第22話 袋小路
「マオ・アスモデウスだ……」
「昨日魔王様の息子ボコったんだって?」
「いや見てたけど、あれはどちらかと言えば自滅だったんじゃ……」
「でもこんなエッチな子があの可愛い服着て迫ってきたんじゃあんな醜態しても仕方がないよな」
登校して早々に遠巻きに見られている。中等部も高等部もそれぞれが尊敬、畏怖、あとなんか欲情、さまざまな感情で俺のことを見ていた。流石に昨日の今日で噂は広まるのが早い。しかしよかったこの空間に会長は居ないようだ。生徒会とかってたまに朝挨拶するために校門にいるから、ちょっと警戒していたんだ。
「生徒会は多分事務してるな……」
「事務?」
「この学園って教師が少ないから」
ブラックか。こればかりには会長に動揺してしまうぞ。そんで、入学したてで所属クラスも知らない俺は何をすればいいんだ?
「そうだな、まずはクラスを確認しに行かねえと、ほらあそこのボードに書いてるぞ」
「思ったより原始的だな……」
クラスはAからFまで分けられていて、その他色々教室もあるらしいが、少なくとも9.5割はそこまでのクラスに入るらしい。A組は勝ち組、F組は負け組とまあわかりやすいクラス分けだ。長年引きこもってたマオこと俺はわからないが、少なくともカガチはA組で間違い無いだろう。
しかしどれだけ探しても俺とカガチの名前はなかった。まさかと思いAからFまで隅々探したが、それでもやはりいなかった。
「うーん……まさか」
「ど、どうした?」
「いや。まさか例のその他かなって」
あー5%が所属している例のクラスか。1年生が200人ぐらいだとしたら10人ぐらいだな……そんな少数人クラスで何するつもりだ、いいやまだ決まったわけではないよな。うん。
カガチ曰く例のその他クラスの通称はG組、または㊙︎活動クラス(特に名前がついているわけではないらしい)と言い、技能や家柄の優劣に関係なく選ばれては学園内のどこかで勉強しているらしく、周りからはアイツG組じゃんと恐れられるとのこと。噂によれば秘密裏に何か別の活動をしていると言われ、兎に角そのクラスになったが最後卒業まで友達作りに大きなデバフがかかるらしい。別に友達を求めているわけではないから大したことではないが、目立ちたくはないな。それにまだそのクラスに所属だって決まったわけでもない。先生に確認して、クラス分けに間違いがないかを確認しなくては。
「なあ、兎に角先生のところに行こう__!?」
そう思ったのも束の間、俺の視点は真っ暗になった。何か布を被せられたのだろうか、大きな布に包まれたのだ。誘拐事件かよ、悪魔にもこんなのあんのか。どうしよう、カガチが助けてくれることを祈るか、いいやここはマオの影武者として誇り高く戦うべきなのか。
「おい、なんじゃこりゃ! ってこの感触……オマエも捕まっとんのか!」
……カガチも捕まっている、しかも俺と同じ袋の中だ。しかし顔は見えない。これはアレだ、お互いに顔に小さい袋をかぶせられ、さらに俺らを覆うようにでかい袋に入れられてる感じだな。あとこの感触はってなんだよ、何故左胸を揉んだその感触で俺だとわかったんだ。
「おいなにラッキースケベしたんじゃい、それは俺の左胸だ」
「は、え、オマエのおっぱい?」
「おっぱい言うな」
「……右のおっぱいは何処だ?」
「オーケイわかった、落ち着くんだ」
錯乱状態に陥り使い物にならなくなったカガチを宥めつつ、使い物にならない目よりもマシな耳や触覚使って周囲を探る。このユッサユッサと宙に浮かびながら揺れる感覚、恐らく袋に入れられた状態で何処かに運ばれているな。どうしよう、魔法はまだからっきしだし、魔権能も使いこなせているわけじゃない。今のうちにカガチを落ち着かせ、何処かのタイミングで解放されたら誘拐犯に炎をぶっ込んでもらうのがちょうどいいだろう。
「やべ、興奮しすぎでまた鼻血出てきた……」
「興奮すると出る体質なのな、服につけねえようにしろよ」
「なんでオマエそんな余裕なんだよ」
「そりゃまあ、誘拐なんてそれなりに経験あるし……」
「……は?」
急に落ち着きを取り戻したカガチを不審に思いつつ、反撃の準備をする。俺たちが解放されるその時は刻一刻と迫っていた。
アスモデウスの影武者は今日もモテモテです 荒瀬竜巻 @momogon_939
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