第3話 新しい世界

 来客がいなくなると俺は彩芽と情報の共有をした。


「ステータスを見ることができるぞ」


「相手を見てステータスと思えばいいね」


「気づいていたのか」


「さらに言うと何もないところを見てステータスと思えば自分のステータスが見えるよ」


「それは知らなかった。でかしたぞ、メイカ」


「メイカゆーな! めちゃくちゃなりきってるじゃん」


「こういうのは早めに慣れておいた方がいいぞ」


 まず彩芽のステータスを確認した。爺さんたちより低い数字が並んでいる。まあ中学生だしそんなもんだろう。3サイズなんて項目があるが何も表示されていない。まあグラマラスなボディーじゃないのは確かだからどうでもいいか。


「お兄ちゃん声に出てるんだけれど」


 彩芽がなにか言ってるがスルーして次に自分のステータスを確認する。彩芽よりはマシといったところか。しかし違う部分もあった。俺には彩芽にはない装備の欄があり、祝福の指輪が載っていた。普通の服だと装備にはならないのか。


「俺のスキル欄に”祝福”ってついているな」


「それって指輪の効果よね」


「たぶんな」


 試しに指輪を外すとスキル欄から”祝福”が消え、さらに装備欄までもが消えてしまった。


「名前は俺がハガトで彩芽がメイカだよな? 異世界に飛んだ時に誰かの体を乗っ取っちまったか?」


「それにしては顔はいつもの冴えない顔のお兄ちゃんのままだよ」


 さり気なくディスりやがったな。だが彩芽の顔もいつもの彩芽だ。ストレートな物言いをやめれば素直に可愛いと評価したのにな。


「服は完全にこの世界の服だな」


「ずいぶん地味な服だよね」


 さっきの爺さんのスキル”村長”からするとここは村で俺たちは村人A、Bってところか。


「とりあえず家探しの続きをして外に出てみるか」


「そうね」




 結局家の中にはトイレはあったが風呂はなく、そして一番の問題は食料がなかったことだ。


「この世界の俺はどうやって生きていたんだ」


「とりあえず外に出てみようよ。日本語が通じるんだからなんとかなるんじゃない?」


 おお、そうだ。なんとも思っていなかったが、こっちも向こうも日本語を使っていたな。なんか彩芽のほうがしっかりしてるじゃないか。ついてきてよかったぜ。冴えない顔とか言ったのは水に流してやろう。


「だからお兄ちゃん、声に出てるって。それに冴えない顔って気にしていたの? 根に持つタイプだったっけ?」


 彩芽から冴えない顔と根に持つタイプの称号を頂いたぜ。やったね。



 気を取り直して外に出てみると、そこは典型的な村があった。ほんとファンタジーにありそうな。


 そしてありがたいことに非常に過ごしやすい陽気だった。たまたま今日がそういう日だったのか気候的にそうなのか今はわからない。だが俺はなんというか旅立ちの第一歩を踏み出したのだ。


「お兄ちゃん、ウンコみたいなの踏んでるよ」



 最悪な第一歩だった。

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