第18話


扉を開けると、ショースにアビ・ア・ラ・フランセーズのジャケット姿、そして、肩までかかる綺麗な赤毛に黒い帽子を被った大男が立っていた。


「 おまえは? 」


「 お久しぶりでございます 」


「 !?・・その声に、熊のような図体…もしかして、あの時、爺さんを投げ飛ばしたやつ・・ 」


「 さよう、ラファエルにございます、あの時は大変失礼を致しました 」


その洒落た雰囲気を醸し出した格好のラファエルだったが、一週間前の鎧を付けたガラの悪い奴からは想像もつかない、品のある紳士に変身していたのだった。


「 ふ〜ん…これが馬子にも衣装っていうやつか… 」


「 は?マゴォ?、なんでございましょうか? 」


「 なんでもない 」


「 それで、もう一度確認致しますが、ルイ様のプロフェッサー師匠の件、お引き受けいただけますでしょうか? 」


「 ああ・・ 」


俺を助けてくれた、この爺さんの為・・・


それに・・


「 ありがとうございます!ならば、お約束の件、何をお望みでしょう? 」


「 船だ! 」


「 ふッ!船ですと!?……予想外な・・申し上げにくいのですが、それは厳しいかと・・他の物でしたらばなんなりと・・」


「 なら、行かぬ 」


「・・そ、それは・困ります・・」


ラファエルの額から、無数の冷や汗が滴り落ち始めた。



『 ラファエル!必ずあのぼうやを連れてこい!

もし叶わぬ場合、わかっているな、打ち首じゃ!!』



困った、連れていかなければ、間違いなく首が飛ぶ、あの気性の荒いルイ様のこと、しかし、船などとは、完全に予算が足りない、いずれにしろルイ様にお叱りを・・



この場は了承して、後で考えよう・・



「 分かりました、船は準備致します 」


「 そうか、なら、参ろうか 」


「 ケント! 」


「 爺さん!達者でな! 」



俺は、爺さんの家を後にした。




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