第4話 探り合うキャラたち

「あ、あんなところに橋があったわ」

「おーホントだ、これで渡れるのだー」


 ウタガとワナイはつり橋を見つけて向こう側へ渡ろうとしていた。


「おお、結構な高さなのだー」

「ちょっと、あんまり揺らさないでよね」


 ちょうどそのとき、向こう側から盗賊のバレナイとダロウが来ていた。

 ウタガはそれに気づいてワナイに言った。


「ん? ちょっとアレを見てくれー、人なのだー」


 ワナイは顔を上げると盗賊たちは橋を渡り始めた。


「何者かしら、怪しいわね」

「大丈夫大丈夫、きっといい人たちなのだー」


 ウタガはその場で手を上げで盗賊たちを呼んだ。


「おーい君たちー! 君たちも迷っているのかい!」

「ちょっとやめなさい。あいつらが何者かわからないのよ」

「わ、わかったのだ」


 ワナイに言われてウタガは手を下ろした。

 バレナイはウタガの呼び掛けに反応して疑わしそうに言った。


「何だあいつらは? 俺たちを呼んだな」

「おい、あいつらをよく見てみろ」


 ダロウに言われて、バレナイは目を細めてのぞくようにウタガたちのほうを見た。


「ああ! 男と女だ」

「そうだ、もしかしたら、あいつらがウォーターストーンを盗んだ奴らかもしれない」

「じゃあ、さっさと捕まえてやろうぜ」

「待て、その前にウォーターストーンてどんなのかわかるか?」


 ダロウがバレナイに聞くとバレナイは首を傾げた。


「そうだ、わからないだろう。そのウォーターストーンっていう物がどういう形でどのくらいの大きさで、どういう色なのかもわからない。そもそもウォーターストーンってなんだ?」


 そうか、ウォーターストーンって適当に書いたけど、その色や形がわかってないのか。


 ウォーターストーンは、そうだなぁ……。


 【手のひらに乗るくらいの大きさで、水色をしているツルツルの石。地面に置くと水がわき出てくるもの】と、これでいいかな。


「あーわかった。たしか小さな石で水色をしているやつだ」


 バレナイがそう言うと、ダロウは思い出そうとあごに手を当てた。


「ああ、そうだ、たしかそうだ。ふぅ、何で俺たちが思い出そうとすると蘇ったように記憶が戻るんだ?」

「あ? さあ、それより、あいつらが逃げないようにこのまま進むぞ」

「そうだな」


 盗賊たちは橋を前進していった。

 ウタガとワナイは盗賊たちを警戒して動かないでいる。


 ウタガはワナイに聞いた。


「ど、どうするのだ?」

「……そうねぇ。あの人たちが魔女の居場所を知っているかもしれないわ。怪しいけど、このまま待って迎え撃つわよ。もし何かして来たら、あんたがやっつけなさい」

「わ、私が?」

「そうよ、そのためについてきたんでしょ」

「いやーはははは、私もドラゴンを探しているから……」

「いるから?」

「わ、わかりました」


 ウタガは腕を前に出して身構えた。ワナイは前方を見据えている。


 盗賊たちがウタガたちに近寄っていく。

 バレナイは立ち止まるとダロウに聞いた。


「なあ、あいつら逃げないぞ? ひょっとして違う奴らか?」


 ダロウは目を細めて注意深くその様子を見ている。


「さあな。だが、あいつらが盗んでなくても、俺たちは盗賊団だ。何か持っているかもしれないから奪ってやろうぜ」

「ああ」


 盗賊たちは歩き始めた。

 ワナイは警戒しながらウタガに聞いた。


「ねえ、あんた。何か武器みたいなものを持ってないの? ナイフとかさ」

「え? いやー……」


 ウタガはそう言いながら自分の体を擦り始めた。


「何も持ってないのだーはははは」

「そう……結構遠くに奴らはいるみたいだから、あたしが何か探してくるわ」

「え? 探してくるって?」

「武器をよ」

「は、話し合うのではなかったのか?」

「そうよ、最初はね。でも奴らが何か攻撃を仕掛けて来たら、こっちはやられるわ、だからよ」

「じゃあ私も一緒に探しに行くのだ」

「ダメよ。ここにいて。奴らに変な警戒をされたくないわ」

「わ、わかったのだ」

「もし、あたしが戻ってくる前に奴らが来たら、話で繋げておいて」

「は、はなし」

「できるでしょ」

「わかったのだ、なんとかやってみるのだ」


 ワナイは後ろへ振り返り歩き出した。


「ん! 奴らが逃げるぞ」

 

 バレナイがそう言うと走り出そうとした。ダロウはそれを止めた。


「待て! よく見ろ。ひとり残っているぞ」

「……あれはおとりだ。女のほうが男をおとりにして逃げたんだ」

「落ち着け。男が逃げないんなら、そいつを人質にすればいい。俺たちがこのまま歩いていって。そこでそいつを捕らえる」

「人質か、確かにそっちのほうがウォーターストーンを取り返せる確率は高いな」

「ああ、奴らがそれを持っていたらの話だが」


 盗賊たちは歩きながら前進していった。

 ウタガは後ろを見たり盗賊たちを見たりしていた。


 うーん、ワナイは武器を探しに行ったのか。森の中をあちこちと探しているな。武器でも置いといてやるか。


 僕はワナイの近くにはがねの剣を突き刺して置いた。


「あれは?」


 ワナイは道の真ん中で剣が突き刺さっているところに向かった。


「こんなところに、剣が」


 剣を見たあと、ワナイは鋭い目をしながら辺りを警戒した。


「誰もいないわよね」


 ワナイはその剣に近寄り剣の柄を両手でつかみ引き抜いた。片手で剣を持ち上げながら眺めている。


「これでいいわ」


 ワナイは剣を持ったままウタガのところへ走って行った。


 目と鼻の先までウタガと盗賊たちは近寄っていた。

 そのとき、ワナイが森から出て来てウタガのところに戻った。剣を盗賊たちに見せないようにして後ろに回している。


 盗賊たちはワナイが出て来たのに驚いて立ち止まった。

 バレナイが警戒しながら言った。


「おい、女が戻って来たぜ」


 注意深くダロウがその様子を見ながら答えた。


「そうだな、もしかしたらウォーターストーンをどこかに隠して戻って来たのかもな」

「何で戻って来たんだ? 隠すんなら本人ごとどこかに消えたほうが見つかりにくいだろう」

「ふんっ、俺たちとやり合おうっていうことじゃないのか」

「じゃあ、このまま歩いて行って、この武器で仕留めるってことか、奴らを」


 バレナイは銃をダロウに見せつけた。


「いや、最初は話し合いでいこう。奴らが何を考えているかわからないからな。慎重に行動するんだ。せっかくの獲物を逃がしたりしたらもともこもない」

「ああ、わかった」


 盗賊たちはさっきより慎重に歩を進めた。

 お互いの距離は少し声を張れば普通に会話できる位置まで来ていた。


「見つけて来たわよ」


 ワナイがウタガの後ろに隠れるようにして言った。


「そうなんだ、じゃあこれで助かったのだ」


 そう言ってウタガはワナイの隠し持っている剣を見ようとした。


「ちょっと、前を向いてなさい、変な行動が相手を警戒させるわ」

「わ、わかったのだ」


 ワナイに言われてウタガは前を向いた。

 バレナイはダロウに聞いた。


「なあ、なんて声を掛けるんだ?」

「そうだな……とりあえず、俺たちは道に迷っていて困っていると言うんだ」

「迷っている?」

「そうだ、そうすれば相手に変な警戒を与えないだろう」

「ああ、そうだな」


 そして、お互いは会話できる位置まで来た。

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