第14話 空き家の調査

 ドラゴンが空に向かって上がってくる。


 よくわからないが、自分の見ている画面にぶつかるのかなぁ、とりあえず何か来させないようにさせるか。


 風で押し返す。うーん、それだと怪しまれてしまうか。


 そのとき、空から隕石が落ちてきた。

 あ! 僕が設定していたやつだ。


「ん! なんだ?」


 ドラゴンは空気の振動でその場にとどまった。上をみると巨大な隕石が流れ星のように通過して行った。

 ほかのみんなも地面の揺れに身動きが取れないでいた。


「またか」


 バレナイが隕石を見ながら言った。


「またって?」


 ウヨネはバレナイに聞いた。


「前も隕石が降って来たんだ」


 すさまじい轟音と地響きが辺りを覆う。ドラゴンはその場にいれらえず地上に降りた。


 しばらくのあいだ地面の揺れは続いた。


 僕はドラゴンを空に行かせないように厚い雲で覆った。

 それから【雲の近くに寄れば雷に打たれる】と書いた。


 揺れが収まり大地は再び平穏に戻る。


「収まったな」


 ダロウは体を起こしながら言った。


「そうみたいだね」


 ウヨネは空を見ながら答えた。


「何を見てる?」

「空に雲がある」


 ダロウは空を見上げた。


「ああ、曇ったんだろう。まさか俺たちを作った奴がやったって言うんじゃないだろうな。隕石とかも」

「そのまさかだとしたら」

「おいおい勘弁してくれ。そんなことができるなら、俺たちはもうすでに消滅させられているんじゃないのか」

「ぼくたちを作った者がどういう性格をしているのかわからないから何とも言えないけど、こうして生きているということは、ぼくたちを生かしている理由があるのかもしれない」


 生かしている理由ねぇ。それは、このゲームをやった感想を友人に言うためなんだけど。


 ここまでやった感想を面白いとか面白くないとかを入れて、純粋に考えてみると。


 うーん。自分で物語を作るゲームって言うのはどうだろう。ゲーム会社が作ったストーリーをやるほうが面白いんじゃないのかな。


 この物語をクリアしてほしいって制作側は思っているわけだから。たぶん。一定の感覚でイベントが起きたりして物語を進めていくほうが僕は面白いと思うな、今の段階では。


「生かす理由だと」


 ダロウは訝しい顔をしながらウヨネに尋ねた。


「うん、もしかしたらぼくたちに何かをさせたいのかもしれない」


 ウヨネはそう言いながら空を見るのを止めた。ワナイはウヨネに聞いた。


「まだつづけるの?」

「うん」

「わかったわ」


 ワナイは再び歩き出した。そのあとをウヨネたちが続く。

 しばらくして、ウヨネたちはワナイたちがいた最初の場所に着いた。


「ここよ」


 ワナイが言うとウヨネは周りをぐるりと見回した。


「ふーん、ここがウタガさんたちがいた最初の場所か」

「そうなのだー。あの家があったのだ」


 ウタガはレンガ造りの家を指さした。


「そうなんだ」


 ウヨネはそう言ってその家に入って行った。ウタガはウヨネについて行きながら話した。


「家の中は普通だったのだ。そうそう冷蔵庫にケーキが入っていたのだ」


 ほかの者は家の前で待っていた。魔女は盗賊たちとにらみ合っている。ワナイは家に寄り掛かり空を見上げている。ドラゴンは巨体なため家には入れなかった。


 ウヨネは冷蔵庫の中を調べていた。


「ケーキとオレンジジュースとミルクか……」


 そう言うと冷蔵庫のドアを閉めてウタガに聞いた。


「ねえ、この家って誰かいた?」

「誰か? いや、誰もいなかったのだ」

「いない?」

「そうなのだ。私たちが外から呼んでも誰も出てこなかったのだ。私はドアに鍵が掛かっていると思い込んで、仕方ないからこの家の煙突から入ったんだ。でも、ドアには鍵が掛かっていなかったのだ」

「なるほど、そうなると」


 ウヨネは顎に手を当てて考えた。


「おい」


 バレナイがドアから顔をのぞかせると急かすように聞いてきた。


「いつまでここにいるんだ? その作られている世界っていう証拠を見つけに行かないのか?」

「証拠ならここにあるよ」


 ウヨネは冷蔵庫を指さした。それを見たバレナイは疑問の声を上げた。


「れいぞうこ?」

「うん」

「冷蔵庫に何か入っていたのか?」

「そうだよ。食べ物や飲み物が入っていたんだ」


 バレナイは家の中に入り壁に寄り掛かりながら腕組みをして尋ねた。


「……それのどこが証拠なんだ?」

「ウタガさんが言うには、ここは無人だったみたいなんだ。でも、食糧が置いてある。おかしいと思わない?」


 バレナイは鼻で笑って言った。


「まだ、この家の住人がどこかに行って帰ってきていないだけじゃないのか」

「どうしたんだ?」


 今度はダロウが家の中をのぞいてそのまま入って来た。


「何があった?」

「冷蔵庫にケーキがあったんだよ」

「ケーキ? そういやぁ、腹が減ったな」


 ダロウは冷蔵庫まで来るとそのドアをあけた。

 

「ほう、確かに入っている。結構あるな」


 そのままケーキをつかみ口に入れた。


「……ん? 何だこれ?」

「どうしたの?」


 ウヨネがダロウに聞いた。


「味がない」

「味が?」


 ウヨネはケーキを食べようと透明な包装紙を取り始めた。


 ケーキに味がないのか。何で? ウタガたちが食べたとき何も気にしていないみたいだったけど。


 僕はケーキに味をつけた。


 【ケーキは生クリームが甘く。スポンジには玉子とバターの風味がする】


 ウヨネはケーキを食べるとダロウがウヨネに尋ねた。


「どうだ?」

「……いや、甘い味がするけど」

「うそだ」


 ダロウはさっき食べたケーキの残りを再び食べた。


「あれ? 味がある。どうなってんだ? 俺の舌がおかしくなったのか」


 ウタガは食につられてケーキを食べてみた。


「おお、最初に食べたときよりもおいしくなっているのだ」


 それを聞いてウヨネは言った。


「ダロウさんの舌がおかしくなったんじゃないよ。これは、ケーキの味を変えたんだよ。ぼくたちに作られた世界だってことを知られないために」


 そこまで言うと、ウヨネは外にいる者を家の中に呼んだ。


「ねえ、みんな美味しいケーキがあるから一緒に食べない」


 ウヨネに促されてドラゴン以外の者たちは家の中に入って行った。


「姫、俺さまはここでお待ちしております」


 ドラゴンが言うと、ウヨネは「ちょっと待ってて」と言って家の中に入った。それから、ケーキを持って来てドラゴンに渡した。


「それ食べながら待ってて」

「わかりました。姫」


 家の中ではみんながケーキを頬張っていた。

 ウヨネはみんなを見回してから言った。


「みんな、食べながら聞いて。さっきダロウさんがケーキを食べたとき、味がしなかったんだ。でも今は味がある。ぼくの考えだと、この世界を作った者が味をつけ足したと考えられるんだ」


「ふうん、それで」


 バレナイはケーキを頬張りながら聞き返した。


「みんなの知恵を貸してほしい。この世界を操っている者を倒せる知恵を」


 その言葉にダロウが反応した。


「そいつを倒してどうなるんだ?」

「倒せば、この偽りの世界から脱出できると思うんだ」

「へぇ、根拠は?」

「根拠はないけど、このままだと、ぼくたちはいつ消滅させられるかわからなよ」


 ウヨネの言葉にみんなはお互いを見回した。


「われは魔女だ。われを消滅させられると思うのか?」


 魔女がウヨネに問いかけた。


「そうなるだろうね。向こうからしてみれば、この世界を自由に操ることができるはずだから」


 魔女は天井を見ながらにらみつけている。


「わかったのだ」


 ウタガは手をひとつ叩いて言った。


「相手と交渉すればいいのだ」


 その場の全員がウタガに注目する。ウヨネはウタガに聞き返した。


「こうしょう?」

「そうなのだ。この世界を操ることができるってことは、私たちの会話も聞いているわけで」


 気にしていなかったのか、一同が黙り込んだ。

 沈黙を破りウヨネが切り出した。


「そうか、確かにこの会話は聞いているだろうね」

「うん、きっとそうなのだ」


 ウタガは天井に向かって話しかけてきた。


「おーい。この世界を作った人。そこにいるなら返事をくれないか」

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