レビューを書いている『10. 吸血鬼の本能?』時点ではまだ本配信を開始していない、言うなればVtuberとしてはプロローグであるものの、下地がしっかりしており、本格始動してからが楽しみな一作である。
「応募した就職先が異種族渦巻くファンタジックな職場だった!」という始まりは、ともすれば(悪い意味で)突拍子がなく、現実味を感じられない危険性を孕む。読者の心を引き込むのにつまづけば、そのまま離れて行ってしまうだろう。
けれども本作はその点、リアリティレベルの匙加減が丁度よかったのか、ほのぼの非日常系コメディのタッチで軽やかに進んでいく。登場人物達も、過度にセクシャルだったりキツかったりしないのもまた、浮足立つような作風の構築に一役買ってくれているのかもしれない。
Vtuberに馴染みがない方でも、日常と非日常のあわいを散歩するような現代ファンタジーとして、広くオススメしたい。