第12話 探索の開始

「この世界を作った者だと?」


 ダロウは疑わしそうにウヨネに尋ねた。ウヨネは頷いて返した。


「たぶんね」

「あんたの言う、この世界が作られているならどうするってんだ?」

「そうだね。まず、この世界がどこまで続いているのかを見てみるとしよう」

「それでどうなる?」

「もし、作られているならそれ以上進めないところが出てくる」

「進めないところだと?」

「うん、例えば、明らかに道は向こう側へと続いているのに、透明な壁か何かで前に進めなかったり。なぜか知らないけど、適当な出来事が起きてその先へは進めなかったり」


 それを聞いたワナイがウヨネに言った。


「そういったことなら、あたしは経験しているわ」


 ウヨネたちは先を促すようにワナイの言葉を待った。ワナイは続けた。


「あたしが適当に歩いていたら、途中で進めない道があった。透明な壁みたいな物で遮られていて、それ以上進めなかったわ。しばらくすると、その壁はなくなり通れるようになった。そういったことがあったわ」


 ワナイの言ったことにウヨネは頷いて答えた。


「それが本当なら、間違いなくこの世界は作られていることになる」


 ダロウは辺りを疑いながら見ている。そのほかの者もあちこちを見ていた。ダロウはバレナイと話し合った。


 ドラゴンはウヨネに聞いた。


「姫、あの者たちを同行させるのですか?」

「うん、仲間は多いほうがいい」

「はあ」


 ダロウたちは話し終えるとウヨネのほうを向いた。


「わかった。俺たちも一緒に行く。が、ウォーターストーンが先だ。こっちへ渡してもらおうか」

「うん、わかったよ。ドラゴン、彼らに渡してやって」


 ドラゴンは頷くと、ウォーターストーンを盗賊たちに向けて放り投げた。ダロウはそれを受け取ると、その石を眺めた。


「よし、いいだろう。あとは……」


 ダロウは魔女たちのほうを向いた。


「あんたらが持っているライトニングストーンを渡してもらおうか」


 魔女は鼻で笑うと盗賊たちに言った。


「誰がやるかい。欲しいな奪ってみなよ」


 魔女は身構えるとワナイも身構えた。それに反応して盗賊たちも身構えた。

 それを見たウタガは魔女たちと盗賊たちを止めに入った。


「まあまあ、待つのだ。私たちはこんなことをやっている場合ではないのだ。一刻も早くこの世界に何が起きているのかを突き止めなくてはならないのだ」


 魔女たちと盗賊たちはお互いをにらみ合いながら構えを戻した。

 バレナイは小声でダロウに聞いた。


「どうする? 奴らをやらないのか?」


 ダロウは少し考えて小声で返した。


「そうだな、ここだとこっちが不利だ。奴らに同行していって隙ができたところを奪ったほうが安全だ」

「なるほど」


 ダロウはウヨネたちに言った。


「わかった。ライトニングストーンは諦める。で、お前らに俺たちはついて行く。それでいいな」


 ウヨネとドラゴンはチラリとお互いの顔を見合わせてからウヨネは答えた。


「うん、いいよ。じゃあ、ぼくについて来てよ。あ! そうだ、自己紹介がまだだったね。ぼくはウヨネ、こっちはドラゴン」

 

 ドラゴンは頷くと凄みのある顔をほかの者に向けた。

 それに圧倒されてほかの者は渋々と自己紹介をした。


「われは魔女だ」

「私はウタガなのだ」

「俺はバレナイ」

「ダロウだ」


 ワナイだけはそれに答えずそっぽを向いた。ドラゴンはそれを見て促した。


「おい、娘。名前を答えろ」


 ワナイはドラゴンをにらみつけながら返答した。


「言わない。何であたしが自己紹介しなくちゃならないの?」

「貴様姫に逆らうのか」


 一触即発しそうなドラゴンとワナイに対してウヨネが止めに入った。


「いいよドラゴン。言いたくないなら言わなくても」

「そ、そうですか」

「うん」


 それからウヨネはワナイのほうを向いて言った。


「強制じゃないから、言いたくなったらいつでも言ってね」


 そうしてウヨネを先頭にドラゴン、ウタガ、魔女、ワナイ、ダロウ、バレナイと続いた。


 しばらく歩いて行くとダロウはウヨネに聞いた。


「どこまで歩くんだ?」


 ウヨネは半分ほど振り向いて答えた。


「進めるところまでだよ」

「ああ、そうか。何か壁みたいなものがある場所までか」

「うーん、それがあったらね。もしかしたら、ぼくたちの進んでいる方向の道を先に作っているかもしない」

「俺たちを作った奴がか? バカバカしい話だな」

「そう思うのも当然だけどね」


 それ以上進めない場所まで歩くだと? ウヨネたちが進んでいる方向を見てみると、しばらくは森で途中から草原が広がっている。


 その途中で地形は切れていて何も表示させていなかった。僕は草原の端にカーソルを持って行って、草原を広げた。


 これで少しは引き延ばせるだろう。こいつらがこの世界は作られていると確信させないようにしないといけないゲームなのか?


 ゲーム画面の端までこいつらが来たら、この世界は作られていると確信してしまう。


 じゃあ何か来させないようにするか。さりげなく何かを置くかなんかして。


 ……まあ、別にこいつらがそれを知ったところで、ゲームをしている僕には何が起こるわけでもないだろう。


 とりあえず僕はウヨネたちが行く方向に門を作ることにした。


 草原に石造りの塀を置く。塀は画面の端から端まで伸びているようにした。塀には両開きの扉を取りつけた。


 うーん。門だけだと不自然だな。

 僕はそこにふたりの門番を置くことにした。


【ふたりの門番は大きい体格をした男たちで槍を持ち鎧を着ている。絶対に門を通してはいけないと命令されている。なぜなら、その先は危険だからと知らされているから】


 僕はそのキャラたちを門の前に置いた。


 よし、これで様子を見てみるか。


「なあ」


 バレナイはウヨネに聞くとウヨネは歩きながら振り向いて答えた。


「なに?」

「その見えない壁にぶつかったらどうするんだ?」

「そうだなぁ、そうなると、この世界は作られていることが明らかになる。ぼくたちが何者かによって作られていることもね」

「で、それがわかったから何だってんだ?」

「ぼくたちは、この世界を作っている者を倒さなきゃならない」

「はあ? たおす? お前が言うこの世界を作っている奴が本当にいたとして、どうやって攻撃を与えるんだ? そいつは俺たちの目の前に現れるのか」

「わからない。攻撃方法はこれから考えるよ」


 ふうん僕を倒しに来るのか。


 しかし何でウヨネはウタガの恋人なのに人違いと言ったのだろうか。


 ウヨネの性格が支離滅裂だからそうなるのか?


 このゲームはどのくらいその影響を出すのかわからない。


 ランダムなのか文字の書き方なのか。


 ウヨネがこの世界は作られていると言ったのは、その性格によるものなのか、あるいは物語の内容によるものなのか。それかゲーム側が用意したイベントなのか。


 どれが原因でそうなるのだろう。


 普通のRPGならば、もうすでにキャラの性格などが決められているから、それに合った行動や言動を取る。


 でもこのゲームは僕がキャラに性格などをつけることができる。


 キャラを一体作るには、性格をつける前に、そのキャラの行動や言動を先に作り、そのあとに性格をつけるようにしているのかな?

 

 このゲームの良さは文字を書けば簡易的だけどその通りになるということだ。


 だが、それがどこまでゲーム側でやってくれているのかわからない。


 もっと事細かに書かないとゲーム側で勝手に調整してしまうのかもしれない。

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