第5話 2対2の駆け引き
「なあ、あんたたち、ちょっといいか?」
バレナイが先に声を掛けた。
「ええ」
ワナイがそれに答える。
「俺たち、道に迷ってしまって困っているんだ。あんたたちはこの森に詳しいのか?」
「いいえ、あたしたちも迷っているわ」
「なんだそうか」
ここでお互いが会話を切ってそれぞれの連れに相談し始めた。
バレナイはダロウに聞いた。
「なあ、あいつらも迷っているらしいぜ」
「そうみたいだな、あいつらがウォーターストーンを盗んだ犯人なら、この森に詳しくてもそう言うだろう」
「じゃあ、どうする? やるか」
「いや、お互い同士で協力し合って、この森を抜け出さないかって聞くんだ」
「そうれでどうなる?」
「相手は俺たちと一緒に行くか行かないか迷う。行くほうを選べば、俺たちは奴らが油断したところを捕まえて、木に縛りつけてウォーターストーンのことを聞き出す。行かないほうを選んだ場合は、この武器を使い捕らえる」
「ふーんなるほど。だが、反撃して来たらどうする?」
「見てみろ、あいつらを。丸腰だ。どっちにしても分があるのはこっちのほうだ」
盗賊たちはウタガたちの様子を見ている。
ウタガはワナイに聞いた。
「あの人たちも、この森で迷っているみたいなのだ」
「そうみたいね」
「じゃあ、助けてやるのだ」
「どうやって?」
「協力し合ってこの森の出口を探してやるのだ」
「奴らがもし、迷い人じゃなく、悪い奴らだったらどうするの?」
「はははは、君は疑い深いな。悪い奴らじゃないよ、だって、森に迷って困っているって言っているではないか」
ワナイはため息を吐いて言った。
「じゃあ、何でこの森にいるの?」
「んーそれは、ハイキングに来ていて迷ったんだろう」
「そんなことあるわけないじゃない。見なさいよ、奴らはバッグも何も持ってないのよ」
「きっと重くてどこかに置いてきたんだろう。重いんなら私たちが持って行ってやろうではないか」
「じゃあ、あんたが聞いて見なさいよ、バッグのことを」
「わかったのだ」
ウタガは盗賊たちに言った。
「君たち、ハイキングに来て道に迷ったんだろう。バッグが重いなら私たちがそれを持って、出口を一緒に探してやるのだ」
バレナイとダロウはウタガの提案に疑いながら、お互いに顔を合わせた。
バレナイはウタガを疑わしそうに見ながら、相手に聞こえない声でダロウに言った。
「ハイキングって言ってるぜ」
ダロウもウタガたちを見ながら小声で答えた。
「ああ、あいつらに話を合わせるんだ」
「わかった」
バレナイはウタガに言った。
「ああ、実はそうなんだ。ハイキングに来て帰れなくて困っている」
ウタガはそれを聞くとワナイに言った。
「ほーら、やはり私の言ったことが当たっていたのだ」
ワナイは首を傾げてウタガに言った。
「何か怪しいのよね。もう少し会話をしてみて、何でハイキングに来たのとか」
「わかったのだ」
ウタガは盗賊たちに聞いた。
「君たちは、なぜハイキングをしに来たんだい? もしかして、そういったクラブか何かかな」
バレナイはダロウに助けを求めるように見た。ダロウはただ黙って頷き返した。
「ああ、そうだ、クラブ活動の一環で来ている。情けない話だが、地図と方位磁石を持ってくるをの忘れて、今に至っている」
「クラブの一環なんだって」
ウタガはワナイに言った。ワナイは首を傾げて答えた。
「ますます変よ。何であんたが適当に言ったのが当たっているの?」
「ん? それは、たまたま当たっただけなのでは?」
「そうかしら……彼らが、あたしたちと一緒に行動するとしたら、あたしの持っている剣を怪しむわ。そうね。あんたさ、彼らにこう言ってみて。ハイキングには焚き火をするために、手斧やナイフなんか持っているのって」
「わかったのだ」
ウタガは盗賊たちに言った。
「なあ、君たち。ハイキングと言ったら、焚き火をするよね。何か木の枝なんかを切る物とかって持ってるの? 手斧とかナイフとか」
バレナイはダロウのほうに苦い顔を向ける。
「どうする?」
「相手に合わせろ。そういったモノを持っていると言うんだ」
「わかった」
バレナイはウタガたちに言った。
「ああそうだ、持っている。何でそんなこと聞くんだ?」
「いやー……」
ワナイはウタガに「この森にはドラゴンがいるからと奴らに伝えて」と言った。
「実は、この森にはドラゴンが出没するのだ。私はそのドラゴンを倒すためにこの森へ来たのだが、ドラゴンの居場所はわからない始末だ。だから、もしドラゴンに出くわしたら攻撃できる物を君たちが所持しているのかなと」
「ドラゴンだと?」
バレナイが疑わしそうにウタガたちを見た。ワナイはウタガに剣を持たせて「これを掲げて奴らに見せたら、自分たちも持っているというの」と言った。
ウタガは剣を盗賊たちに見せつけた。盗賊たちは少し驚いている。
「私たちも、ほら、こういった武器を持っているのだ。だから、君たちも丸腰だと危ないから、何か武器になるものを見つけて置いたほうがいいと思って。でも、もう持っているなら安心なのだ」
ウタガは掲げていた剣を下ろすと、それをワナイが奪い取った。
盗賊たちは各々が所持している武器をウタガたちに見せた。
「ああ、俺たちは、こういった武器だが」
バレナイは銃をダロウはナイフを手に持っている。
それを見ていたワナイはウタガに言った。
「何で銃を持ってるの? 手斧やナイフだったらわかるけど」
「はははは、それはアレじゃないのか。ウサギを狩ったり、鳥を狩ったりして、それを食糧にしたり。あとほら。熊なんかが襲って来たら、銃を持っているのも不思議じゃないだろう」
「うーん、そう考えれば辻褄は合うけど……」
ワナイは訝しげに盗賊たちを見た。バレナイは銃を懐に戻すとダロウに聞いた。
「このあとどうする? まだ話し合うのか?」
「そうだな、ここで奴らに石のことを聞いてみろ」
「石のことを聞くのか? それを言ったら、俺たちが盗賊団でウォーターストーンを取り返しに来たことがバレるぜ」
「だから、言い方を変えるんだ。噂で耳にしたとか言って、水を出せる石がこの森にあると聞いてやってきたと」
「それでどうなる?」
「もし、奴らがウォーターストーンのことを知っていたら、動揺するはずだ。知らなかった場合は知らないや聞いたことないと答えてくるだろう」
「ふうん、なるほど」
バレナイはウタガたちを見ながら聞いた。
「なあ、実は俺たち噂で聞いたんだが、水の出る石がこの森にあるっていう。俺たちハイキングがてらにそいつを探そうと思ってやってきたんだ。あんたたち、そんな噂聞いたことないか?」
ウタガとワナイはお互いに目を合わせた。
「水の出る石だって、君知ってる?」
ウタガはワナイに聞いた。
「……いいえ、知らないわ。初めて聞くもの」
ウタガは盗賊たちに言った。
「いやー私たちそんな石の話聞いたことないなー」
バレナイはダロウに言った。
「知らねーって」
「知らないか……嘘かもしれないから、出口を一緒に探すふりをして、隙ができたら奴らを捕らえて、はかせるしかないな」
「じゃあ、とりあえず奴らに出口を一緒に探してもらう方向でいいんだな」
「ああ」
バレナイはウタガたちに言った。
「そうか、まあ噂だからな。当てにはならねぇ」
「はははは、すまないねーそんな噂を聞いていたら、私たちも探していたかもしれないなー」
「あんたら、一緒に出口を探してくれるんだよな。そろそろ帰りたいんだが」
「ああそうか、じゃあ、私たちも一緒に行動するよ」
「一緒に行動するか。ふーん」
僕はキャラたちの行動を眺めながらつぶやいた。
何だかなー。僕が何も書かなくても勝手に物語が進んでいく。ひょっとしてこのまま見ていれば、ゲームクリアになるのかな?
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