第27話 新たなる脅威
魔女はウヨネたちに背中を向けて歩き出した。
「どこに行くの?」
ウヨネは魔女を呼び止めると魔女は振り返らずに声だけを返した。
「帰る」
それを聞いたダロウとワナイは魔女の前に立ちはだかる。
「あたしの体を元に戻せ!」
ワナイが剣を魔女に向けて言う。
「ウォーターストーンを寄こせ!」
ダロウがナイフを構えて魔女をにらみつける。
魔女は両手を広げておどけて言った。
「おやおや、それは忘れてなかったのか。よかろう退屈しのぎだ、われに指1本でも触れたらお前らの望みを叶えてやろう」
「舐めやがって」
ダロウは魔女に飛び掛かってナイフを突き立てる。魔女はそれをひらりとかわす。ワナイは剣を魔女の向けて振り下ろした。魔女は剣に手をかざすと氷がそれに当たり剣を弾いた。
ある程度その攻防が続いた。
ダロウとワナイは息を立てて身構えている。魔女は笑いながら言った。
「ははは、どうした? もうしまいか」
そのとき、ゴゴゴゴゴォ……と隕石が空を通り過ぎて行った。その振動で魔女はバランスを崩して倒れそうになる。その瞬間をダロウとワナイは逃さなかった。
バランスを崩して動けないでいる魔女にふたりは襲い掛かる。
魔女は氷の壁をとっさに作るがふたりの圧力に押されて吹き飛ばされた。
「グッ」
魔女が倒れている。ふたりは魔女を見下ろしながら武器を向けていた。
「……ふん、われの負けだ。約束を守ろう」
魔女はゆっくりと立ち上がりふたりを見た。笑みをこぼしながら懐に手を入れるとウォーターストーンを取り出した。名残惜しそうにダロウに手渡す。
「よし、娘、そこに立て」
ワナイは魔女に言われた通りに目の前に立った。
魔女は手のひらをワナイに向ける。
(ピーーーー)と突然スピーカーから音が鳴った。
「ん? なんだ?」
しばらくすると鳴りやみ音は収まった。壊れたのかと思ってパソコン本体やモデムなどのほうに目をやったが特に異常は見られなかった。
再び画面に目をやると映像は止まっていて、画面の真ん中に『問題が発生したためPCを再起動する必要があります……』という文字が表示されていた。
「何だこれ? エラー?」
カチャカチャとキーボードを叩くけどまったく反応がない。マウスを動かしてもポインターが動かない。
故障か? パソコンが自動的に再起動をし始めた。
せっかくここまでやったのに……壊れたりしないだろうな。パソコンはエラー情報を収集している。
(37%完了)という数字が段々と上がっていく。
74%完了……81、88、95……。
そのとき、プツリと画面が真っ暗になり、白文字で、ある言葉が書き込まれていった。
『PCを再起動することができません、PCを再起動することができません、PCを再起動することができません、PCを再起動することができません、PCを再起動することができません……』
何だこれは? 画面がその文字で埋め尽くされていく。
『PCを再起動することができません、PCを再起動する PCを できませ …*&%#』という最後のほうは文字化けになっていった。
カチャカチャとキーボードを叩くが反応がない。
完全に壊れたかな?
僕は仕方なく電源を切ろうと手を伸ばした。すると急に画面の文字が消えて何事もなかったように正常に戻った。
僕は電源を切らずにマウスを動かした。ポインターは正常に動いている。
何だったんだ?
画面は地図みたいに、作った大陸がだけが画面の真ん中に表示されていた。僕は気を取り直して正常に動いているかキャラたちを見ることにした。
マウスのホイールボタンを上に回転させて地図を拡大していく。
キャラたちは空を見回しながら嫌な物でも見ているような顔をしている。
魔女は手をワナイにかざしたままだった。ワナイの姿は元に戻っていない。
「なんだ?」
ダロウは空をにらみながら言った。
「色が……」
ワナイは空を不思議そうに眺めながら言う。
空? 僕はマウスを動かして空を見てみた。
……え? 紫色をしている。雲も太陽も全て紫色に染まっていた。
物体が黒く崩れかかっている。雲や太陽は原型を失い、いびつな形になっている。紫と黒がうごめくように空を掻きまわしていた。
ウヨネが言った。
「紫色に染まっている」
「何が起きてるんだ?」
ダロウがウヨネたちに聞いた。魔女は鼻で笑い答えた。
「ふん、ただ空が紫になっただけだろ」
そう言って懐に手をいれた。
「ん?」
魔女は懐でゴソゴソと何かを探している。すこし焦ったように探していた。
「ない」
「あ? ない?」
ダロウが聞き返すと魔女は辺りを見ながら言った。
「ガラス玉がない」
「ガラス玉? ああ、バグ野郎を倒したときに拾った物か」
それぞれがガラス玉を探すため地面を見ていた。
「あれじゃない?」
ワナイは人差し指を向けて言った。その方向にあったのはガラス玉が割れている状態の物だった。
魔女はそこに近づいて割れたガラス玉を見下ろした。
「割れたか、仕方ない」
ぼそりと魔女が言うと不意に突風が巻き起こった。
ゴォーゴォーとうねるような風が吹きすさぶ。
風が止むと時が止まったかのように大地が静かになった。
ウヨネは何かを感じ取って言った。
「何か聴こえる」
ほかの者もそれに耳を傾けた。歪んだノイズのような音が段々とウヨネたちに近づいて来る。
紫色の空にたくさんの何かが飛んでいる。
それはオリガミのようなもので正方形をしている。その正方形は姿を変えていった。ネコ、イヌ、ツル、ライオンなどなど。
大小あるオリガミはそれぞれの色が異なり速かったりゆっくりと飛んでいるものもあった。
ありとあらゆる動物に姿を変えて空を飛んだり地面を走ったりしていた。
「何だあいつらは?」
ダロウがナイフを持ち身構えた。ウヨネも拳を出して身構えながら答えた。
「わからない。だがぼくたちに危害を加えようとしてきたら倒さなければならない」
「ああ」
そのほかの者もオリガミを見ながら身構えた。
……何でこうなった? 僕はこんなことをやるように書いてない。
ゲーム側が勝手にやっている。僕の指示なしに。
確かに適当にやってくれるのはいいが、やるんなら『実行しますか?』的なものが一声ほしいな。『はい』か『いいえ』で答えられるようにしてくれればいいわけで。
オリガミたちが地面を走るとその足跡がそのオリガミの色に合わせて塗られていった。
「来たぞ!」
ダロウが言うとオリガミたちはそのまま襲い掛かるように突進していく。ウヨネたちはそれぞれの攻撃を繰り出す。
ウヨネは消えるような速さで拳や蹴りを使って攻撃し、ダロウはナイフで切り刻み、ワナイは剣で薙ぎ払い、魔女は炎で燃やしていった。
そのたびにオリガミが消えてまた襲って来る。
ウヨネたちを囲むように次から次へとオリガミがその動物に合った攻撃を繰り出していく。
地面は複雑な色合いが交差して地面の原型をとどめていない。
ん? 何だこいつは?
ウヨネたちの少し離れたところに、黒のワンピースを着た少女らしき人物が立っていた。
その体は真っ白い皮膚に関節がところどころ金属的な物になっている。
近寄って見てみると、右目は赤い瞳と左目は白い瞳。瞳の周りは黒。その目の周りを紫が覆うように複雑な模様を施していた。髪は三つ編みでクリーム色をしている。
少女はウヨネたちのほうをまっすぐ見て不気味な笑みを浮かべていた。
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