第60話 名前

 ノートには中学生時代の写真の少女あの人との出会いから別れ、高校生時代の苦労。高3の時に出会った女性彼女が発端の入院、退院後の事件などが書いてあった。


 書き続けていた期間は2回目の入院後の頃から、わたくし達母娘に出会う直前までの様であった。


 出来事の文章の他に、「あの人」への恋慕と情愛や「彼女」への謝罪と償いの思いが何度も何度も繰り返して書いてあった。



 わたくしの名は彼女と同じ名であった…



 つまりはわたくし達母娘に尽くす事で、

と出来なかった、恋愛と結婚生活を」

に出来なかった、謝罪と償いを」

擬似体験していたのだ…



 この事実を知って、わたくしは嘔吐するほどの嫌悪感をに抱いた。ホスピスへ今すぐに行ってベッドの上のを罵倒して、母の遺骨に謝罪をさせようとも思った。



 一晩経って冷静になったわたくしは考えていた。

前の父屑男との地獄の様な日々から救ってくれたのは、間違い無くである」

「2回目の入院以降、世捨て人になっていただけの理由で、わたくし達母娘を救ってくれたであろうか?」


「母との間には確かに愛情があったと思いたい…」

「わたくしにもは償いだけでは無い愛情があったと思いたい…」

「母の臨終の時のの心の中には、母しか残ってなかったと思いたい…」



 3冊目の最終ページには母の臨終後に書いたのだろうか、から母への感謝と謝罪の言葉が書いてあった。



 わたくしはの捻じ曲がった愛を許す事にした…




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