第19話


「 ハイヤア! 」


馭者の掛け声により馬車は走り出した。


小刻みに揺れる馬車の中から、徐々に小さくなる緑色の山を、懐かしい景色と照らし合わせながら見ていると、父上の言葉が不意にこだまのように蘇える。


( 生きるのだ…そして、我が地に…)


この国には人用の荷車がある、多種の剣や槍、あの鎧の防御力にしても、学ぶべきところは数知れず、これを参考にすれば、たとえ負け戦とわかっているあの地での闘いですら、光明が見えるかもしれない。



目的を果たし、早々に祖国へ戻らねばならぬ・・



森から離れ、しばらくして農村地帯を抜けると、小高い丘が見えてきた。



「 我がフランセ国の城です 」



馬車道の遥か先に大きなお城が現れた、その外側には城を囲むように、高い壁が永遠と続いている。



凄い・・



このような巨大な城は見た事がない、それにあれは、お堀の代わりなのだろうか、近づいて行くにつれ、あの壁の高さのせいで、城が隠れてしまうくらいだ。



驚きを隠せないまま、俺はその光景に見入っていた。



「 本日よりあちらで、ルイ様のプロフェッサーになっていただきますが・・ひとつだけ、ご忠告を・・ 」


「 なんだ? 」


「 ご存知の通りあのお方は気性が荒く、特に今はアドゥリソンス思春期という時期も重なり、反くものに対してグラディウスの如く尖っており危険です、なのでくれぐれも刺激を与えぬようお忘れなく・・命が幾つあっても足りませぬぞ 」


「 ウィ・・確かにな・・」


「 ところで・・失礼ではございますが、ケント様はおいくつでいらっしゃるのですか? 」


「 キョーゾン15だ


「なんと!・・ルイ様と同い年とは・・

それはそれは、お話が合えばよろしいですな」


!?・・15だと!?・あの容姿・・俺よりもはるかに上だと思ったが・・なのに、坊や扱いとはな・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る