第9話 2章:触手と姫騎士(4)
「赤石さんだって嫌だよね?」
「明音って呼んでほしいな……」
顔を赤らめてる場合か?
「明音だっていやでしよ?」
しかたないので言い直してみる。
「あ、あたしはしてもらえるならそれでも……」
う、裏切り者め……。
姫騎士にされて理性がぶっ壊れたのか、もともとそういう素質があったのかは知らないけど。
『ほら早く。人類の存亡はジュン君の性欲にかかってるのよ』
言い方!?
「わ、わかりましたが、せめて周りからは見えない場所にしてくださいよ」
『えぇー?』
なぜそんなに残念そうなのか。
まさか趣味でやってないよね?
『しょうがないから個室を使っていいよ』
職員がベッドを運びだしていく。
すれ違いざま、一人の職員が「ちっ」と舌打ちした。
それは上司へのものなのか、僕へのものなのか。
どっちもかなあ……。
……。
…………。
………………。
ラブホのような個室から戻ってきた僕と赤石を出迎えたのは、一軒家くらいはありそうな鉄の塊だった。
ちなみに赤石は変身済みである。
『口でってことでいいのかしら?』
「うん。午前中と同じくらいの量だった。まだ喉の奥とお腹が温かい感じがする」
恍惚としながら答えるんじゃない。
恥ずかしがってる僕がバカみたいじゃないか。
『それは、朝から少なかったってこと?』
「ううん、どっちもたっぷりだった」
もうイヤ。かんべんしてください。
とはいえ、ちょっと異常な気はする。
これが高校生の精力ってコト?
『へぇ……あとでちょっとジュン君も調べさせてちょうだい』
「拒否権なんてないんでしょ」
『痛くしないから安心してね』
逆に不安になるセリフ!
最初の訓練……というかテストは、赤石が鉄の塊を剣で斬るというものだ。
それはもうスパスパ斬れた。
切り口を調査した職員が、「刃物の切れ方じゃないぞ……」とこぼしたほどだ。
そのあともテストは続いた。
赤石の変身がとけてはえっちの繰り返し。
いやほんと、僕の精力どうなってしまったん?
◇ ◆ ◇
最後に僕の身体能力測定をして、一日は終わった。
今はラブボのような個室で、テスト結果を真白さんから聞いているところだ。
真白さんはイスに、僕と赤石はならんでベッドに腰掛ける。
赤石がずっと僕の腕を胸に挟み、頭を肩に預けてくるので集中できない。
なにこのシチュエーション。
「この数値……筋力、瞬発力どれをとっても世界記録以上じゃない……」
ノートPCに送られてきたデータを見て、真白さんは目を見開いた。
まじ……?
スポーツ大会なんかに出たら無双できちゃうんじゃ?
そうすれば、僕をいじめていた連中を見返せるかも。
「ジュン君、体育なんかの授業で本気をだしてはだめよ。騒ぎになるわ」
「あ、はい……」
先に釘を刺されてしまった。
「今日の結果をまとめたから見て」
部屋の壁にかけられた大型液晶モニターに、グラフやら数字やらが映し出される。
「細かいことは置いといて……」
レポートと最後までとんだスライドには、今日の結果が数行にまとめられていた。
・黒執ジュンと性交した女性は、姫騎士になる。
・姫騎士は精神的にも、黒執ジュンの虜になる。
・姫騎士への変身時間は、摂取した黒執ジュンの体液の量と、活動内容による。
なお、変身がとけても、精神的な洗脳は残る。
・黒執ジュンの体液を摂取することで、何度でも姫騎士に変身できる。
ただし、同じ量でも変身時間が短くなる傾向が見られる?
・害異の心臓を破壊できるのは、黒執ジュンの攻撃だけ。
・黒執ジュンが攻撃を放つためには、黒執ジュンと性交した姫騎士が戦い、エネルギーを消費する必要がある。
・黒執ジュンの身体能力(精力含む)が強化されている。要経過観察。
「何かわかったらまた追記していくわ」
見れば見るほど、とんでもない状況だ。
「問題は回数に応じて変身時間が短くなることね……。これは早くバックアップを用意する必要があるわ」
真白さんは真剣にそんなことを言う。
「二人目ってことですか……」
「あら、嫌そうね。合法的にいろんな女子とエッチできるのよ? 男子高校生ならだれでも喜ぶと思うけど」
男子高校生像が偏り過ぎでは。
「心を奪ってしまうのもそうですが、命の危険もあるじゃないですか……」
自分をさんざんいじめていた赤石でさえ、あの戦いを見ると多少心が痛む。
ざまぁという気持ちが圧倒的に強くはあるけど。
でも、事情を全て理解した上で、二人目を作るというと、どうしても二の足を踏んでしまう。
「性欲よりも理性の勝る男子高校生がいたなんて驚きだわ」
だから男子高校生像が以下略。
「そう言われましても……」
「うーん……無理強いはしたくないけど、人類のためなのよね……」
それを言われると辛いところだ。
「よし! じゃあ二人目は私にしましょう」
「ええっ!?」
なんか言い出した!
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