第21話 魔物たちとの攻防

 突き破った破片が暗殺者たちに飛んでくる。暗殺者たちはそれをかわすと、その前方に見える巨大なヌイグルミに目を向けた。


 全身赤黒のオオカミと全身青黒いトラが立っていた。そこから流れる異様な殺気はコロシヤたちをにらんでいた。


 ヌイグルミたちの体を不気味なオーラが覆っている。


 へぇ、怨念と書いたら勝手にそれらしい雰囲気をキャラが出すのか。


 何か理由をつけてしまえば、そのキャラは勝手にそういった行動を起こすのはわかっているけど、結構大雑把に理由をつけても、それなりに動いてくれるのはゲームをしていて楽なところかな。


 たぶん、事細かく書けばそれを再現するのだろうけど、作るのが手間なときはこういったことをゲーム側でしてくれるのは遊びやすいと思う。


 ヤミヨが黒い霧を出して辺りを覆った。

 ノツキはピアノ線でオオカミの足を縛った。オオカミはその場に倒れてもがいている。


 シカクがオオカミに向かって行き、アイスピックで首元を刺した。

 するとトラの前足がシカクをなぎ払う。シカクは吹き飛び家の壁に叩きつけられた。


 コロシヤはオオカミやトラにクナイを投げつけた。トラはコロシヤに突進してくる。コロシヤはそれをかわすと再びクナイを打ち込んだ。


 トラはそのまま家の壁にぶつかり倒れる。


 オオカミはもがいて縛っているピアノ線を切り、コロシヤに飛び掛かって行った。それを見たヤミヨがオオカミの横腹を刀で刺して吹き飛ばした。


 トラは立ち上がりヤミヨに向かって突進していった。ノツキは素早くヤミヨの前に行き、ピアノ線の両端を壁と壁に貼りつける。トラはその線によって弾き返された。


 オオカミとトラはにらみつけながら襲うのを止めた。

 それからヌイグルミたちは重なり合って違う一体に姿を変えた。


 それは、全身黒紫の不気味なケモノのようなモンスター。体はオオカミでトラ特有の縞模様が黒くついてさらに巨大になっている。


 ヤミヨは黒い霧をだした瞬間。

 ヌイグルミは消えてノツキを攻撃する。ヌイグルミに爪で引き裂かれてノツキは消滅した。


 暗殺者たちが捉えられないほどの素早い動きで、シカクに咬みついた。シカクは食べられて消滅した。


「ヤミヨ!」


 コロシヤはヌイグルミを見ながら言った。


「ここはおいらが食い止める。だから君はここから離れて、その通信機を使いウヨネたちを呼んで欲しい」

「ですが、コロシヤさま」

「君は霧で逃げ切れるはず。おいらはこれ以上ヌイグルミを町には行かせないようにする」

「……わかりました」


 ヤミヨは霧を撒きながらその場から離れた。


 ヌイグルミの怨念がコロシヤひとりに向けられている。コロシヤはその禍々しい魔物を逃さないようににらみつけていた。


 ピッピッピッとウヨネたちの通信機が鳴った。そこからヤミヨの声が聞こえてきた。


「ヤミヨです!」

「女? 誰だ?」

 

 バレナイが通信機をにらみつけながら言った。


「コロシヤさんたちの仲間だよ」


 ウヨネはそう言うと続けた。


「で、どうしたの?」

「巨大なヌイグルミに襲われました。ノツキとシカクはやられて消滅させられました」

「ヌイグルミ? 消滅?」

「はい。コロシヤさまはひとりで今も戦っています。それで、あなたたちを呼ぶように言われたので」

「ふうん、わかった。今すぐ向かうよ。で、そこはどこ?」

「はい、町です。マダナイという町にいます。ですので早く来てください」


 ヤミヨからの通信は消えた。ウヨネはみんなに言った。


「よし、みんな行こう」


 ウヨネは走り出そうとすると魔女がそれを呼び止めた。


「ちょっと待て。われの魔法でそこまで飛ばしてやろう」


 そう言うと魔女は本を見ながら手を前にかざした。すると魔女の手から光が放たれる。


 気がつくとウヨネ一行は町の中にいた。ドーンと凄まじい音がウヨネたちの近くで聞こえて来る。


「あっちだ」


 ウヨネたちは走り出すと魔女とワナイは歩いて向かった。


 音の原因となる場所まで行くと、コロシヤたちが家の2倍のほどあるモンスターと戦っていた。


 ヤミヨが霧を作るとヌイグルミはその瞬間、ヤミヨに体当たりして吹き飛ばした。ヤミヨは壁に激突して倒れる。


「お、おい。あれがヌイグルミか?」


 バレナイが驚きながら言う。ダロウはため息を吐きながら答えた。


「ああ、そうみたいだな」


 ふたりは武器を取り出して走った。


「うわー、で、でかい!」


 ウタガはそう言いながら近くまで行き、物陰に隠れながらその様子を見ていた。


 ヌイグルミはコロシヤに飛び掛かって行った。

 ウヨネはヌイグルミにまっすぐ走っていき、ヌイグルミの脇腹に飛び蹴りをくらわした。


 ヌイグルミは吹き飛び塀に激突して塀が崩れる。


「来てくれたのか」


 コロシヤが言うとウヨネは直ぐに返した。


「話はあとだ」


 ヌイグルミは瓦礫を吹き飛ばして起き上がると、その破片が家や地面に穴をあけた。


 ヌイグルミは消えるとウヨネたちの後ろに回り込んだ。ヌイグルミがウヨネを食べようと口を開ける。


 コロシヤはそれに気づくと、素早い動きでウヨネの前に来て身構えた。


 ヌイグルミの口が閉じ、コロシヤが食われて牙がその体に突き刺さる。コロシヤは消滅する寸前、クナイをヌイグルミの左目に突き刺した。


 ヌイグルミは左目を潰されて少し離れた。


 ドラゴンは火を吐いてヌイグルミを攻撃してから飛んで空に離れる。ヌイグルミに火がついた。


 火がついたままヌイグルミは消えるとドラゴンの頭上から現れて、鋭い爪でドラゴンの背中を引き裂いた。

 

 ドラゴンは地面に倒れる。


 ウヨネは消えるような素早い動きでヌイグルミに飛び蹴りをした。すると、それをヌイグルミはかわしてウヨネの背中に突進をくらわした。


 ウヨネは壁に激突する。でも直ぐに立ち上がると再び立ち向かっていった。


 パンッとバレナイが銃を撃った。その玉がヌイグルミに命中すると動きを一瞬止めた。


 ウヨネはその瞬間にヌイグルミの顔面を思いきり殴った。

 ヌイグルミは地面に叩きつけられて地面をエグる。


 ヌイグルミは体を振り回しながら起き上がるとダロウを咬みつきにいった。

 ダロウはナイフを持って身構える。


 ヌイグルミは口を開きダロウを食べようとした。ダロウはナイフを投げるとヌイグルミの舌に突き刺さりそのままダロウに体当たりをした。ダロウは壁にぶつかり倒れる。


 そのころ魔女たちがその場にやって来た。


 ヌイグルミは目をぎらつかせながら魔女たちのほうに向かった。魔女は身構えると本を取り出して手のひらから魔法を放った。


 ヌイグルミはピタリと止まり動かなくなった。


 魔女はさらに炎をヌイグルミに放った。ヌイグルミは何も出来ずに燃えていく。そして消滅した。

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