第二章
「なんか、社会に出たっていうか??自分が今まで見てきた世界ってすっごくちっちゃかったんだ〜って思い知らされたよ〜!」
去年、あるクラスメイトは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら私にそう語った。
彼女はバイトをしていた。
校則で禁止されているのにも関わらず。
まるで、
「まだあなたはこの学園から出られないんだ」
とでもいいたげな口ぶり。
今思い出しても頭にくる。
正直、この学園の子たちはみんな基本的にお金には困っていない。実際私もその一人だったので、それまではバイトをするなんていう選択肢はこれっぽっちも無かった。
しかしこの自慢げな態度を見ると、ふつふつと対抗心が湧いてきた。
しかもこいつは、バイトをしていることを隠す素振りもなく積極的にsnsで発信している。
「今日は怖いお客さんが来たけど、同じシフトで
純也お兄ちゃんがいたから助けてくれた〜(;ω;)」
「ドラッグストアのバイトは社割でコスメが安く買えてお得だあ(><)」
など、例を挙げたらキリがない。
もともと彼女の兄がそのドラッグストアで正社員として働いていたらしく、その店舗の人員不足のため急きょ妹を誘ったらしい。
その肝心の妹は、ただの助っ人のくせに学校でも口を開いたらバイトの話ばかり。その癖に、教師の気配を察知するとその話をピタッと止め、不自然に違う話に切り替える。
なんだ、学校にバレることは怖いのね。
結果的に、そいつはバイトのことが学校にバレ、
校則違反で退学になった。
もちろん情報提供したのは私。
成績や素行も良く、教師たちに従順という絵に描いたような優等生である私の告発を、学校側は素直に受け入れた。
まあ日頃の腹いせに、「生徒と店長が一緒にホテルに入っていったのを見た」っていう多少のウソも言ったけど、それ以外は全部ホントのことだったし、何の罪悪感も感じない。
調子に乗って私より先に「社会」を知ろうとするからこんなことになるのだ。むしろ邪魔者が消えてくれてせいせいした。
私はあんな馬鹿じゃない。
友達にも言わず、この夏休み、私だけが静かに、だけどしっかりと大人の階段を昇るのだ。
ざまあみやがれ。金城さくら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます