第8話 2章:触手と姫騎士(3)
真白さんからの答えは、「飛んで本部まで来い」というものだった。
雑ぅ!
姫騎士の速度なら、そうそう捕捉されることもないだろうという話だ。
学校で騒ぎになるよりはたしかにマシか。
教室に戻った僕を見た黄宮が眉をひそめた。
「赤石さんが迎えに行ったはずだけど、会わなかった?」
「気分が悪いと言って早退したよ」
「あなた……何をしたの?」
これほど警戒心を顕わにする黄宮を初めて見たかもしれない。
いつもの余裕の笑みが、少しだけ鳴りを潜めた。
「別になにも?」
逆に僕は、余裕を見せつけてやる。
これだけでも大きな一歩だ。
「はーい、席についてー」
教室に流れた不穏な沈黙を破ったのは、担任の女教師だ。
若くて美人、スタイルも良く、人気も高い。
タイトのミニスカートと、白いブラウスがトレードマークだ。
ブラウスから透けて見える黒いブラとたわわなお胸が、男子から大人気である。
たまにブラウスの隙間からブラが直接見えるので、授業中の男子はみなその回数を数えている。
だけど僕はこの担任が嫌いだ。
女教師は教室の不穏な空気を感じ取ったらしく、一瞬室内を見渡した。
しかし、何事もなかったかのように、出席を取り始める。
トラブルを避けたいのか、はたまた他の生徒達のように、黄宮に抱きこまれているのか。
いずれにせよ、僕の敵であることに変わりはないからだ。
◇ ◆ ◇
せっかく登校したものの、2時間目の途中で真白さんから連絡が来た。
訓練の準備ができたので本部に来てほしいとのことだ。
ということで、学校まで迎えに来たリムジンに乗って向かったのは空港だ。
校門ではやたらと注目をあびてしまったが、それは思い出さないことにしよう。
空港の地下には、何かあった時のための施設がかねてから作られており、それを害異対が本部として使っているらしい。
そうして案内されたのは、体育館ほどの大きさをした四角い部屋だった。
窓はなく、分厚く固い壁で覆われている。
ビルの三階分はありそうな高さの天井付近の壁には、強化ガラスを隔てたモニター室が見える。
そこには真白さん他数名がこちらを見下ろしている。
『せっかくの学校だったのに悪いわね』
真白さんの声が、室内に備え付けられたスピーカーから響く。
こちらにいるのは、僕と赤石だけだ。
なお、赤石は制服姿に戻っている。
「かまいませんよ。それより、動きにくくてしょうがないんですが」
僕の体には、心拍数やら脳波やらを計測する電極がとりつけられていた。
胸や手首、そしてこめかみにまで。
何かのテレビ番組で、スポーツを科学的にどうのこうのとやっていたのを思い出す。
『データを取るためだから我慢して。じゃあ早速始めましょうか』
完全防音に見えるけど、僕の声は聞こえているらい。体につけられた電極のどれかから拾っているのだろうか。
「何をすればいいんです?」
『キスと口での変身時間はざっくりしたデータを取れたから、次はナカかな』
「「へ?」」
僕と赤石はぽかんと口をあけた。
「まさか、ここでしろなんて言わないですよね?」
ガラスの向こうからめっちゃ見られてるんだが。
『でも一回出してて量が変わってると正しいデータがとれないかも。それならもう一回口のデータで、量による違いを見た方がいいかな』
聞いちゃいねえ!
『ちゃんとベッドは用意したから大丈夫』
舞台の奈落のように開いた床から、キングサイズのベッドがせり上がって来た。
税金でなんて無駄なもの作ってるんだ。
手で運びこめばすむだろうに。
それならいいってことではないんだけどね!
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