔 どうされまして? 〕


〔 困ったことがひとつ・・その、同盟の条件として・・ 〕


〔 どのような? 〕


〔 あちらの姫君との縁組を、承諾することを・・ 〕


〔 そ、それは・・・ルイの事でございますか? 〕


〔 無論・・・相手の姫君も、ルイの事を気に入っているようだ・・ 〕


〔 二人が生まれてきてくれた時は、嬉しかったわ、けれど、物心がつくころにはもう、ルイは自分が男だと思ってしまっていたのかしら、日に日に増すその性格は、男の子そのもので、いつの間にか気がつくと、身体は女の子でも気持ちは完成した男性になっていた・・


こんなことが世間に知れ渡ったらルイは・・だから、ルイのお世話は私のみ、一切他人には触れさせることが出来なかった・・そんなルイに縁組だなんで・・ 〕


〔 断る道しかなかろう・・ 〕


〔 あなた・・ 〕



・・・・



「 オレのせいだ!全て、この忌々しい己れの身体のせいだ! 」


ルイは、倒れた椅子を元に戻すと、崩れながら座りこんだ。


そして碧く滲んだ瞳を震わせ、唇を噛みしめながらテーブルに向け、何度も何度も拳を叩きつけた。


「 オレのせいだ!オレのッ!・・ 」


「 やめろ!・・ 」


俺は、赤く血に染まったルイの手を止めた、そして、チカラいっぱい彼女の拳を握りしめた。


「 おまえは悪くない、悪いのは……


戦争いくさ…… それだけだ 」


「 ケント… 」

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