第17話 暗殺者のアジトにて
暗殺集団のアジトに向かうのか。じゃあ、暗殺集団をちゃんと書かなきゃならないか。
うーん、僕がこの世界を作っていることがわかったところで、キャラたちにはどうすることもできないだろう。ある意味、僕が製作者なわけで、内容を変えようと思えばいつでも変えることができる。
ウヨネたちは僕を倒そうとしているけど、どうやって? まさか、この画面から出てくるのか?
僕は首を振ってため息をひとつ吐いた。
バカらしい。これはゲームなんだ。僕が自由に操作できる。
僕はとりあえず、暗殺集団のアジトと団長を作った。
アジトは洋館にして森の奥に置いた。その中にコロシヤという団長がいる。
【暗殺集団はみんな黒のローブを着てフードを被り顔を隠している。コロシヤは少年でクナイを使って攻撃する】
あとは、おいおい考えるとするか。
僕はウヨネ一行のほうに目をやった。
「しかし、俺たちを襲う理由がライトニングストーンだとはな」
ダロウが誰彼構わずに言った。バレナイがそれに答えた。
「ああ、そうだな。俺たちの持っているウォーターストーンには興味がないらしい」
バレナイは続けてウヨネに聞いた。
「なあ、ウヨネの姉ちゃん」
するとドラゴンが振り向いて言った。
「姫と呼べ」
「ひめだと?」
「そうだ」
「はいはい、わかったよ。お姫様これでいいんだろ」
それを聞いたウヨネが振り向いて答えた。
「別に呼び名は何でもいいよ。それで、なに?」
「そいつはちゃんとアジトの場所に案内するんだろうな」
ウヨネは先頭を歩いている暗殺者をチラリと見て言った。
「さあね。ぼくたちはただついて行って確かめるだけだよ。そこにアジトがあるのを」
「あったらどうするんだ?」
「そうだなぁ、その中にいる人にでも会っておこうかな」
「会ってどうする?」
「その人がいたとして、ぼくたちがどんな歓迎をされるかわからないから何とも言えないけど。その人に知恵を借りようかな」
「知恵?」
「うん、ぼくたちはどうしても創造者を倒さなければならないと思うから。それにはあらゆる知恵が必要なんだ」
バレナイは深呼吸するように息を吐いた。
「知恵を借りるのもいいが、奴らが襲って来たら
「うん」
ウヨネ一行は暗殺集団の洋館に着いた。
「ここがアジト?」
ウヨネは暗殺者に聞いた。暗殺者は力なく答えた。
「ああ、そうだ」
洋館は灰色の煉瓦に黒のとがった屋根。それがウヨネたちの目の前に立ちはだかる。
「ふん、どうやら嘘じゃなかったみたいだな」
ダロウは吐き捨てるように言った。
「じゃあさっそく中に入ってみようか」
ウヨネは洋館の玄関に足を運んだ。ほかの者も後ろに続く。
「姫、俺さま中に入れないのでここでお待ちしております」
「うん。わかった」
ドラゴンは暗殺者の腕をつかみ差し出した。
「それで、こいつはどうしますか?」
「そうだなぁ、とりあえず彼がまた何かするかもしれないからここで捕まえといて」
「はい」
「もし何かあったらぼくたちを呼んで」
「はい、姫、ではお気をつけて」
ウヨネは玄関の扉を開ける。中は薄暗くガランとしたホールに上へと続く階段がある。
「誰もいねえ」
バレナイがキョロキョロと辺りを見回して言った。
暗殺集団か。自分で作っておいて何だけど、ウヨネ一行に捕まっている暗殺者と団長のふたりしかいないのもな。
仕方ない、結構強めのキャラをふたりほど作っておくか。
【暗殺者ふたりの名前はヤミヨとノツキ】
【ヤミヨは女性で黒い霧に乗じて相手を仕留める。武器は刀を所持している】
【ノツキは男性で壁に隠れたり地面に隠れたりして攻撃する。武器はピアノ線】
僕はそのふたりを洋館内に置いた。
「ふん、拍子抜けだな」
ダロウの声がホールに響く。
ノツキが地面に隠れてダロウの後ろに現れる。それからピアノ線でその首を絞めようとした。
「何者だ!」
声を発したのは魔女だった。魔女はとっさに手から炎を出してノツキを燃やした。ノツキは再び地面に隠れて炎を消した。
今度は魔女の後ろにノツキは現れて、ピアノ線でその首を絞めようした。
それを見たウヨネは消えるような速さで動き、ノツキの懐に拳をくらわすとノツキは吹き飛び壁に叩きつけらえた。
「テメー!」
そう言って、バレナイは銃を構えてノツキを狙った。
銃から玉が飛び出る。ノツキは玉に当たる寸前、壁に隠れて玉を避けた。
「みんな、落ち着くのだ。話せばわかるのだ」
ウタガは興奮しているみんなをなだめた。しかし、それを聞く者はいない。
ノツキはウタガの後ろに来て、首をピアノ線で締めようとしてきた。
「ウタガ!」
ダロウがウタガのほうを向いて言った。ウタガはそれに答えて思い切り振り向いた。
「うっ」
ノツキはうめき声を上げた。
ウタガの頭がノツキの顔にぶつかる。ノツキは吹き飛ばされて地面に倒れた。
「な、何が起こったのだ?」
ウタガは頭を擦りながら言った。
ウヨネたちはノツキを囲ってその姿を見ていた。
「暗殺集団のひとりだな」
ダロウが言うとウヨネが答えた。
「そうみたいだね」
「おい」
バレナイが辺りを見回しながら言った。
「周りを見てみろ」
バレナイが見てたのは辺りを覆っている黒い霧。ウヨネたちもそれを見ると身構えた。
ヤミヨがワナイに近づく。それからワナイの背中に回り込み刀を振り下ろした。ワナイは背後に殺気を感じ取り振り向きざまに剣をなぎ払った。
カキンッ! と火花を散らして硬い物どうしがぶつかりあった。
その瞬間に、ウヨネは消えるような速さでヤミヨの懐に拳をくらわした。
ヤミヨは吹き飛ばされて霧の中に消える。息づかいさえも聞こえない静寂が辺りを覆う。
「うっとうしいな」
魔女はそう言うと手を軽く仰いだ。すると風が巻き起こり霧が消えていった。
「そこか」
魔女は手のひらに氷の矢を作りヤミヨに放った。ヤミヨは刀でそれを弾き、素早い動きで黒い霧を撒きつつ、ダロウに目掛けて攻撃を仕掛けた。
ダロウはナイフで刀を防ぐと刀の圧力に押されて後ろに吹き飛ばされた。ヤミヨはそのまま飛んで、突き刺すように刀を持ち変えると、ダロウの胸にその刀を振り下ろした。
バレナイは霧の隙間から銃をヤミヨに狙いを定めて構えている。
パンッと銃から飛び出た玉がヤミヨの肩に掠った。ヤミヨは怯み勢いを緩める。その瞬間を狙ってウヨネが飛び蹴りをヤミヨにくらわした。ヤミヨは壁に叩きつけられて倒れた。
「まったく」
ダロウは立ち上がりながら疲れたように言った。
霧は消えて薄暗いホールにはふたりの暗殺者が倒れている。ウヨネたちはまだ暗殺者が襲って来ると思い身構えていた。
しばらく経つと、皆それぞれが構えを解いて辺りをうかがっている。
あれ? 暗殺集団がやられちゃった。ほかはともかくウヨネと魔女が厄介だな。
彼女たちは結構強い設定になっているみたいだ。あまり気にしなかったけど、キャラの強さの強弱ってどうやって決めているんだ? キャラを作ればそのキャラに合わせて強さが勝手に決められているのかな?
例えば最強のモンスターを作ったとしても、そのモンスターはもう強さが決められている。だから、最強とか絶対無敵とか書いても意味がないのかもしれない。
ウヨネたち個々の力がどれくらいのものなのかわからないけど、ちょっとやそっとで倒せそうにないな。このゲームのことだから、まだ何か隠しているように思うし。
僕は考えるのを止めて、ウヨネ一行に目を向けた。
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