第8話   B&G


数ヵ月後ーーー


あの日以来、あの美味い赤黒の塊は一度もお口に入れていない、ほとんどが野菜の汁と小魚、硬いパウォンという食べ物だけだ。


「 ヴィジャアベイクモアついておいで 」


「 ウィ御意! 」


今日は畑に行き作物を収穫するらしい。


毎日聞いているうちに、お爺さんのおまじないの様な言葉も、理解できるようになってきていたのだ。


ーーー


あの嵐の日、俺は難破した船と一緒に竜巻に巻き上げられ、この異国の海岸に打ち上げられた。


嵐が去った後、たまたま魚を獲りにきていた、このお爺さんに俺は助けられたのだ。


『 難破してしまったようで・・最初見た時、異国の若者が倒れているのを見つけ、かわいそうにと、そう思った・・じゃが、よく見たら息があったのじゃ・・それに、おまえの身体には傷ひとつ無かった、あれだけの嵐の中、どういう訳だか・・不思議じゃ 』



( パカ パカ ・・ )



「 あれは!? 」



ふたりで家を出ようすると、馬の蹄の音が遠くから聞こえてきた。


『 パカッ パカッ パカ・・ザザッ 』


3頭の馬が家の前で土埃を上げながら止まった。


いちばん後ろの馬には荷車が付けてあった。


「 お爺さん? 」


「 フランセ国の軍事役人じゃ!・・早く隠れるんじゃ! 」


「 何でだよ! 」


「 いいから早くするんじゃ! 」



村長が言っていたこと、あの噂は本当だったんじゃな・・・


その役人は、見たこともない鎧で身を固めていた。


戦の時、父上の家来達が着ていたのとはまったく違い、顔すら見えない格好をしていた。


すると、ふたりの役人が馬から降り、お爺さんに向かって歩いてきた。


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