第20話



揺れが止まると、あの巨大な石の壁が目の前に現れた。


聳え立つ壁と壁との間には、三間程の幅の鉄で出来た門、その両脇に立つ鎧姿の門守兵が二人、馬車に歩み寄る。


「 お帰りなさいませ!ラファエル伯爵殿 」


「 うむ・・ルイ様のプロフェッサー様の御到着だ、開門を頼む 」


「 はい!ただ今! 」


『 ガーー~ガシャンッ 』


「 おい、見たか? 」

「 ああ、あいつがルイ様の? 」


馬車が通り過ぎるのをジッと見ながら、耳打ちを始めた門守兵の両人。


「 なんだよアレ、年端もいかぬガキじゃねえか? 」

「 うむ、だな、あれがルイ様のプロフェッサーだって?笑っちまうよな 」

「 ほんと、ルイ様のプロフェッサーだとか言っていたが、いったい何のプロフェッサーなんだ?」

「 さあ・・・ん?・まさか!恋人役の? 」

「 馬鹿カッ!!いくらルイ様が女に興味がないと言っても、そんなことがあるわけなかろう!・けれど、おまえの案もゼロではないかもしれん・・っというか、こんな話をしていることがバレたら、我々は間違いなく拷問部屋行きだ・・ 」


「 おい!、そこのふたり、何をヒソヒソとしておる 」


「 ・・ハッ! 」

ヤバイ・・


「 ラファエル様!なッなッなんでございましょう!? 」



「 門が開いておるぞ、さっさと閉めんか!! 」


「 も!、申し訳ございません!直ちに! 」


「 ドブネズミが遊びにこんともかぎらん、後始末がたいへんだからな・・・おい、ところで・・・ 」


「 はい、なんでございましょう 」


「 恋人とは・・なんの事だ? 」


うっ!!?・・


「 は、はぁそれは・・ 」


「 は、はい!この者が昨日、恋人にフラれたとか・・」


「 おう、そうであったか、それは残念、しかし、仕事を疎かにするではないぞ!・・まぁせいぜい励め 」


「 ハッ! 」


そんな門守兵を後目に、大きな門を潜り抜けるとそこは・・


城下町・・


「 それにしても凄いぜ、町ごと塀で囲むとはな・・ 」


「 仕方がありません、こうでもしないと、どぶネズミに、根こそぎ食い尽くされてしまいますから 」


「 鼠如きに? 」


「 ははは、本物のネズミではありません、東西南北の国の野蛮な奴らから、このフランセは狙われております、近々、北より侵略があるとの噂もチラホラ入って来ておりますので・・そういう事もあり、ルイ様を筆頭に軍事関連に力を入れている訳でございます 」



侵略!?・・



我が国と同じだということなのか・・



剣人達の乗った馬車は、人混みの中を掻き分けながら、いちばん奥に見えるお城の中に消えていった。


    

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