第19話 別々の行動
「姫、ご無事ですか」
「うん」
ウヨネ一行の後ろからコロシヤたちが続いて来る。
「姫、この者たちは?」
「うん、暗殺者の人たち。でも大丈夫、ぼくたちに協力してくれるって」
「そうですか」
ウヨネたちは輪を囲み話し合った。コロシヤがウヨネに尋ねた。
「で、これからおいらたちは何をすればいい」
ウヨネは辺りを見回してから言った。
「そうだね。違和感を見つけて欲しい」
「違和感?」
「うん、ぼくもまだこの世界が作られているっていう確信が持てないから、証拠が欲しいんだ」
「ふうん……創造者を倒すんじゃないの?」
「それはあと。今は証拠を集めることをしよう」
「わかった。で、その証拠みたいなものを見つけたらどうするの?」
「見つけたら、それをよく調べて欲しいんだ。調べているとおかしな現象が起こるかもしれないから」
「おかしな現象が起きたら?」
「……どんな現象が起きるかわからないけど。ぼくたちが戦ったように誰かが現れるかもしれないし、急に何かが起こったりするかも。ともかく、そういったことが起こったら、その都度対処していって」
「対処すればいいんだね」
「うん」
そのときゴゴゴォ……という轟音が上空を鳴らした。隕石がウヨネたちの上空を流れていく。
「なんだ?」
コロシヤは空を見上げながら言った。
隕石が通過する振動で地面が大きく揺れる。
「隕石だ。ときどき、この現象が起きることがある」
ウヨネは言うと、コロシヤは隕石をにらみつけるように見上げた。
隕石が通り過ぎると再び大地は静けさを取り戻した。
「さっきのも違和感のひとつなのか?」
「たぶん、そう」
「これからおいらたちが相手にするやつは、隕石も操れるってことなんだね」
ウヨネは黙って頷きそれから言った。
「ここから、お互い別れて行動しよう」
「いいよ。それじゃあ、どうやってお互い連絡する?」
すると魔女が前に出て来て言った。
「それなら、われが通信するモノを作ってやろう」
魔女は懐から本を取り出して読み始めた。
それから地面に生えている草を摘まみ上げて放り投げた。するとそれは光って姿を変えた。
魔女の手のひらには小さな透明な玉がふたつ乗っている。魔女はその物の説明をし始めた。
「これは、空中に浮かんでわれたちのあとを追いかけて来る物さ。ふたつのどちらかを摘まんで話せば、会話ができるようになる。いつでもな」
魔女は自分の手のひらに乗っている玉を吹くと、玉は浮かびウヨネとコロシヤの後ろに浮きながら止まった。
「わかったよ」
コロシヤはそう言うとウヨネたちに背を向けた。
「じゃあ、おいらたちはあっちのほうへ行ってみるよ」
「うん、お願い」
パッとコロシヤたちはその場から消えるように離れた。
「姫、これからどうするのです?」
ドラゴンがウヨネに尋ねた。
「ぼくたちもこの世界にある違和感という証拠を見つけ行くんだよ」
「違和感ですか」
「そう」
ウヨネは少し前に出て振り向いた。
「それじゃあ、みんな。行こう」
違和感を見つけに行くのか。
ウヨネたちを倒すために暗殺集団を作ったのに、彼らはウヨネたちの仲間になってしまったな。
この世界が僕の手によって作られていることは、ウヨネたちにとってはまだ半信半疑のようだし、なるべく作られていると思わせないようにしたほうがいいかな。
僕を倒しに来るみたいだし。内心はどうやってって思うけどね。
このゲームのゲームクリアを考えてみると、ウヨネたちは僕を倒したがっている。それが彼女たちにとって最大の目的だとしたら、僕を倒した時点でゲームクリアということになる。
でも、それは不可能だと思う。
こちら側がこのゲームをコントロールできるわけだから、いくらキャラたちが強敵だとしてもどうとでもなるわけで。
じゃあ、ほかにゲームクリアの条件を与えなければならないということになる。
ゲームをクリアする方法。
単純に何か脅威的なものを作って、それがキャラたちのいる世界を崩壊させることにする。
キャラたちはそれに立ち向かいながら攻略していく。
世界の崩壊は止まり平穏な日々が訪れる。それでゲームクリアっぽくなる。
でも【タイピングで物語を作ってクリア】とディスクに書いてあるってことは、条件として最低でも文字を書いて物語を作らなければならないとクリアできないことになる。
はあ、最初にクリア条件を設定すればよかったのか?
たぶんそうやって作るのが普通なのだろう。
とりあえず、普通のRPGみたいにラスボスみたいなものを作っておいて、そいつを僕の代わりに……ちょっと待って。ゲームクリアが目的なら、ウヨネたちにラスボスを倒させる必要がある。
ラスボスが倒されるってことは僕がやられることになる?
反対にラスボスがウヨネたちを倒したとしたらゲームオーバーになるのかな?
そうなると、どうしてもウヨネたちに勝利をもたらさないといけないわけで。
うーん、今考えてもいい案が出てこないから、しばらくはキャラたちの様子を見てみるか。
その世界の違和感をできるだけキャラたちに見せないようにさせながら。
コロシヤ一行は森を突っ切って行った。
あ? このままだと透明な壁にぶつかってしまうな。
僕はその手前に町を作った。
メニュー欄から【町】を選んで平原の一角に置いた。洋風の一般的な町並みが画面に出現した。
僕は町にある家の中も確認した。
中は木で作られている。そのほかにもリビングや寝室、調度品などが置かれている。
なるほど、メニュー欄から選べば家の中はちゃんと作ってあるみたいだ。
僕はその町をコロシヤ一行が向かっている道の途中に置いた。
それから人々を作った。
メニュー欄から【人々】を選んだ。男性女性が半々くらいに何人か決めることができる。
僕は適当に男女20人ずつ作って置いた。
男性と女性の格好は異なっている。ゲームの中であらかじめそれは設定されているようだ。
人々を作ると、着ている服や髪型、体型、性格などがランダムで決まるようになっている。
今度は町の人々の大まかな内容の設定を考えてみた。
【人々は町の先にある門を決して開けてはならない決まりがある。それは凶悪なモンスターが町を破壊しに来るから】というもの。
コロシヤ一行は町に着いた。
「ここは町だね」
コロシヤは町並みを見ながら言った。宿屋、武器屋、防具屋などの店がある。
ヤミヨはコロシヤに聞いた。
「コロシヤさま。これもウヨネたちが言っていた違和感とやらですか?」
「さあ、わからないなぁ。調べてみようか」
「はっ」
コロシヤ一行は、宿屋の前にたたずむボロボロの青いドレスローブを着ている女性に話しかけた。
「ちょっと君に聞きたいことがあるんだ」
コロシヤが言うと女性はにらみつけながら言った。
「ああ、あんた誰だい?」
「おいらはコロシヤだ」
「コロシヤか。で、何だい?」
「ここは何て町なんだ?」
「まち……?」
【町の名前はマダナイ】
「うん」
「マダナイという町だよ」
「ふーん、わかったよ」
コロシヤ一行はそこから先に進んだ。すると女性がコロシヤたちを呼び止めた。
「ちょっと! あんたたち!」
女性の声にコロシヤたちは振り向いた。
女性は血相を変えて言った。
「どこへ行くのさ!?」
コロシヤは進む方向に人差し指を向けて言った。
「この町の先に」
「町の先に? ダメだ。行ってはいけないよ」
「何で?」
「この先には凶悪なモンスターがいるんだよ。この先にある門を開けたらこの町は破壊されてしまうのさ」
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